それぞれの思惑②
歩き始めると、街の人たちからちらちらと視線を向けられていることに気がつく。
原因は間違いなくクレスだ。
この辺りではまず見かけないグランドナイトの正装。
何の職業か分からなくても、高位の騎士であることくらいは見た目で分かる。
特に女性たちから向けられる視線には、明らかに熱いものを感じた。
まあ、この見た目だもんね。
金髪ので背も高くて体も鍛えられているイケメン。
その上、現在王国に一人しかいないグランドナイト。
そりゃ目立つ。
そして、そんなクレスと一緒に歩いているのが私なのも更に視線が集まっている。
どうか私のことはお構いなく。
私はたまたま縁あって故郷を案内しているだけです。
そんな視線に耐えながら歩き、ようやく広場へ辿り着いた。
目的のベンチを見ると誰も座っていない。良かった。
このベンチは子供の頃から頻繁に使っているけど、私以外の誰かが座っているところをほとんど見たことがない。
今日も貸し切りで使わせてもらいます。
「ちょっとここで待っててください。」
「ああ、分かった。」
クレスをベンチへ残し、私は近くの宿へ向かった。
中へ入ってお願いすると、温かいお茶を二つ用意してもらえた。
それを両手に持ち、こぼさないよう慎重に広場へ戻る。
「はい、熱くなってるから気を付けてください。」
「わざわざすまない。いただきます。」
クレスはお茶を受け取ると、ゆっくりと口を付けた。
そこで私は今さらながら不安になる。
そういえば貴族に庶民のお茶なんか出して大丈夫だっただろうか。
侯爵家の嫡男だよね。
普段もっと良いものを飲んでいるんじゃないの?
「温かくて美味いな。」
「お口に合いました?」
「あぁ、ちょうど喉が渇いていたので助かった。」
良かった。特に気にしている様子はない。
私も隣へ腰掛け、自分のお茶に口を付ける。
温かい。
冷えた季節の空気に晒されていた体へ、じんわりと熱が広がっていく。
クレスが話し始めるまでは、こちらから急かさない方が良いだろう。
わざわざ王国騎士団の任務で来たと言っていたんだから、それなりに大切な話のはずだ。
二人とも何も話さないまま、ゆっくりとお茶を飲む。
さっきまでの気まずさとは少し違う静かな時間。
お互いに半分ほど飲んだところで、クレスがカップを口元から離した。
そして、静かに口を開く。
「魔王のことで進捗があった。」
「え?」
思わずクレスの顔を見る。
予想していなかった言葉だった。
クレスの口から聞けたのは、私がずっと気に掛けていた魔王についての話だった。




