危うい冒険心⑥
レーヴァテインの性能検証は、もう十分。
これ以上振り回していたら感覚がおかしくなりそうだ。
「危ないからしまっておこう。」
頭の中で《Storage》と念じる。
すると目の前の空間が歪み、見慣れたワームホールが現れた。
私はそこへ、見えないレーヴァテインをそっとしまう。
手から柄の感触が消えた瞬間、それまで全身に満ちていた力も一緒に抜けていった。
「ふぅ……。」
やっぱり、過ぎた力は身を滅ぼす。
何事もほどほどが良いのだ。
目の前に開いている《Storage》については、すでに何度か検証している。
正確な許容量は分からないけど、ゲームでは千種類まで格納できたから、この世界でも同じくらい入るのかもしれない。
保存機能についても確認済みだ。
以前、試しに雑草を入れて一か月後に取り出してみたところ、普通に枯れていた。
少なくとも《Storage》の中で時間が止まっているわけではない。
温度を一定に保つ機能もないらしく、真夏に水を入れて数時間放置した時には、取り出した水がすっかり温くなっていた。
「ここだけはゲームみたいに便利じゃなかったんだよね。」
もし時間が止まっているなら、生鮮食品を大量に保存して飢饉に備えるような使い方もできた。
だけど中でも普通に時間が流れているなら、残念ながらそうはいかない。
もっとも、それでも誰にも触れられない自分専用の倉庫があるだけで十分すぎるほど便利なんだけど。
これまで収納した物については、《Storage》の中を覗くことで確認できる。
今入っているのは、先ほどしまったレーヴァテインと小さなメモ帳。
メモ帳にはGMコマンドやアイテム名、マップ名などがびっしりと書き込まれている。
前世でも数字や文字列を覚えるのは得意な方だった。
だけど記憶を取り戻してから早いものでもう五年。
今の生活ではほとんど使うことのない知識も多いため、前世の記憶は少しずつ曖昧になってきている。
今はまだ覚えていることでも、この先ずっと忘れない保証なんてない。
だから大事なことを忘れないよう、こうしてメモ帳へ残しているというわけだ。
ちなみにメモ帳に使っている紙は平民が普段使うような安物ではない。
《CreateItem》で生み出した特上品。
貴族でも使うような上質な紙なので、保存性もきっと良いはずだ。
「こういう使い方なら、きっと大丈夫だよね。」
世界の経済を壊すほど大量に作ったわけでもない。
売ってお金にするつもりもない。
自分だけで使う小さなメモ帳一冊くらいなら、ガイア様も許してくれると思いたい。
それに、この五年間で調べた限り、この世界の言語の中に英語は見つけられなかった。
GMコマンドやアイテム名、マップ名は英語で書いてある。
もし何かの間違いで誰かに見られたとしても、その部分を読める人はいなさそうなので少し安心している。
「まあ、誰にも見せるつもりはないけどね。」
私はもう一度《Storage》と念じる。
目の前に開いていたワームホールが静かに閉じ、跡形もなく消えた。
「今日は疲れたし、そろそろ帰ろうかな。」
両腕を上へ伸ばして、大きく伸びをする。
重い石を何度も持ち上げたせいで、腕はもうぱんぱんだ。
「明日は筋肉痛になるかも。」
もし筋肉痛になっても、きっとすぐ治るけどね。
若いって素晴らしい。
そう思いながら、私は疲れた腕をぶらぶらと振った。




