アイラが見る夢②
「まだ動いてはダメですよ。」
立ち上がろうとした私を、ハイプリースト様はそっと抱き上げた。
「このままお家まで送りましょうね。」
「ありがとうございます。」
少し照れくさい。
けれど、今の私は五歳の少女だったことを思い出す。
おじさんの記憶と混ざってしまっているけれど、一度整理してみよう。
――私の名前は『アイラ』。
『ゾディアック王国』の町『サジタリウス』で生まれた五歳の女の子。
白銀の髪に赤い瞳。美人なママに似たと言われる顔立ちだ。
……うん、勝ち組では?
前世の私は可愛いものが大好きだった。
ゲームを遊ぶときは必ず女性キャラクターを選び、可愛い見た目に仕上げて、予算が許す限り衣装を揃えていた。
そんな私が、こんな美少女に転生するなんて、ご褒美では?
……いや、過労死は断じて良くないけど。
ふと顔を上げると、ハイプリースト様と目が合った。
女神様のように優しい笑顔が私へ向けられる。
つられて私も笑い返した。
しばらく見つめ合っていたけれど、少し恥ずかしくなって視線を逸らす。
にらめっこは私の負けだ。
視線を落とすと、ハイプリースト様の衣装が目に入った。
――何度見ても知っている服。
それは『ネームレスオンライン』の『ハイプリースト』そのものの装いだった。
――まさか、本当にネームレスオンラインの世界へ転生するなんて……。
死ぬ間際に「異世界転生できたら」なんて考えた気はする。
でも、それが本当に現実になるなんて思うわけがない。
これからどうしたらいい?
私が知る限り、この世界は剣と魔法、そして奇跡が存在するファンタジー世界。
そして、この世界は――。
考えがまとまらないうちに、ハイプリースト様が立ち止まった。
気が付けば、私の家のすぐ近くまで来ていたようだ。
これは後から聞いた話だけれど、私は事故のショックであまり喋れなくなっているように見えたらしい。
……ご心配をお掛けしてしまい、大変申し訳ございません。




