四柱の精霊王⑤
「良かったね、サラマンダーとウンディーネ。」
ドライアドが嬉しそうに二人へ笑いかける。
「これであたしたちも家族ね!」
シルフも満足そうに頷いた。
家族。うん、そう家族だ。
ここでその言葉が出てくるなんてこの間のことが本当に嬉しかったんだね。
私もシルフとドライアドのことは、もう契約している精霊というだけじゃなくて本当の家族だと思っている。
そこにサラマンダーとウンディーネも加わった。
今日は来年生まれてくる兄弟含め、私たちが六人兄弟になった記念日になるだろう。
「これからよろしくね!」
そう言って、私は二人へ向けて両手を伸ばした。
そのまま精霊契約の魔法を唱える。
勿論、契約する相手は目の前にいるサラマンダーとウンディーネだ。
魔力を流し込むと、私の両手から二つの光が生まれた。
サラマンダーへ伸びる赤い契約の光。
ウンディーネへ伸びる青い契約の光。
二色の光がそれぞれ私たちの間を繋いでいく。
その幻想的な光景に思わず見惚れそうになったけど、今は契約に集中しないと。
「サラマンダー、ウンディーネ、私の手を握って。」
「うん。」
「はい。」
右手をサラマンダーが握り、左手をウンディーネが握る。
温かいサラマンダーの手。
冷たいウンディーネの手。
同時に握っていると、その温度差がはっきり分かった。
私がギュッと握ると、二人も応えるように少しだけ手へ力を込めてくる。
その瞬間、二人の情報が契約という形になって私の中へ流れ込んできた。
「……っ。」
あれ、これどういうこと?
シルフやドライアドと契約した時より、かなりコントロールが難しい。
二人との契約そのものに問題があるわけじゃない。
でも新しく二つの力を受け入れようとすると、既に私の中にあるシルフとドライアドの力まで影響を受けているような感覚がある。
今の私の中に精霊四体分の力を入れ込むのは、思っていたより大変みたい。
「アイラ、大丈夫?」
苦戦しているとドライアドが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
シルフもそれに続き、サラマンダーとウンディーネも不安そうにこちらを見つめている。
でも大丈夫だから任せて。
ここまで来て契約できませんでしたなんて格好悪いところは見せられない。
四つの力を混ぜ合わせて一つにするイメージ。
イメージ……。
頭の中へ、以前作った銀色の精霊石を思い浮かべる。
銀色に輝く一つの石。
その中で四つの配色がそれぞれの場所に分かれながら、互いを邪魔することなく共存している姿を想像する。
一つに混ざり合うわけじゃない。
それぞれが別々の力として存在したまま、一つの中に収まっている姿。
「……うん。」
正確なイメージを形作ると少しずつ力の流れが落ち着いてきた。
さっきまで不安定だった四つの力が、それぞれの居場所を見つけていく。
ようやく安定してきた。これなら契約できる。
「行くよ、皆!」
最後に一気に魔力を流し込んだ。
パァッと赤、青、紫、緑の四つの光が浮かび上がる。
四色は互いに交わることなく、それでも虹のように一つのラインとなって私の周囲を流れていく。
綺麗な光が私の胸元へ集まり、そのまま体の中へ吸い込まれて契約が完了した。
「ふぅ、これでサラマンダーとウンディーネとも契約できたよ。」
大きく息を吐く。
思ったより苦戦したけど、ちゃんと二人との繋がりを感じられる。
契約は成功だ。
「やったぁ! アイラ頑張ったね~。」
ドライアドが嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。
「一時はどうなることかと思ったけど、上手くいったみたいね。」
シルフも安心したように息を吐いた。
「これからよろしくね、アイラ!」
「どうぞよろしくお願いします。」
「うん。二人ともよろしくね。」
サラマンダーとウンディーネが左右から私を抱き締めてくる。
「おぉ……。」
右から温かい。
左から冷たい。
温かいのと冷たいのが同時にやって来る不思議な感覚。
何だろう、これ。
まるで冬にこたつへ入りながら食べるアイスみたい。
温かいのに冷たい。
冷たいのに心地良い。
はっ、いけない。幸せを享受しすぎて忘れていた。
契約に問題が無いかを、確認――。
「……ん?」
さっそく異変あり。
私は二人に抱き締められたまま、ゆっくりと顔を上げた。
「ところで何か、さっきと比べてサイズ感がおかしくない?」
さっきまでの二人は、私と同じくらいの大きさだったはずだ。
それなのに今は私の顔の高さに二人の胸元があるような……?
いや気のせいじゃなく絶対に大きくなってる!
身長もそうだけど、体つきまで明らかに成長している。
「アイラと契約した影響で肉体が成長したみたいですね。」
ウンディーネが自分の体を確認しながら答える。
「ええ、そのようだわ。アイラのお陰ね。」
サラマンダーも嬉しそうだ。
「…………。」
せっかく私と同じくらいの子が家族になったと思ったのに。
どうして……どうしてこんな仕打ちをしたの、神様。
そう思った瞬間、私の頭の中に緑色の髪をした綺麗な女神様の顔が思い浮かんだ。




