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力の方向⑥

まず『アンチマジックフィールド』を解除して思案する。

さて、考えなしにここまでやってしまったけど、この後始末をどうするべきか。

事件が落ち着いたことで、私は急速に冷静さを取り戻し始めていた。

セリーちゃんを救出できたのは良い。

犯罪者たちを全員どつき倒したのも良い。

でも、どうやってこいつらを裁く?

セリーちゃんの証言があれば、こいつらは法の裁きに掛けられる。

やっていたことを考えれば、間違いなく処刑されるだろう。

そうなると一度、セリーちゃんには街に戻って事件を報告してもらう必要があるけど……。

その間にこいつらから目を離して、逃げられるのも癪だ。


「うーん……。」

そうなると、セリーちゃんには一人で魔導都市レオに帰ってもらう必要がある。

でも、今回の件は冒険者ギルドも完全には信用しきれていない。

そんな状況で、こんな目に遭ったばかりのセリーちゃんを一人で帰すのは抵抗があった。

どうにか安全にセリーちゃんを街まで送り届けて。

その上で、こいつらも騎士団に引き渡さないといけない。

「どうしよう……。」

悩んでいると、発動したままになっていた『シースルー』に何かが反応した。


――ここの入り口?

大勢の人間の反応がある。

もしかしたら、こいつらの仲間かもしれない。

私はレーヴァテインを握る手に力を込めた。

ドゴン!

大きな音が響き、強い力で空洞の入り口が破壊された。

「あ、こいつは指名手配のローグです!」

「お前はこいつを拘束! 残りは私に続け!!」

最近、聞いたことのある声がした。

甲冑同士がぶつかる音。

おそらくナイトの集団。

十数人ほどが、一斉にこちらへ駆けてくる。

もしかして――。

騎士団が来てくれた?


先頭に立って現れたのはクレスだった。

「えっ……?」

その後ろから、たくさんのナイトが続いてくる。

中にはロードナイトの姿まであった。

「なんだこれは?」

「クレス様、これは一体……!?」

突入した騎士団員たちは目を丸くした。

無理もない。

犯罪組織の拠点に突入してみれば、被害者らしき女の子を一人残して、犯罪者と思わしき人間が全員地面に転がっている。


「分からない。だが、被害者の救助が先だ。」

「はっ!」

救助に来たのがクレスなら大丈夫だろう。

クレスはすぐにセリーちゃんから簡単な事情を聞き、周りに倒れている犯罪者たちを拘束するよう騎士団員へ指示した。

騎士団員たちは倒れている男たちの体から危険物を取り上げ、一人ずつ拘束していく。

さらに武器やアイテムが隠されていないかまで入念に確認していた。

これなら大丈夫そうだ。


十分に安全が確保できたところで、一緒に来ていたプリーストが『ポータル』を使用する。

青白い光が地面から溢れ出した。

女性騎士に肩を抱かれたセリーちゃんが、その光の中へ入っていく。

その直前。

セリーちゃんが私のいる方を見た。

そして、小さく頭を下げる。

『ありがとう。』

声は出していなかった。

だけど、唇は確かにそう動いたと思う。


「……え?」

ドキッとした。

もしかして、私の姿が見えてる?

慌てて自分の体を確認する。

《HidePC》の効果はちゃんと続いている。

「たまたま……?」

多分、助けてくれた見えない誰かに向かってお礼を言っただけ。

そう思うけど。

思いもよらない友達の行動に、少しだけ驚いてしまった。


クレスは最後まで周囲を確認していた。

一通り見渡して、何かに安心したように息を吐く。

そして最後にプリーストと一緒に『ポータル』へ飛び乗った。

全員がこの場からいなくなったことを確認して、私はホッと胸を撫で下ろす。

思うところはたくさんあるけど、一旦これで事件は収束した。

助けは間に合わなかった。

セリーちゃんを無傷で助けることはできなかった。

それでも、取り返すことはできた。

満足のいく結果ではない。

だけど、ギリギリのところで何とか踏みとどまれたと思う。


「それに、人を殺さなくて済んだ。」

アイラになってから七年。

ずっと一緒にいて。

一つになったと思っていた肉体と精神。

だけど今日、いとも簡単に肉体の感情に主導権を持っていかれそうになった。

止めるのがもう少し遅かったら、間違いなく人間を殺していた。

「本当に、気を付けないと。」

私には簡単に人を殺せる力がある。

だけど同時に、殺さずに捕らえるだけの力もある。

だったら、なおさら言い訳はできない。

力があるからこそ、その使い方を間違えちゃいけない。

私は改めて、この力との向き合い方を考えないといけないと思った。


「……でも。」

どうしてクレスと騎士団がここに来たんだろう?

これだけはどうしても分からなかった。

偶然にしては出来過ぎている。

指名手配のローグを知っていたことから考えても、最初からこの場所を目指して来た可能性が高い。

「何かあったのかな。」

これは後で確かめる必要がありそうだ。

「私もそろそろ戻りますか。」

反省も後悔もたっぷりした。

今後はもっと気を引き締めないといけない。

そして何より今は、セリーちゃんの無事をちゃんと確認したい。

「《WarpPC Leo》」

私の体は一瞬で魔導都市レオの街中へ跳躍した。

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