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命の行方  作者: 焼魚
第1章:邂逅・啓発

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18/23

18:顔合わせ

他言無用。この五日間はそのワードが何度も頭の中で浮き沈みしていた。

そして、やがて約束の日はやってきた。


私は、朝の寝ぼけたままの状態で本部へと制服を着て向かった。ハルトから聞いたところ、どうやら制服を着るのは任意らしいが、これから他の亡霊狩りの人や上層部の人に会うのだから、来てた方が何となく良いと思った。


本部前、そこにいたのは────

「あれっ? レオ!」

「ん? ああ、ミオか」


蓮花市で出会った時以来だ。レオと顔を合わせるのは。

「ひょっとして、レオも護衛の任務?」

「その言い方からするに、ミオもそうなんだな」

「うん」

「そいつは頼もしい」


レオと会話をしていた時、背後の方向から声がした。

「お前ら、護衛組か?」


振り返りつつ、その声の主を視認する。その人は、緋色の髪に高い身長が特徴的な人だった。

「ええ、そうです。あなたも護衛の人ですよね? よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


私たちが握手を交わす中、新たな者がその場に合流した。

「他に三人もいたんだ。あたし一人で十分なのに」


視線を移す。ウェーブのかかったクリーム色の短髪、何より小さなその身長。見た瞬間、小学生がやって来たのかと思うほどに。


「聞きなさいあなた達。あたしの名前は──」


その瞬間、レオのスマホが着信を知らせる。

「ちょっと待った。上層部からの連絡だ」


自己紹介を中断され、不服そうな表情をする彼女。レオはスマホをスピーカーにし、その場にいた私含む三人へと、電話の内容を聞こえるようにした。


「もしもし。レオです」

『今日の動きを伝える。一度で覚えてくれ』


それから彼は電話にて以下の通りに説明した。

・護衛任務に携わる計四人は本日の昼までに県外の指定された場所へ移動する

・上層部との合流を果たす

・二日間の護衛の開始、終了時は上層部からの指示を受ける


上層部との通信を終え、私たちは早速移動しながら自己紹介をすることに。まずは先程中断されていた彼女から。

「あたしの名前は『姫野ひめの ゆう』よ。よろしく」

「俺は『橙田 怜音』。この二日間行動を共にさせてもらう。よろしく」

「『冬神ふゆかみ 塔真とうま』だ。よろしく頼む」

「『煌然 澪』です。よろしくお願いします」


「じゃあまずは」と、姫野さんが私たちへ言う。

「お互いの能力について把握しときましょう。まずは澪。あなたから」


丸々二日という長い時間を一緒に過ごす。確かに、お互いの能力は任務のためにも知っておいた方がいい。

「私の能力『夢幻ファントム』は、実際に目で見た能力をコピーする能力です」


レオ以外の二人は驚く。沢木さんと松井さんほどではなかったが、そう見受けられた。

「な、なかなか良い能力ね。じゃあ次、白髪はくはつさん」

「俺の能力は『空虚ラディス』。能源の流れていない対象の性質を変化させる能力だ」

「ふうん。じゃ、次」


すると冬神さんは、近くの石ころを拾った。

「俺の能力は実際に見てもらった方がわかりやすい。俺が今から石を投げるから、その軌道に注目してくれ」


彼は言った通りに、斜方投射で石を投げる。石は重力に従って放物線を描いていく。私たちは冬神さんに言われた通りに石の軌道に注目していた。すると、石が地面に到達する寸前、石が急に軌道を変え真上へと飛び上がった。


「名前は『無秩序アンルール』。俺が能源を付着させた対象を、“付着させた能源の数だけ”その軌道を変えることのできる能力だ」


私はその後静かに落下した石ころに視線を向ける。するとその石の表面には、蒸発するように消えゆく能源が付着していた。どうやら、付着させた能源は役目を果たすと蒸発するらしい。


「それじゃ、最後はあたしね。あたしも見てもらった方が早い。というより感じてもらうって言う方が正しいかもね。あんた達、あたしのことを見て」


言われた通りに、私たちは姫野さんを見る。それから、彼女は能力を発動した。

「『意味のない知識(レッシング)』」


すると、私の脳内、恐らくはレオや冬神さんの脳内に、トリビアが流れた。

“一円玉の製造には三円かかる”。


「この能力は対象にあたしの知識を強制的に流す能力。相手に隙を作ったり、知識の共有にかかる時間のカットができる優れものよ」

「なるほど。便利ですね」

「そしてもう一つ、あたしには能力がある」


その言葉に、冬神さんが反応を示した。

「こいつは珍しいな。『ダブル』か」

「ええ、そうよ」


“ダブル”?

能力が二つだからそう呼ぶのだろうか。後でレオに聞いてみよう。


「あたしのもう一つの能力『透き通る思考(クラリア)』は、相手の知識や思考を汲み取る能力。ただし、どっちの能力も相手と一度会話することが必要よ。それじゃ、実演ね。澪、あなたが今考えてることを当てるわ」

「えっ、私?」


姫野さんが能力を発動すると、私の体には何の異常も起きなかったが、どうやら姫野さんは私の思考を汲み取ったらしく、指をパチンと鳴らし得意げに言った。


「ズバリ、ダブルの存在を知っていなかったので、後でそこの白髪さんに聞こうと思っている」

「おお! 正解です!」


彼女の言葉を受け、レオは私へとダブルの説明をしてくれた。

「澪。ダブルっていうのはその名の通り、生まれつきで能力を二つ有している人のことだ」

「へぇ〜。それって珍しいんだよね?」

「ああ。百人に一人くらいの割合だな」

「えっ、姫野さん凄いですね!」

「でしょでしょ? もっとあたしを褒めなさい!」


自身満々に笑顔で胸を張る姫野さんに、私は女児の面影を感じた。


    **


上層部から指定された場所。そこには大きな洋館があった。


門の近くに取り付けられた呼び鈴を鳴らし、鍵を開けてもらう。解錠をしに門番へとやってきたのは、メイド服に身を包んだ女性。見た目からして、年齢が近そうだ。


「ようこそおいでくださいました。亡霊狩りの皆さん。念のため、証明手帳をご確認させていただいてもよろしいですか?」


私たちはそれぞれ証明手帳を見せる。確認作業を経たうえで、彼女は私たちを門の中へと招き入れ、そのまま洋館の案内も始めた。洋館の中に入ると、他のメイドさんたちが大勢おり、彼女たちは並んで私たちを迎え入れてくれた。


私は周囲を見渡す。洋館内は豪華な内装をしていた。高そうな絵画や壺が幾つも並べられていたり、辺りに配置されていた家具からも、その豪華な雰囲気を感じ取ることができた。こういった所はどうも落ち着かない。


メイドさん先導の下、玄関正面にある大きな階段を登り、少し歩いて辿り着いた部屋には、これまた高そうな椅子に座る一人の老人がいた。


「よくぞやって来てくれた。亡霊狩り諸君」


聞き覚えのある低い声に長く伸びた白い髭。この人が五日前に話した人だと、私は理解する。


「まずは改めて自己紹介をさせてもらおう。私は『坂田さかた 宗四郎そうしろう』。亡霊狩りの上層部として君たちに護衛の任務を依頼した張本人だ」


上層部、坂田さんは続けて私たち四人へと言う。

「この二日間、君たちには私の身の安全を守ってもらう。よろしく頼む」


私たち四人を代表して、冬神さんが前へと出て坂田さんへと尋ねる。

「一つ質問をさせてください。坂田さんは、能力による占いで死期を知ったと聞きました。そこで訊きたいのですが、死因は判明してますか?」


それは、私たち四人が移動の最中に考えていたこと。護衛をするという情報以外、私たちに情報は与えられていないからだ。死期はわかっていても、死因がわからなければ私たちも対策のしようがない。そのため、冬神さんが上層部にそのことを訊こうと提案した。


「それは私よりも、そこの占い師に訊いた方がいいことだ」


坂田さんは部屋の隅を指差す。そこは、扉付近に立つ私にとって死角となる位置だった。覗き込むとそこには、いかにもな感じの占い師。衣服で隠した口元から漏れ出るように発せられた声から、彼女が女性であると知る。


「『古きからの友人に死神は顔を現す』。死を連想させるこの結果が占いで出ました」

「つまり、死因は他殺ですね」


他殺……か。ある意味、私たち護衛の身としては一番やりやすいかもしれない。

不慮の事故なんかが死因だったとしたら、私たちもそれに巻き込まれ、護衛の役目を終えられずに死ぬ可能性がある。だが、他殺ということは何者かが坂田さんを殺しにやって来るということ。


「そうだ。私はこの二日の間に何者かによって殺される可能性がある。そしてここで問題なのは、私はこれから移動をしなければならないということだ」

「移動? 一体どこへですか?」


冬神さんの問いに、坂田さんは答える。

「我が国の中枢『北王都ほくおうと市』だ」

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