四柱の精霊王⑦
「順番に聞いていきたいんだけど、良いかな。」
「うん、どうぞ。」
契約も無事に終わったことだし、せっかく四属性の次代精霊王が揃っているのだ。
ゲームでは知ることができなかった精霊たちのことを、この機会に色々と聞いてみたい。
まず私はサラマンダーへ視線を向けた。
「じゃあまずはサラマンダーからね。その尻尾にある金の線が精霊王の証なの?」
「良いところに気付いたね。そう、この尻尾に入ってる金色の線が火の精霊王の証。世界樹の根に住む巨竜の炎から生まれたのが私。」
サラマンダーが長い尻尾を私にも見えるように動かす。
そこには確かに、二本の金色の線が綺麗に走っていた。
やっぱり普通のサラマンダーにはない特徴だったんだ。
「へー、そうなんだ。シルフは世界樹の天辺にいる大怪鳥の羽から生まれたんだよね?」
「そうよ。巨竜の炎も大怪鳥の羽も、それだけだと意味を持たないんだけど、世界樹と結び付いたときにあたしたちみたいな強力な精霊が生まれてくるってわけ。」
シルフが自分の羽を軽く動かしながら教えてくれる。
世界樹そのものだけじゃなく、そこに生きている生物も精霊の誕生に関係してるんだ。
すると今度はウンディーネが口を開いた。
「私は世界樹の根本にある原初の泉から生まれました。なのでドライアドと近いですね。」
「なるほど、シルフとサラマンダーみたいに世界樹に住んでる生き物由来か、ドライアドとウンディーネみたいに世界樹もしくは原初の泉みたいな自然由来があるんだね。」
何となくだけど分類が見えてきた。
こういうゲームでは知ることができなかった設定を直接聞けるのは、元運営として非常に興味深い。
私が知らなかっただけで、この世界にはゲームで描かれなかった設定がいくらでも存在しているのだろう。
ただ、少し気になることもある。
「そのせいで対立が起こったりはしないの?」
「別にどっちが偉いとかないからね。精霊同士でいがみ合うことはもちろんあるけど、私たちはそんな理由で喧嘩したりしないよ。」
「それなら良かった。」
生まれ方の違いによる上下関係や派閥があるわけではないらしい。
人間だって出身や立場の違いで揉めることがあるから少し心配したけど、少なくとも精霊たちにとって生まれ方は優劣を決めるものではないようだ。
こうして話を聞いてみると、やっぱり私には分からないことだらけだ。
精霊の常識なんて知らないから、気付かないうちに失礼なことを言ってしまう可能性もある。
これから長く一緒にいるなら、知らなかったでは済ませたくない。
「もし私が何か失礼なことを言ったら、ちゃんと教えてね。」
「うん、分かった。でも悪意が無いなら怒ったりしないよ。」
サラマンダーは特に気にした様子もなく答えてくれた。
だからといって、何をしても良いという話ではない。
私も精霊だからと、人間の常識に沿わないことを全て受け入れるつもりはない。
でも大切な家族になった以上、互いに尊重できる関係でいたい。
「精霊が人間を尊重してくれる限り、私も精霊を尊重するよ。」
「うん。」
サラマンダーが嬉しそうに頷いた。
その返事を聞いて安心していると、何かを思い出したように口を開く。
「あー……パパにはもう会った、よね?」
「パパ? 巨竜のこと?」
今までの話の流れから、世界樹の根に住んでいるという巨竜のことかと思った。
けれどサラマンダーは首を横へ振る。
「ううん、違う。今の火の精霊王のこと。」
「パパなの?」
少し驚いた。
今の火の精霊王と、この子にそんな関係があったとは知らなかった。
確かに同じサラマンダーではあるけど、親子だなんて話は聞いていない。
「ううん、先に生まれた精霊王で昔から私のことを何かと気にかけてくれたんだ。それでパパって呼んでるの。」
「そうなんだね。うん、会ったよ。それがどうしたの?」
私が答えると、サラマンダーは少しだけ言いにくそうな顔をした。
「あのさ、人間のことあまり良くない目で見てたでしょ? それに多分、アイラへの風当たりも強かったんじゃないかな。」
「そんなことは無いよ。」
反射的にそう答えた。
確かに今の火の精霊王は、人間全体にあまり良い印象を持っていないようだった。
私自身が敵視されていたのも事実だ。
でもサラマンダーがパパと慕っている精霊のことを、本人の前で悪く言いたくはない。
「ううん、気を遣わなくて大丈夫。アイラに風当たりが強いのは私のせいだと思うから。」
「どういうこと?」
私のせいと話す言葉の意味が分からず聞き返すと、サラマンダーは少し困ったように笑った。
「私がアイラと契約したがってたから、焼きもちを焼いたみたい。」
「そんな理由だったんだ……。」
思わず気の抜けた声が出た。
まさか私への態度の悪さが、そんな理由だったなんて。
もっと深刻な話なのかと思っていただけに、大したことない理由で驚いた。
人間が嫌いなのは分かるけど、私との関係だけなら修復可能かもしれない。




