アイラ先生のムキムキパワーレベリング⑭
今はドライアドの好き嫌いのことはいいか。
私も目の前のモンスターに集中しよう。
多分、プロミネンスは私が『ダイヤモンドダスト』を撃てば一発で倒せる。
だけど一体倒すためだけに大魔法を使うのは勿体ない。
『トリプルマジック』を使って全弾命中させても倒せると思うけど、今回は私一人で戦うことが目的じゃないからね。
シルフとドライアドに戦闘経験を積ませるために、わざわざここまで来たのだ。
「シルフ、私たちを一度下ろしてくれる?」
「ええ、分かったわ。」
シルフの魔法でゆっくりと高度を下げ、私とドライアドの足が地面へ着く。
飛行状態のまま高速戦闘をすることもできるけど、それでは今回のレベリングの趣旨から外れてしまう。
空中から一方的に攻撃する練習ではなく、ちゃんとモンスターと向き合って戦う経験を積むことが目的だ。
私たちとプロミネンスとの距離は百メートル弱。
幸いにも、向こうはまだこちらの存在に気付いていない。
先手を取れる有利な状況だ。
「シルフ、ドライアド。行けるよね?」
「もちろんよ。」
「こてんぱんにする。」
二人ともやる気満点。
いつでも行けそうだ。
それなら、予定通り三人で一気に仕掛けよう。
「『トリプルマジック』。」
これで私の準備は完了。
「……準備いいよ。ドライアド、いつでもやっちゃって。」
「むんっ!」
ドライアドが気合いを入れ、魔力を集中させ始めた。
今回のファーストペンギンはドライアドだ。
最初に攻撃を仕掛けてもらい、そこへ私とシルフが合わせる。
相手がこちらに気付いていない今なら、十分な威力の魔法を準備する時間もある。
そう考えていたんだけど、
「あいつ、魔力に反応してこちらに気付いたわ!」
「えっ?」
シルフの声とほぼ同時だった。
遠くで浮かんでいたプロミネンスが一際大きな光を放つ。
それまで横に八の字を描いていた動きが止まり、次の瞬間には凄まじい速度でこちらへ向かってきた。
その速度は速く、百メートル近くあった距離がみるみる縮まっていく。
「ヒヒ、人間イタ。ドウシテキタノ?」
「喋った!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
ゲームでは一言も喋らなかったモンスターが、いきなりこちらへ話しかけてきたのだ。
驚くなという方が無理がある。
「当たり前でしょ、精霊なんだから!」
「あ、そっか。それもそうだよね。」
シルフに言われて納得する。
ゲームでは喋らないモンスターでも、ここはゲームそのものではない。
プロミネンスも大きな分類では精霊なんだから、現実の存在となった今なら言葉を話せても不思議ではなかった。
意思の疎通が可能だからといって、味方というわけではないけど。
でも、もしかしたら戦わなくても話し合いができたり、
「爆発スル? シチャウ? サセチャエ!」
うーん、やっぱり無理そうですね。
しっかり設定通りの邪悪ないたずら妖精らしい。
「お断りだよっ! ドライアドやっちゃって!」
「ふんがー。『アースプレッシャー』。」
ドライアドが両手へ力を込める。
直後、プロミネンスの周囲で火山岩が大きく隆起した。
左右からせり上がった岩が巨大な手の形を作り、そのまま勢いよく閉じていく。
まるでハエ叩きだ。
「フギャ!」
巨大な岩の手に挟まれたプロミネンスが、なんとも間抜けな声を上げる。
そのまま完全に押し潰され、赤い光も見えなくなった。
「えっ、倒しちゃった?」
まさか一撃で終わった?
想定していたよりもドライアドの攻撃が強かったのかと心配になる。
でも、どうやら杞憂だったらしい。
巨大な手の甲が内側から赤く光り始めた。
次の瞬間、岩が熱で赤く染まり、一部分に穴が空く。
「ヒヒィ!」
そこからプロミネンスが勢いよく飛び出してきた。
「うわ、頑丈。」
さすがは下層に出現するモンスター。
あれだけの攻撃をまともに受けても、まだ倒れない。
ただし無傷というわけでもなさそうだ。
先ほどまでせわしなく飛び回っていた動きは明らかに鈍くなり、体を包んでいた炎も少し弱くなっている。
さっきの攻撃はかなり効いている。
これなら予定通り、残った体力を一気に削り切ればいい。
「痛イ許サナイ、自爆縛莫バクバク。」
プロミネンスの光が激しく明滅する。
いや、だから自爆はさせないって。
「それはさっき断ったでしょ。『アイスジャベリン』。」
私の前に氷の槍が三つ形成され、そのまま『プロミネンス』目掛けて一直線に飛んでいった。
「ギィ!? 氷ノ魔法危ナイ!」
三本の『アイスジャベリン』を見たプロミネンスが、慌てたように急旋回する。
しかし先ほどまでと比べれば精彩を欠いた動きだ。
一本目は避けられてしまったものの、二本目は真横を通過。そして、
「ヒギィァァァァ!!」
プロミネンスは絶叫を上げた。
三本目がプロミネンスの中心に刺さったからだ。
赤く燃える球体を氷の槍が貫き、そのまま後方へ突き抜けていく。
火の塊みたいな体は弱点である水属性の攻撃を受けて大ダメージを負っていた。
さっきまで激しく明滅していた光の勢いが目に見えて弱くなり、薄い光を点滅させながらふらふらとその場を旋回している。
もう最初の勢いはどこにもない。
『アースプレッシャー』と『アイスジャベリン』。
二つの攻撃でかなり体力を削れたみたいだ。
これなら弱めの風属性魔法でも十分に倒せる。
「あたし参上ーーーーーっ! トドメを上げるわ。」
物凄く楽しそうなシルフが待ってましたと言わんばかりに前へ身を乗り出した。




