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第十六章 免疫施設

扉は、重かった。


分厚い合金が、

音を立てずに左右へ開く。


中は、静まり返っていた。


白。

無機質。

整然と並ぶ装置。


「……ここだ」


ユリの声が、低く落ちる。


表示板には、

はっきりと刻まれていた。


免疫生成区画


エリカは、

一歩だけ前に出る。


「……匂いが、違う」


血の匂いじゃない。

薬品と、金属と、

人工的な命の匂い。


レオナが、端末に手を伸ばす。


「記録、まだ生きてる」


画面が展開される。


抗体生成。

適合率。

投与実験。


「……成功率、低すぎる」


ユリが、歯を食いしばる。


「これを……

 “希望”って呼んでたのか」


そのとき。


背後で、

足音が響いた。


一つじゃない。

複数。


重く、

ためらいのない歩き方。


レオナの背中が、

一瞬で強張る。


――来た。


振り返るより早く、

声が飛んできた。


「やはり、ここに来たか」


聞き覚えのある声。


冷たく、

怒りを隠そうともしない。


エドワード・ブラッドフォード。


通路の奥に立つその姿は、

追う者の顔だった。


「……しつこいわね」


レオナが吐き捨てる。


「当然だ」


ブラッドフォードは、

一歩、前へ出る。


「ここは、

 私が最も欲しかった場所だ」


「血の海に辿り着く前に、

 免疫を押さえる必要がある」


ユリは、

無意識にエリカを庇う位置に立つ。


「……これ以上、

 使わせない」


ブラッドフォードは、

小さく笑った。


「使う?」


「違うな」


「完成させる」


彼の背後で、

武装した兵士たちが展開する。


数で、

圧をかけてくる。


「抗体が完成すれば、

 血の海は“制御できる”」


「暴走もしない。

 爆発も、選べる」


エリカの胸が、

嫌な音を立てる。


「……人を、

 選んで殺すってこと?」


「必要な犠牲だ」


即答だった。


その瞬間。


レオナの内側に、

強い拒絶が走る。


言葉じゃない。


怒りでもない。


――危険。


レイだ。


強烈な警告が、

胸の奥を打つ。


「……ユリ」


レオナが、

声を落とす。


「時間がない」


ユリは、

一瞬で理解する。


「……抗体を、

 取る」


エリカが、

ふらつきながらも、前へ出る。


「……それで、

 終わらせられるなら」


ブラッドフォードの目が、

細くなる。


「やらせるとでも?」


銃が、上がる。


空気が、張り詰める。


逃げ場は、ない。


施設の奥で、

抗体カプセルが、淡く光っている。


希望か。

呪いか。


選ぶ時間は、

もう、残されていなかった。


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