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アイラが見る夢⑤

「アイラ、朝だよ。」


まだ空が朝焼けに染まり始めた頃、私は目を覚ました。

すでにママは朝食の支度を始めていて、パパも髭を剃り終えている。


「……んぅ~。」


私は昔から朝が弱く、いつもパパに起こされていた。

もぞもぞとベッドから降りると、家から十メートルほど離れた井戸へ向かう。


「アイラちゃん、おはよう。」


朝の井戸端には近所の人たちが集まり、水を汲みながら世間話をしていた。


「おはよぉございまふ。」


寝起きで目も半分しか開いておらず、舌足らずな私を見て、みんながくすりと笑う。

汲みたての井戸水を少し分けてもらい、顔と手を洗った。

春先の井戸水は驚くほど冷たく、一気に眠気が吹き飛んだ。


「ありがとうございます。」


井戸水を分けてくれた人へお礼を言い、家へ戻るとテーブルには朝食が並んでいた。

サラダに目玉焼き、干し肉、それにポテトのスープ。

いつもよりずっと豪華だ。

パパもママも何も言わない。

それでも昨日のことを心配して、少しでも栄養のあるものを食べさせようとしてくれたのだとすぐに分かった。


その気持ちが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。


「いただきます。」

「まだ熱いから気をつけてね。」

「足りなかったら言うんだぞ。」


――愛されてるなぁ。

二人の顔を見ているだけで、自然と笑顔になった。


「もう頭は痛くないか?」


朝食を食べ終えると、パパとママが心配そうに私の顔を覗き込んだ。


「うん。もう大丈夫。」


そう言って小さく笑ってみせると、二人はようやく肩の力を抜いた。


「よかった……。」


ママが胸に手を当てて、小さく呟く。

しばらく三人で話していると、ママが窓の外へ目を向けた。


「あなた、そろそろ仕事へ行かないと。」

「……もう少しだけ。」

「駄目です。」


ぴしゃりと言われ、パパは目に見えて肩を落とした。

その様子が何だか可愛くて、私は思わず笑ってしまう。

私はパパのところへ駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。


「おっと、どうしたんだ?」


パパは私の頭を優しく撫でながら、穏やかに微笑む。


「パパ、行ってらっしゃい!」

「……っ!」


一瞬目を丸くしたパパは、照れくさそうに笑った。


「ああ! 行ってくる!」


家の前まで見送って手を振ると、パパはいつもより少し足取りを軽くして仕事へ向かっていった。


「ママ!」


今度はママのところへ駆け寄って抱きつく。


「あらあら、私も?」


ママはくしゃっと笑って私を見つめた。


「いつも美味しいご飯、ありがとう。」


えへへ、と笑うと、ママは顔を真っ赤にして私を抱きしめる。


「もう、この子ったら……。」


照れ隠しのようにそう呟くママの腕は、とても温かかった。

今日もきっと、素敵な一日になる。

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