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第96話 結界師は終止符を打つ

『いいよ。ミオが望むなら俺はどれだけでも力を貸す。俺たちの心は神様を通して繋がっている。俺はミオと一緒に戦う!』


『ありがとう、シド!』


(俺もいつまでも倒れているわけにはいかない)


「そろそろ、性能テストは十分だ」


俺はそう呟き、流れる涙をそのままに、ゆっくり立ち上がった。


それと同時に周囲の状況にも目をやる。


俺が過去の記憶に囚われている間、ずいぶんと斬りつけられたようで、周辺の地面は剣撃の衝撃波で無惨に削り取られていた。


しかし、俺の体と肩から下げた聖樹の分体には傷一つなかった。


それは、俺が作った高圧縮無属性法力を基材とした透明な結界アーマーを身につけていたからだ。


聖樹の分体の瓶も同じ素材で覆われている。


この結界アーマーは、俺がミオたちのパーティーに付いていくために、常時発動の防御手段として開発したもので、実戦テストをするために今回身につけていたのだ。


少々、予想外の実戦テストとなったが、性能的には十分使えることが分かった。


俺は怒りと最大の威圧を込めた目でゴブリンエンペラーを睨んだ。


ゴブリンエンペラーの表情は困惑から絶望の表情へと変わる。


(少しそこで立ってろ)


俺はまずミオの戦いに意識を割いた。


ミオから聖百裂剣ホーリーハンドレッドスラッシュを放つ覚悟が伝わってきた。


俺の手がミオの手に重なっている感覚がある。


俺の中から大量の法力が流れていくのを感じる。


俺は亜空間バッグに手を入れ、結界で作った法力タンクから法力を補給していく。


予備の法力は十分だ。


『シド、一緒に放って!』


『ミオ、いいぞ!』


その瞬間、ミオが聖百裂剣ホーリーハンドレッドスラッシュを放った感覚が届く。


俺の法力操作の能力も使われている感覚がある。


(これなら大丈夫だ)


俺は再度、ゴブリンエンペラーに意識を向けた。


(俺も終止符を打つ!)


俺はゆっくり見せつけるように剣を引き抜いた。


俺は恨みを持って剣を振るったことはこれまで一度もなかった。


しかし、この一撃は父さん、母さんの仇を討つ一撃だ。


俺はミオとつながることで受け取った『聖属性』の能力で聖法力を練り込んでいく。


もはや、ゴブリンエンペラーは自分の最期を悟っているようだ。


奴はうなだれ、運命を受け入れる様子を見せた。


その態度が、俺をさらに苛立たせた。


俺の両親は勝てない戦いだと悟っていても、最後の最後まで諦めずに戦い抜いた。


だが、こいつは諦めて楽になる道を選んだ。


俺は、両親を理不尽に奪われた深い恨みと、戦うことすら諦めて楽になろうとする卑怯な奴への激しい怒りを剣に込め、


「消し飛べ!! 聖百裂浸透剣ホーリーハンドレッドペネトレイト!!」


その叫びと共に、渾身の一撃を奴へと叩きつけた。


輝く俺の百連撃は拡散することなく、ただ奴だけを貫き通していく。


浅黒かった奴の体は、もはや灰のように白くなり、百撃目が奴を貫いた時には、奴は灰の堆積となっていた。


谷からの風が塵となった奴を吹き飛ばし、そこには全てを終えて立ち尽くす俺だけが残された。


(寒い……)


俺は納剣も忘れ、冷えた自分の心に震えていた。


十年ぶりに思い出した両親との温かい日々と、それを失った喪失感、そして、感情の回復とともに生み出された炎のような怒りと、それをぶつける対象を失った虚無感が合わさって俺を襲った。


凍るような悲しみの心に埋め尽くされようとしたその時、再びミオからの温かい心が俺をつつみ込むのが分かった。


冷え尽くした俺の心にミオの温かい心が染み渡っていく。


ミオは俺に囁いた。


『シド……愛してる』


凍りついていた俺の感情が、熱く、心地よく、そして胸が締め付けられるほど切ない『何か』で満たされていくのを感じた。


俺は、止めどなく溢れ出る涙と共に、その温かい感覚を言葉にして返した。


『ミオ……俺も愛してる』



俺は機能しない感情を引きずって生きる人生にも終止符を打った。


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