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四柱の精霊王⑨

そんなことを考えていると、ウンディーネは淡々と答えた。

「実際にサモナーと契約した精霊の統計を取ると二割程度という結果が出ています。」

「えっ、何でそんなに低いの。」

思わず聞き返してしまった。

五人に一人しか心を通わせられないなんて、想像していたより遥かに低い。


「冒険で人間が命を落とす確率が五割。」

「なるほど。」

言われてみれば納得だ。

サモナーともなれば魔王討伐にも召集がかかるほど貴重な職業。

有事の際には駆り出されるし、多くの場面での活躍が期待されるだろう。

より強い敵との戦闘。より難しいダンジョンの調査や攻略。

それだけ危険な場所へ赴く機会が増えるなら、命を落とす人間がたくさんいても不思議ではない。


だけど、それだけなら残り三割の数字が合わない。

そう考えたところで、ウンディーネが続きを口にした。

「そして残念ながら、精霊を都合の良いペットや奴隷と考えるような人間が三割程度います。」

「…………。」

突然飛び出してきた言葉に絶句した。


もちろん、ペットや奴隷にも感情はあって精霊より下の存在だという意味ではない。

だけど自身の庇護下に置き、面倒を見るという側面は確かにある。

それに対して精霊はパートナーだ。

お互いを信頼して、共に尊重し合う関係。


少なくとも私はそう考えているし、そうでなければ危険な戦いを一緒に生き残ることなんてできない。

「だとしたら冒険で命を落としている五割の中にも……。」

「ええ、私たちと心を通わすことに失敗して命を落とした者もいるでしょう。」

衝撃的な情報に頭が痛くなってきた。


精霊は言うことを聞かせて、指示通り戦わせる存在じゃない。

ゲーム時代だって、召喚した精霊は自動でモンスターと戦っていた。

この世界で本当に意思を持って生きているなら、人間の指示通りに何でも戦うなんてことはしないだろう。

そこを履き違えて、無理やり言うことを聞かせようとした。

その結果、精霊との信頼関係が壊れてしまった。

確かに有り得そうな話だ。


「何か人間がごめんなさい。」

思わず頭を下げてしまった。

勝手に人間代表になるのは傲慢な考えだけど、どうしても私が謝りたかったからだ。

同じ人間に怒られたら、その時は人間にも謝るから今回は許してほしい。


「頭を上げてください。アイラに謝ってほしいわけじゃないです。」

ウンディーネがオロオロしながら、頭を下げた私の体を起こそうとする。

「でもアイラはそんなことしないんじゃないかなって、シルフの話を聞いてて思ったんだよね。」

サラマンダーもウンディーネに続いて声をかけてくれた。


「アイラはそんなことしないよ~。」

ドライアドも少し興奮気味に私の存在を肯定してくれる。

そこまで言ってもらえると、嬉しいけどちょっと恥ずかしい。

「アイラは私が本当に嫌がることは一回もしたことないわ!」


シルフが胸を張って断言した。

「それはもう何百回も聞いたよ~。」

「何百回も!?」

私の知らないところで何百回も話されていたなんて恥ずかしいんですが。

一体どれだけ私の話をしていたの。


「シルフったら凄かったんですよ。人間不信な子に『アイラの悪口言ったら許さないわよ!』って喧嘩したり。」

「こらっ! アイラに言うのはダメでしょ。」

シルフは慌ててサラマンダーの口を塞ぐ。

だけど、しっかり聞いてしまった後ではもう遅い。


「……シルフ、喧嘩したの?」

「うぐっ。」

喧嘩したことは私に知られたくなかったらしい。

シルフが明らかにばつの悪そうな顔をして、私から視線を逸らした。


「私のことで精霊と喧嘩しちゃダメだよ。」

「だってアイラは素敵な子だもん! 悪口なんて許さないんだから!」

顔を真っ赤にしながら叫ぶシルフ。

そんなことを言われたら、怒るに怒れない。

それどころか可愛すぎて、キュンとしてしまった。


「シルフは毎日アイラと一緒にいてずるかった。」

今度はドライアドが少し拗ねたように口を尖らせる。

「ごめんね、ドライアド。ハイサモナーになったからこれからはずっと一緒だよ。」

「うん、許してあげる。」


桃色のほっぺで、ほにゃっと笑うドライアドも可愛い。

さっきからこの子たち、私の心臓にダメージを与えてきてません?

「いいなぁ、私たちも早くアイラと冒険したいよ。」

サラマンダーが羨ましそうに私たちを見る。


「ずっと待っていたドライアドや、最初に契約したシルフに悪いですから、アイラがエレメンタルマスターになるまで。百年くらいは待てますよ。」

「百年は気が長すぎるよ。そうだなぁ、一年以内には迎えに来るね。」

精霊にとって百年なんて、本当にそれくらいの感覚なのかもしれない。

だけど私としては、そんなに待たせるつもりはない。


「あら、エレメンタルマスターになる方法をご存じなんですか?」

「知ってるよ。」

「何でそんなことまで知ってるの!?」

サラマンダーが驚いたように声を上げた。

当然の疑問だよね。


普通ならハイサモナーになったばかりの私が、その先の転職方法まで知っているはずがない。

「えへへ、秘密。話すと長くなるから、また今度会った時に説明してあげる。」

その理由は、シルフにはもう話している前世の話の一部だ。

今ここで最初から説明を始めたら、本当に長い話になってしまう。


それに今日はもう遅い。

だけど家族になった皆には、いつかちゃんと話すって約束するから。

「だから、少しだけ待ってて。」

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