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危うい冒険心⑦

帰りは来た道をゆっくり戻る。

せっかく怪我をしないよう慎重に歩いてきたのだから、最後で転んだら笑えない。


「家に帰る前に手も洗いたいよね。」

石を握っていたせいで、手に土汚れが付いている。

町へ戻る前に湖で手を洗おう。

そんなことを考えながら、森の小道を歩いていく。


「この道を選んで正解だったみたい。」

思わず頬が緩む。

まさか本当に誰ともすれ違わないなんて思わなかった。

いきなり石がふわっと宙に浮いたり、スライムが何もない空間で弾け飛んだりしたら、誰だって悲鳴を上げる。

「変な噂が立ったらやりづらくなるもんね。」

一人で何度も頷いていると、ようやく木々の隙間から町の外壁が見えてきた。


森の出口だ。

「今日は大冒険しちゃったし、夕方までゆっくり休もう。」

そう思っていた。

――だけど。


ざわざわ……。

町へ近付くにつれて、人々のざわめきが耳へ届いてきた。

冒険者も町の人たちもどこか殺気立っていて、普通じゃない空気が漂っている。

何事かと思い、近くにいた冒険者たちの会話へ聞き耳を立てた。


「何があったんだ?」

「子供が門番の目を離した隙に町の外へ出たらしい!」

「入口から真っすぐ来たなら、ここを通るはずじゃ?」

「誰も気付かなかったのか?」

「草むらに隠れて抜けていったみたいだ。」

「まさか、『深い森』まで入ったんじゃないだろうな!?」


心臓がどくりと跳ねた。

まさか、私が町の外へ出たことがバレた?

一瞬、自分のことかと思って血の気が引く。

「どんな子なの?」

「七歳の男の子だ。カイって名前らしい。」

知っている。

好奇心旺盛で、やんちゃな男の子だ。


「なんて無茶を……。」

泣いているカイ君のお母さんの周りへ、冒険者たちが次々と集まっていた。

それぞれが武器を手に取り、地図を広げ、捜索範囲を確認している。

捜索隊を編成して森へ向かうつもりなのだろう。

町の近くなら、まだ穏やかなモンスターしかいない。

けれど、その先――。

『深い森』には、好戦的なモンスターが数多く生息している。

子供が一人で生き残れるような場所じゃない。

もし、本当にそこまで入り込んでしまっていたら――。


『サジタリウスの深い森』。

そこには二体の強力なモンスターがいる。

ゲームサービス開始当初、多くのプレイヤーへトラウマを植え付けた悪魔型モンスター『辻斬り』。

そして、チェシャ猫のような見た目をした動物型ネームドモンスター『深い森の主』。

どちらも、一次職が何人集まっても勝てるような相手じゃない。

「……早く見つけてあげないと。」

冷静な判断もないまま、私は深い森へ向かって駆け出していた。

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