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幕間 世界の掃除屋

水まんじゅうが森を跳ねている。

大きさは成人男性の頭部よりも一回り大きいくらい

重さは数kgほどあり、持ち上げるとズッシリ重い。

キリッとした眉。

丸くてつぶらな瞳。

大きく開いた口は、いつも笑っているように見える。

世界最弱のモンスター。

それが、この水まんじゅうに対する評価の一つだった。


体のほとんどは水分でできており、それが漏れ出さないように薄い膜で覆われている。

中心には核があり、微量の魔力を帯びている。

その核から魔力を抽出し、加工すれば、マッチ棒ほどの燃料になったり、少量の水を生み出したりできる。

しかし、得られるものはその程度。

はっきり言ってしまえば、大して倒す価値のないモンスターである。

新米冒険者が戦闘経験を積むため、試しに戦ってみる程度の相手だ。

だが、それは冒険者の視点から見た価値でしかない。


女神ガイアが生み出した世界の自浄装置『スライム』。

スライムは非常に食欲旺盛で、道端に落ちている『死体』、『ゴミ』、『冒険者が落とした装備』など、生き物以外なら何でも食べる。

街の外で命を落とした冒険者も、スライムに見つかれば骨も装備も残らない。

すべて綺麗に消化されてしまう。

冒険の途中で落とし物をした際、冒険者が諦めてしまうことが多いのも、どうせスライムに消化されていると考えるからだ。

長期間行方不明になった冒険者の遺体がほとんど見つからないのも、スライムが原因であることが多い。


ちなみに、スライムを鉄の柵や木箱に閉じ込めても意味はない。

時間をかけて、それすら食べてしまうからだ。

しかし、さすがに地面までは消化できない。

その性質を利用して、大きな穴を掘り、そこへスライムを入れて共用のゴミ捨て場として利用している街もある。

ゴミ焼却場など存在しない、この世界ならではの処理方法だ。

そのため、スライムは子供にとっても馴染み深い。

危険な森の奥にいるモンスターでもなければ、冒険者だけが目にする存在でもない。

もしかすると、どんなモンスターよりも人間の生活に身近な存在なのかもしれない。


そして、スライムにはもう一つ重要な役割がある。

スライムは消化したものを魔力へと還元し、再び世界へ戻す。

生き物が死ぬ。

残されたものをスライムが食べる。

それは魔力となって世界へ還り、やがて新たな命を育んでいく。

誰にも感謝されることなく。

その役割を知る者すら、ほとんどいないまま。

今日も水まんじゅうは、世界を綺麗にするため森を跳ねている。


こうして今日も世界は循環する。

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― 新着の感想 ―
>大きさは成人男性よりも一回り大きいくらい。 スライムの大きさ表現だけど、↑だと水の比重からすると数kgってのはおかしい(というか、成人男性レベルだと重量はt単位だろうし、ビッグとかヒュージとか呼ばれ…
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