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命の行方  作者: 焼魚
第1章:邂逅・啓発

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11:蓮花市(3)

蓮花市内キャンプにて。


澪らと別れた後、三葉を含んだ捜索部隊の四人は、着実にキャンプへと辿り着き、東と三葉、五十嵐と中村の二手に別れてキャンプ内での聞き込みを進めていた。


三葉らはまず初めにリーダーのもとへと行き、事情を説明。後に許諾を得て聞き込みを進めた。彼女が先ほど話を聞いていない者らを中心として聞き込みを進めたが、結果として怪しい者はいなかった。


「やっぱり、聞くだけじゃ何とも言えないですね」

「能源は普通だったけど、意図的に変化させている可能性もあるわけだしね」

「ええ」


そんな時、キャンプの外からこの蓮花市全体に轟くような凄まじい爆音がした。三葉は杖を出すが、即座にこの音が遥か遠くからのものであると気づく。


そして彼女の脳裏に最悪の可能性が浮かぶ。

『もし、亡霊が自分たちよりも遥かに遠くの能源を感知でき、自分たちを避けて澪たちの方へと向かっていたのだとしたら──』


「──澪が危ない……!」


    **


時は遡り、轟音が市内に鳴り響く前。


私は沢木さんの感知プラセプトを使い、一つの能力源を見つけた。それ以外の能力源はいくら探しても見つからなかった。二人を呼び、見つけた能力源を瓶で回収してもらう。ここで松井さんの能力が活きた。


松井さんの能力「抽出者レイアラー」は、自身が参照したことのあるデータを頭の中に圧縮して保存し、必要に応じて解凍することのできる能力。つまり、コンピュータでいうファイルのような能力らしい。


松井さんは亡霊狩りのデータを解凍し、手元にある能力源が誰のものであるかを確認する作業に取り掛かる。これが亡霊狩りのもの──淳間さんのものであれば、仲間割れの可能性が高くなる。逆に第三者のものであれば、襲われたと見ることができる。


緊張の瞬間、松井さんは告げた。

「淳間のものだ」


驚きよりも早く、私は発動し続けていた感知プラセプトによって、異物の侵入を感じ取った。私がそれに反応するよりも早く、沢木さんが私の腰に携えていた鞘から刀を取り出し、異物の侵入方向──背後の方に刀を向けた。


私が振り返った時、それは既に沢木さんの右腕が飛んだ後だった。


刀が腕と同時に宙に舞い、沢木さんが斬られた方の腕を押さえながら地面に膝を着く。

彼の先にいた異物、それは人の形を模した作り物、つまり人形だった。大柄な男性と同じ程度のサイズに、欠けた両目。人形の手には沢木さんの腕を斬り落としたであろう刀。


私は近くに飛んできた自身の刀を拾い、再び沢木さんへと振り下ろされる刀を受け止めた。

「下がってください! 沢木さん!」


私が刀を受け止めている隙に、松井さんが沢木さんの体を後方へと引っぱっていく。沢木さんは唸り声を上げながら、感知プラセプトを解除していた。私は目の前の人形に集中する。


凄い力だ……! 刀に能源を流しながら全力で押し返そうとしてるのに、人形の刀はびくともしない……! それどころか、このままじゃ押し切られる……!


刀に押され、地面に背を着けるほどに追い込まれる。その窮地を救ってくれたのは、松井さんの蹴りであった。人形は軽く吹き飛び、そのまま動かなくなった。


松井さんの手を借り、立ち上がる。

「まだ動くかもしれない。気をつけろ」

「はい!」


数秒経ち、松井さんは地面に落ちていた石ころを人形へと投擲する。それは人形の体に当たったが、人形はびくともしない。


私は一つの仮説を立て、それを松井さんへと話す。

「松井さん。人形が自ら動く様子を見たことがありますか?」

「……いや、ないな」

「ですよね。でもこの人形はそうじゃなかった。つまり、何者かがこれを操っているんです。そして恐らく、そいつが今みたく二人を襲ったんだと思います」


そして、私はそれができる人間を知っている。

沖亜市にて、私と春斗が昨日捕まえた「傀儡使い」だ。だが、彼は今も継続して拘束されているはず。ここにいるはずがない。


思考を巡らせていた時、周囲の瓦礫の山の中から数え切れないほど大量の人形が現れた。先程の人形と体裁がまるで同じなそれらは高く飛び上がり、私たち二人目掛けて一斉に刀を振りかぶる。逃げ道など、どこにも無かった。


くそっ……! どうすればいいんだ……!


悩んだ末、その打開策は見つからなかった。刀が顔面の前に到達し、絶望を知る。死を悟った。


その瞬間、私は見た。

空、人形たちよりも高い位置にいた、白髪の男性。まるで重力が逆転したかのように頭が地面、足が上空に向かって伸びていた。そして何より、どういうわけか落下せずにその場で留まり続けている。


刹那、彼は消えた。

消えたかと思うと、瞬く間にして私たちの周りにいた人形たちの全てが破壊されていた。


「お前が煌然澪か?」


背後から声がして、振り返った。すると、鼻の先が触れそうな距離に彼の顔があり、私は目を丸くして思わず後ろに下がった。


「う、うわぁ!」


もはや彼がこの人形たちを壊したのかはわからないが、私たちを救ってくれたことを見るに、仲間だ。全身を黒で包む白髪の男性。もしやこの人────


「驚かせてすまない。俺は『橙田とうだ 怜音れお』。お前と同期の亡霊狩りだ」

「……! やっぱり!」

「“やっぱり”?」

「あ、いや、春斗たちから話聞いてたからさ」

「ああ、なるほど。……そんなことよりだ。敵はまだいるぞ」


怜音は沢木さんの応急処置を行う松井さんの方を指さす。その方向には、また同じ人形が十体ほど立っていた。だがしかし、違う点が一つあった。


今回の人形には、両目が備わっていた。何かしら、さっきと異なるはずだ。私がそれを推測するよりも早く、怜音が私の前に立って能力を発動した。


「『空虚ラディス』」


瞬間、人形らが壁にぶつかったようにしてその場で衝撃を受ける。そして何故か、私たちの方へは近づけないようだ。不思議なことに、人形たちはその場で渋滞を起こしていた。


怜音は片手を伸ばし、空気を握る潰すかのようにして、拳を作る。同時、人形らは外側から圧力を掛けられるようにして圧壊した。そして、起こる巨大な爆発。


爆風の中、頭を回す。状況から推測するに、目を持つ人形は爆発する。その条件は壊されること。それか自ら爆発することができるかもしれない。だから距離を取った段階での破壊が理想的。……怜音はそれを理解して今のように破壊したのだろうか。


あの一瞬でそんなことをできるわけがないのだが、彼にはそれが出来ると思わせるような雰囲気があった。知識やそれに基づいた思考などではなく、私は直感していた。


彼は強者だ。たぶん、今まで出会ってきたどの人間よりも。


怜音が沢木さんらの所へと歩きながら、私へと訊いた。

「澪。あの人の出血が酷い。回復系の能力を使えたりはしないか?」

「回復系……あっ、そういえばこのまえ霞田さんの……!」


私は沢木さんのもとに駆け寄り、霞田さんの能力を思い出す。そして、彼に能力を施した。

「『不完全な回帰(インリバース)』」


私の脳源が沢木さんの負傷部に流れ込み、腕を形成していく。

この能力は発動直前の二分間の間に受けた傷であれば完治する。但し一日に二回の使用が限度という能力だ。


模倣したことにより、霞田さんの能力のことが脳内に流れ込み、一日に二回という限度の理由を知った。いや、それ以前に消耗した能源の量がその事実を語っていた。


沢木さんの呼吸が正常なものになり、私の呼吸が荒れていく。そんな中、怜音の声が頭に響いた。

「伏せろ!」


近くにいた松井さんが私と沢木さんの頭を強引に地面へと押す。視界の隙間から見ると、目の付いた人形が数え切れない程たくさん上空から落下してきていた。


直後、耳をつんざく激しい爆音が上空でした。


    **


亡霊狩り本部。御影と唐木がカフェで休憩をしていた。

「そういえば、アイツはどうなった?」

「アイツ? ……ああ、お前の部下が最近捕まえたっていう傀儡使いか?」

「そうだ。噂によると全国各地で傀儡使いが発生してるって聞いたんだが」

「全国各地で? 一体どういうことだ?」


御影はプラックを一口飲み、スマホを取り出して操作した後、その画面を唐木へと見せた。そこには、御影が今口にした言葉の裏付けとなるニュース記事が表示されていた。


『全国各地にて“傀儡使い”と名乗る人物が出現。対亡霊犯罪専門組織は現在対処にあたっていると──』


「へぇ。全く知らなかったな。……てことは、偽物が続出してるってことか?」

「そうであってほしいよ」

「……どういうことだ?」


御影は深刻な表情を浮かべながら、ニュース記事を見つめる。

「唐木。本物の傀儡使いはたった一人で、そいつが全国各地の人間を操れる奴だったらどう思う?」


御影の言葉に、唐木は苦笑する。

「そんなわけ……ないだろ? だって、そんな奴がいたら……この国は滅び兼ねないぞ?」

「まぁ、そうだよな」


両者の間には不穏な空気が漂っていた。

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