新米冒険者⑤
さぁ、次が最後の部屋。
『アインス』、『ツヴァイ』とくれば、最後は『ドライ』だ。
開発元が付けたチュートリアルNPCの名前は一、二、三。
「覚えやすくて良いけどね。」
むしろ新人プレイヤーに覚えてもらうことを考えれば、正解だったのかもしれない。
そんなことを考えながら部屋の前に立ち、扉をノックする。
「入りなさい。」
中から低くて格好いい男性の声が響いた。
「失礼します。」
扉を開ける。
部屋の中には『ポータル』を展開するための広い空間があり、その前に長身の男性が立っていた。
――やっぱりドライだ。
私は後ろ手に扉を閉めると、ドライの前まで歩いていく。
「どこのギルドに行きたいんだ?」
その質問に迷う必要はなかった。
「ウィザードギルドまでお願いします。」
ウィザードになることは七年前から考えていた。
ただし、私が最終的に目指しているのは魔法使いとして戦う系列ではない。
『サモナー』の系列だ。
詳しい理由は一旦割愛するけど、一番大きな理由は個人行動に向いているから。
私はこれから、基本的にソロで活動するつもりでいる。
仲間がいるところで『レーヴァテイン』を振り回すわけにもいかないし、GMコマンドだって人前では使えない。
その点、一人なら周囲を気にする必要がない。
本当に危険になったら《HidePC》で逃げることもできる。
だから私は、最初からソロ活動を前提に職業を選んだ。
その条件に一番合っていたのが『サモナー』だったというわけだ。
もっとも、サモナーはかなりピーキーな性能をしていたので、ゲームでは趣味職として扱われることが多かった。
得意分野がはっきりしているだけで、ちゃんと使えば優秀な職業なんだけどね……。
最後まで開発や運営の意図がプレイヤーに伝わらなかったのは、元運営として少し悲しいところである。
「確かに前衛は難しそうだ。」
ドライは私の背丈から腕、足元まで順番に見ていく。
「君の魔力量は分からないが、選択としては悪くないだろう。」
――あぁ、道理で。
さっきから私の背丈や腕を見ていると思ったら、職業の適性を見ていたんだね。
……前衛は難しそうって言われたことについては聞かなかったことにしよう。
「転送は一人一回までだ。都合が悪ければ明日以降でも構わない。」
「このまま転送していただいて構いません。」
ここまで来て帰る理由なんてない。
「そうか。では、すぐに送ろう。」
ドライは魔力石を取り出すと、『ポータル』を発動する。
地面に魔法陣が広がり、青白い光が立ち昇った。
いよいよだ。
この先で、私は本当に冒険者になる。
ドライは魔法陣の前に立つ私へ向き直った。
「あなたの旅路に、女神ガイアの加護があらんことを。」
敬虔なガイア教徒であるドライが、静かに祈りの言葉を口にする。
――これもゲームと同じセリフ。
何度も聞いた言葉。
だけど今は、画面の向こうから聞こえていた頃とは全然違って聞こえる。
「ありがとうございました!」
嬉しくなって大きく頭を下げる。
そして私は、青白く輝く魔法陣へ飛び乗った。




