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GM権限、使えちゃいました①

あれから数日。

私は町のベンチに座り、頬杖をついていた。

「まずは情報を整理してみよう。」

この数日間、町の人や冒険者から集めた情報を頭の中で整理してみる。


冒険者は私をただの子供だと思っているから、ほとんどの人が答えづらい質問にも答えてくれた。

……子供で良かった。

たまに答えてくれなかったり、追い払われたりもしたけど、それは子供に言えないような内容が殆どだった。

言いにくいことを聞いてしまってごめんなさいとここで謝罪の意を表明しておきます。


それではまず最初に、ゲームのように『レベルアップ』はあるのか。

結論から言うと、レベルアップはあると判断した。

モンスターを倒したり、人から受けた依頼を達成したりすると、頭上から淡い光が降り注ぎ、強くなることがあるらしい。

町の人たちはそれを「女神ガイア様の祝福」と呼んでいた。


だけど私には、レベルアップとしか思えない。

つまり前世の知識通り、モンスターを倒し、依頼をこなしていけば私は強くなれる可能性がある。

「レベルは明確な強さの指標。しっかり上げていきたいね。」


次に、冒険者になる方法。

この国の法律では、冒険者登録ができるのは成人扱いとなる十二歳以上で十二歳未満の冒険者活動は認められていないらしい。

もし破れば、親や関わった大人たちが重い処罰を受ける。

とはいえ、身寄りのない子供や、親が働けない家庭も少なくない。


そんな子供たちが国に隠れて冒険者として生計を立てることは、決して珍しくないそうだ。

国としても、そうした子供たちが飢え死にしたり、凶悪犯罪へ走ったりすることは望んでいない。

だから事実上、黙認されているらしい。

その証拠に、サジタリウスにもそうした子供はいる。


それでも大人たちは見て見ぬふりをしているのだ。

国も国民も暗黙の了解で、お互いに「うまくやる」ことを選んでいる。

ただし、私のように両親が健在な子供は話が別だ。

親に無理やり働かされている可能性があるため、子供は保護対象となってしまう。

もし私が十二歳未満で冒険者活動をすれば、パパとママは間違いなく牢獄行きだという。


「パパとママを犯罪者にするわけにはいかないもんね。」

つまり、私が十二歳になる前に冒険者になるという選択肢は消えた。

思い返せばゲームでも、冒険開始は十二歳の誕生日って設定があったもんね。


次に、冒険者の職業について。

この世界では、自分の職業ごとに決められた制服があり、それ以外の服を着ることは基本的に良しとされていないらしい。

他職の服を着て職業を偽る者は、犯罪者である可能性が高いからだという。

もっとも、多少のアレンジ程度なら問題ないそうだけど。


だから私は町を見渡しただけで、「一次職しかいない」と判断できた。

そのことについて重点的に町の人へ聞いて回った結果、二次職になれるのは本当に一握りの実力者だけだということも分かった。

さらにその上の三次職以上についても、それとなく聞いてみた。

だけど、それは伝説上の存在のような扱いを受けていて実際に見たことは無い、そう口を揃えて言っていた。


「ふぅん……見たことないんだ。」

多くの人は三次職になる実力はおろか、なり方すら知らないらしい。

もしかしたら国の中枢にいる人間なら知っているのかもしれない。

だけど少なくとも一般人には知られていないほど謎多き情報だということだ。

SNSも普及していない異世界では情報交換もできないだろう。


「これは……まずいよねぇ。」

ここからは前世の知識を踏まえた私の考察だ。

数日前は、自分に有利な条件が見つかったことに喜んでいたけど、一つ重大な問題を思い出してしまった。

ネームレスオンラインは二十年以上続いた長寿MMOでサービス開始当初は一次職しか存在しなかった。

その後、アップデートによって二次職、三次職と順番に実装されていく。


当然、それに合わせてメインストーリーの敵も強くなっていった。

今年はゾディアック王国歴八五七年。

ゲームのメインストーリー開始から七年前だ。

そしてメインストーリー開始から二年後、封印されていた魔王が復活し、世界を巻き込む大抗争が始まる。

つまり今から九年後だ。


「そうなったら、パパとママは無事でいられる?」

……絶対に無理だ。

たとえ一次職が何人集まろうと、魔王には勝てない。

ゲームでも、二次職環境で実装された魔王とは何度も戦うことになる。


アップデート度に暗躍し、力を付けていった魔王が倒されたのは三次職実装後のことだった。

今の冒険者たちの戦力では、モンスターに蹂躙される未来しか想像できない。

ぞわり、と背筋を寒気が走る。

人類が滅びないことは、前世の知識で『知っている』。


だけど、大切な人たちを守れるかどうかは、まったく別の話だった。

私は、自分の夢よりもずっと大きな問題に頭を悩ませることになった。

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