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命の行方  作者: 焼魚
第1章:邂逅・啓発

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17/22

17:束の間の休息

「絶命する……? 一体どういうことですか?」


私の問い掛けに対して少しの間を空けた後、彼は私に言った。

「君はこの国で能力による占いが禁止されていることを知っているか?」

「……いえ」


突然投げかけられた話題。確かに、考えてみると能力を使用した占いなど見たことがない。過去に一度してもらった占いも能力ではなく、タロットカードを用いたものであった。


「禁止されている。つまり能力を用いて占う事自体は可能というわけだ。だが、それを禁止したのには明確な理由がある。正確すぎるが故に、人が不利益を被ることがあるのだ。また、能力を用いた占いの一つとして、人の死期を予測する占いも存在していてね」

「……上層部さんはその占いを利用したんですね」

「そういうことだ」


死期の占い。私的にはそんなものをしてもらいたくないが、上層部さんのように死期を知っておく必要がある人間もいるのだろう。


「……でも何で私にその話をするんですか?」

「上層部である私から、特異能力者の君への頼みだ。私の護衛をしてくれないか?」

「護衛……ですか? それなら御影さんや霞田さんの方が適任じゃありませんか?」

「君の言うとおりだ。実力のみで考えればな。だが御影や霞田は私を忌み嫌っているからな。反逆、なんて可能性もあるかもしれない」


ああ、そういえば御影さんは上層部を嫌ってたっけ。それに三葉の言葉を思い出すに「亡霊狩りで上澄みの人たちはみんな嫌ってる」。上層部さんの拠り所が少ないというのもある程度納得がいく。


「私は良いですけど、私はまだ新米の亡霊狩りですよ? 命を預けるなら、もっとちゃんとした人の方が良いんじゃないですか?」

「今回、護衛の任務に参加するのは君だけじゃない。その点に関しては君も安心して良い」

「それを聞いて安心しましたよ」


私一人なんぞに命を掛けてもらっちゃ困る。私はまだ弱いのだから。


「五日後の朝六時、本部前にて集合だ。忘れないようにな」

「了解です」


    **


護衛の任務まで、まだ五日ある。私はその間にやるべきことをすることにした。


三葉と共に私は再び蓮花市を訪れた。キャンプ内を、私たちとリーダーは横に並んで歩く。要件は、市内で行方不明となっていた鏑木さんと淳間さんについてだ。


「捜索部隊の皆さんによると、鏑木さんと淳間さんはそれぞれ死体となってキャンプ付近の地中に埋められた状態で見つかったそうです」

「そう……でしたか」


悲しそうに、小さな声で俯くリーダー。


捜索部隊によると、鏑木さんと淳間さんが見つかった付近で能源の込められた大量の人形と複数人の死体も一緒に見つかったらしい。つまり、予め傀儡使いは自身の能源を込めた人形を地中に埋めておき、必要に応じてそれを操作し戦闘へと向かわせていたのだ。


そして鏑木さんと淳間さんも、その傀儡の一つとして利用するつもりだった。この残酷な事実を伝えることは控えておこう。三葉と私はそう思った。


歩いていた時、リーダーが急に足を止め、私たちに言った。

「お二人とも、これから食事の予定とかってあったりします?」

「……? いえ、特には」

「それじゃあ、少し寄り道してもいいですか?」

「構いませんけど……どこに行くんですか?」

「ふふ、秘密です」


彼女に連れてこられたのは、キャンプに点在するテントの一つ。その中には、大きな長テーブルとそれに付随して置かれた椅子の数々。そして、テーブルの上には大量の料理。加えてそこには、捜索部隊の人たちもいた。


「おっ、来た来た!」

「ふたりとも、酒は飲める口か?」


「私たちまだ未成年ですよ」と軽口をたたきながら、私たちは用意されていた椅子に着席する。私たちと同じくして椅子に座るリーダーのその両腕には、大量のビール缶が抱えられていた。


「私たちからあなたたちへの、感謝の印です。沢山食べてくださいね」


それから私たちは、酒に溺れた大人たちの中で食事を楽しんだ。そして判明したのが、リーダーは意外にも酒豪であるということ。捜索部隊の人たちが次々とダウンする中、彼女ただ一人がピンピンしていた。


大量の料理を平らげた後、私と三葉は「この人たちはキャンプの方で寝かせておきます」と言うリーダーに捜索隊の人たちを任せ、すっかり日が落ちた頃にキャンプを出た。


「楽しかったね。ちょっと酒臭かったけど」

「あはは、そうだね」


暫くは歩くことになるので、このままありきたりな会話を続けても良かったのだが、私には一つ、どうしても気になっていることがあった。


「ねぇ三葉。聞いてもいいかな」

「ん? 何を?」

「言いたくなかったら言わなくていいんだけどさ……あの時、どうして泣いてたの?」


三葉と一緒に初めてキャンプを訪れた時、彼女はキャンプの様子を見て泣いていた。その光景がこの数日間、私の脳裏に焼き付いて離れなかった。


三葉は少しの沈黙を挟んでから、今までと同じ口調のままに喋った。

「私さ、四年前にあんなことがあるまではここに住んでたんだよね。でも無差別テロが起こって、移住を余儀なくされた。そのうえ、避難の時に私はまだ小さかった妹と両親を失った」

「……! ごめん……! 掘り返すようなことしちゃって」

「ううん。別に良いよ。目の前で人が急に泣き出したら嫌でも気になっちゃうもんね」


感情を包み隠すようにして貼り付けられたその笑顔に私は救われる。三葉は話を続けた。

「泣いたのは、家族を思い出したってのもあるけど、私、キャンプの様子を見て嬉しかったんだと思う。もう住めなくなったこの思い出の場所に、頑張って生活をしようとしてる人がいるってことが、きっとたまらなく嬉しかったんだ」

「三葉……」

「それに、悪いことばかりじゃなかった。私はあの時、一人で大勢の亡霊に立ち向かっていく英雄の背中を見て、それに憧れたから今私はこうして亡霊狩りにいる」


すると彼女は笑顔でこちらへ視線を向けた。

「そして澪やたくさんの仲間に出会えた。だからこう見えても私、結構幸せなんだよ?」


彼女の笑顔に釣られ、私も無意識のうちに笑みを零していた。


    **


「澪の今の動きには、かなりの無駄がある。だから今後の課題はその無駄を一つずつ無くしていくことだ」

「はい先生!」


春斗指導のもと、私は剣術の特訓に勤しむ。


上層部から依頼された護衛の任務。そのために今から少しでも力を身に着けておく。それが今の私にできることだ。


……にしても、上層部の命を狙う人って、一体どんな人なのだろう?

いや、まずまず人から狙われているのかな? 不慮の事故って可能性もあるし……


無心で素振りをしていたところに色んな考えが流れ込んでくる。

「澪。少し休もう」

「うん? 私はまだまだいけるよ?」

「頑張ることは大事だけど、その分休憩も大事だろ?」

「それもそうか」


私は春斗と共に、少しの間休憩することにした。私は水分を取りながら、春斗へと尋ねた。

「春斗ってさ、何で亡霊狩りになろうって思ったの?」

「これまた急だな。何でだ?」

「ん〜……何となく」


「そうだな」と、春斗は顎に手を当てる。それから答えた。

「ちゃんとした仕事に就きたいとか、親孝行したいとか、色んな理由はあったけど、結局はお金かな」

「お金かい」


まぁ確かに、一つの任務をこなした後に得られる収入は私たち学生にとってかなりの金額だ。初めてスマホのアプリで残高を確認した時のあの感動を忘れることはないだろう。


「でもな。この仕事を続けてたら、それなりにやりがいを感じてくるんだ。誰かを救ったらそれ相応の感謝をされ、危険な亡霊を捕まえたらその分何人もの命を救うことができる。俺たちは得た収入に見合った仕事をやってるんだよ」

「……それもそうだね」


それから少しして、私たちは特訓を再開した。

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