GM権限、使えちゃいました①
◇
あれから数日。
私は町のベンチに座り、頬杖をついていた。
数日間、町の人や冒険者から集めた情報を整理してみる。
相手は私をただの子供だと思っているからか、ほとんどの人が質問に答えてくれた。
たまに答えてくれなかったり、追い払われたりもしたけど。
……子供で良かった。
――まず、ゲームのように『レベルアップ』はあるのか。
結論から言うと、『レベルアップ』はあると判断した。
モンスターを倒したり、人から依頼を達成したりすると、頭上から淡い光が降り注ぎ、強くなることがあるらしい。
町の人たちはそれを「女神ガイア様の祝福」と呼んでいた。
だけど私には、『レベルアップ』としか思えない。
つまり前世の知識通り、モンスターを倒し、依頼をこなしていけば私は強くなれる可能性がある。
――次に、冒険者になる方法。
この国の法律では、冒険者登録ができるのは成人扱いとなる十二歳以上。
十二歳未満の冒険者活動は認められていないらしい。
もし破れば、親や関わった大人たちが重い処罰を受ける。
とはいえ、身寄りのない子供や、親が働けない家庭も少なくない。
そんな子供たちが国に隠れて冒険者として生計を立てることは、決して珍しくないそうだ。
国としても、そうした子供たちが飢え死にしたり、凶悪犯罪へ走ったりすることは望んでいない。
だから事実上、黙認されているらしい。
その証拠に、サジタリウスにもそうした子供はいる。
それでも大人たちは見て見ぬふりをしているのだ。
国も国民も暗黙の了解。
お互いに「うまくやる」ことを選んでいる。
ただし、私のように両親が健在な子供は話が別だ。
親に無理やり働かされている可能性があるため、子供は保護対象となる。
もし私が十二歳未満で冒険者活動をすれば、パパとママは間違いなく牢獄行きだという。
つまり、私が十二歳になる前に冒険者になるという選択肢は消えた。
思い返せばゲームでも、冒険開始は十二歳の誕生日って設定があったもんね。
――次に、冒険者の職業について。
この世界では、自分の職業ごとに決められた制服があり、それ以外の服を着ることは基本的に良しとされていないらしい。
他職の服を着て身分を偽る者は、犯罪者である可能性が高いからだという。
もっとも、多少のアレンジ程度なら問題ないそうだけど。
だから私は町を見渡しただけで、「一次職しかいない」と判断できた。
そのことを町の人へ聞いて回った結果、二次職になれるのは本当に一握りの実力者だけだと分かった。
ちなみに三次職以上についてもそれとなく聞いてみた。
だけど、誰一人として知らなかった。
「ふぅん……知らないんだ」
多くの人は三次職以上の存在すら知らない。
国の中枢にいる人間なら知っているのかもしれない。
だけど少なくとも一般人へは知られていない。
それほどの秘匿情報なのだろう。
「それは……まずいよねぇ。」
ここからは前世の知識を踏まえた私の考察だ。
数日前は、自分に有利な条件が見つかったことに喜んでいた。
だけど、一つ重大な問題を思い出してしまった。
『ネームレスオンライン』は二十年以上続いた長寿MMO。
サービス開始当初は一次職しか存在しなかった。
その後、アップデートによって二次職、三次職と順番に実装されていく。
当然、それに合わせてメインストーリーの敵も強くなっていった。
今年はゾディアック王国歴八五七年。
ゲームのメインストーリー開始から七年前だ。
そして、そこから二年後。
封印されていた魔王が復活し、世界を巻き込む大抗争が始まる。
「そうなったら、パパとママを守れる?」
……絶対に無理だ。
たとえ一次職が何人集まろうと、魔王には勝てない。
ゲームでも、二次職環境で実装された魔王とは何度も戦うことになる。
最終的に倒されたのは、三次職実装後のことだった。
今の冒険者たちの戦力では、モンスターに蹂躙される未来しか想像できない。
ぞわり、と背筋を寒気が走る。
人類が滅びないことは、前世の知識で『知っている』。
だけど、大切な人たちを守れるかどうかは、まったく別の話だった。
私は、自分の夢よりもずっと大きな問題に頭を悩ませることになった。




