四柱の精霊王⑥
「あはっ、こうして並ぶとアイラが末っ子みたいね。」
サラマンダーが楽しそうに笑っている。
「さっきまでは私とほとんど差が無かったのにぃ~!」
契約する前まではサラマンダーとウンディーネは私と同じくらいの大きさだった。
それなのに契約した途端、二人とも急成長。
シルフとドライアドも転職後に大きくなったので、こうして五人で並ぶと私だけ明らかに小さい。
「大丈夫、アイラは小さくて可愛いよ。」
「全然大丈夫じゃない~。」
ドライアドが慰めてくれるけど、そこじゃない。
可愛いと言ってもらえるのは嬉しい。
でも今問題にしているのは身長なのだ。
「アイラは小さいことを気にしていたんですか?」
「自分の個性なのにねー。」
私の気も知らないで好き放題言ってくれる。
貴女たちはこんなに美人になって満足してるかもしれないけど、私はほとんど成長してないんだから。
私だって将来はママみたいな素敵な女性になりたいの。
小さくて可愛いだけで終わるつもりはありません。
「大きくなったら、なんだか魔力が欲しくなってきたわ。」
サラマンダーが自分の体を見ながら呟いた。
「アイラの魔力って甘いんでしょ? 私、貰ってみたい。」
「私にもちょうだい~。」
「それでは失礼しますね。」
「えっ、ちょっと――ひぁぁ!?」
何の相談もなく四人が一斉に寄ってきた。
そのまま遠慮なく、思い思いの場所から私の魔力を吸い始める。
指先、ほっぺ、背中、首筋。
四人とも好き勝手に私の魔力を堪能している。
一応、私の魔力の総量は気にしてくれているみたいだけど、このままだと魔力が枯渇しちゃうって。
「あ、こらドライアド。貴女ちょっと吸いすぎよ。」
「んー♪」
「本当に甘いんだ。不思議~。」
「こ~ら。そんなに吸ったらアイラが気絶しちゃうでしょ。」
皆して本当に失礼しすぎだよ。
私の大切な魔力をスイーツ代わりに堪能するのはやめて。
そもそもシルフ、貴女は注意する側みたいなこと言ってるけど、しっかり自分も吸ってるよね?
「やっぱりこれよね。」
「美味しかった。」
「ふぅ、ごちそうさまでした。」
「結構なお手前でした。」
「お粗末様でした……。」
数分後。
私はベッドの上でうつ伏せになりながらぐったりしていた。
はらぺこ精霊たちに魔力を吸われすぎたせいで、ちょっと気持ち悪い。
体から力も抜けて、今は起き上がる気にもなれなかった。
ここで《Storage》からギャラルホルンを出して回復しようかとも思ったけど、そこは自重した。
別に命の危険があるわけじゃないので明日にもなれば回復するだろう。
「ごめんアイラ。初めてでついやり過ぎてしまったみたい。」
「私も制御が効かず申し訳ございません。」
サラマンダーとウンディーネが心配そうに私を覗き込んでくる。
今更になって心配するなら、もう少し加減してほしかった。
でも二人にとっては初めての魔力供給だ。
加減できずに多少やり過ぎてしまうのも仕方ないのかな。
ベテランのシルフには物申したい気持ちはあるけど。
「ドライアドは吸いすぎ。次やったら罰則を与えるからね。」
「えー。」
その中でもドライアドが一番凄かった。
まるで一人で私の魔力を吸い尽くさんとばかりの勢いで吸ってきたのだ。
しかも、それを見た他の三人が止めてくれるのかと思ったら違った。
このままではドライアドに全部取られると思ったのか、我も負けじと全員の吸魔速度が上昇。
結果、私は魔力欠乏によってベッドに倒れているというわけだ。
「まったくもう。」
ごろんと寝返りを打って仰向けになる。
すると四人が一斉に私の顔を覗き込んできた。
「……ちょっと近すぎ。」
絶世の美女たちに囲まれて、顔を覗き込むほど心配してもらえる構図。
……存外悪くない。
さっきまでは後でちゃんと叱ってやろうと思っていたけど、皆の申し訳なさそうな顔を見ていたらどうでも良くなってきた。
「ぷっ、あはは! そんな顔するならやらなきゃ良いのに。」
「だぁって~。」
「このままじゃドライアドに全部取られちゃうと思ったら、つい。」
「反省しています……。」
「やりすぎたわ、ごめんなさい。」
どうやら本当に反省したらしい。
四人ともあれだけ楽しそうにしていたのに、今は揃ってしょんぼりしている。
これ以上追及するのは可哀想なので、ここは大人の私が許してあげるべきだ。
「大丈夫、怒ってないよ。でももうやめてね。」
四人へしっかり言い聞かせる。
ダメなことをダメと教えてあげるのも、大人の役割なのだ。
それにしても、これで契約した精霊王が四人に増えた。
四属性の精霊王コンプリートで何らかの実績が解除されててもおかしくないね。
これからもクレスたちのように精霊王について知っている人間が見たら分かってしまうだろうけど、これまでだって二人も契約していたんだ。
それが四人に増えたところで、今さらだよね。




