四柱の精霊王③
「あの~、終わりましたか?」
「えっ?」
突然聞こえてきた知らない声に振り返る。
いつの間にか、部屋の入口に二人の女性が立っていた。
一人は美しい青色の髪を真っ直ぐに伸ばした女性。
水着のような衣装を纏い、人間なら脚があるはずの場所には魚のような尾が伸びている。
その姿には物凄く見覚えがあった。
「あの、どちら様でしょうか?」
思わず聞いてしまった。
いや見た目からウンディーネなのは分かってるんだけど。
私の知ってるウンディーネとはちょっと違うような。
それに隣にはもう一人いる。
「まさか人間と精霊で不埒な行為を……?」
実際に毛先が燃えているような赤い髪。
南国を思わせる衣装に、腰から伸びる長い蜥蜴の尻尾。
こちらも見た目だけなら何の精霊なのか一目瞭然だった。
「ち、違います!」
思わず勢いよく否定する。
初対面の人間に何てことを言うんですか!
確かにベッドの上で二人に組み敷かれていたけど、あれは明らかに私が苛められていただけだったでしょ!
さっきの火の精霊王もそうだったし、もしかしてサラマンダーって思い込みが激しい種族なのだろうか。
初対面なのに酷い勘違いをされている気がする。
……あれ?
そういえば、この二人は何をしにここへ来たんだろう。
「そ、それより何か御用でしょうか。」
まずは要件を聞いてみよう。
「はじめまして、アイラ。私はサラマンダーよ。」
「はじめまして、アイラ。私はウンディーネ。」
「あ、初めまして。アイラです。」
思わず普通に挨拶を返してしまった。
だけど二人とも、どうして私の名前を知ってるの?
「ようやく挨拶できたわね。」
シルフが二人へ声を掛ける。
「二人とも遅いよ~。」
ドライアドも普通に会話へ加わった。
「ごめんなさい。」
青髪のウンディーネが素直に頭を下げる。
「仕方ないじゃない。アイラが来てるのを知らなかったんだから。」
サラマンダーは少し不満そうだ。
どうやらこの四人は元々知り合いらしい。
シルフもドライアドも、二人が突然部屋へ現れたことを全く不思議がっていない。
「四人はどういう関係なの?」
気になるので思い切って聞いてみた。
「関係というか、これから関係になっていくというか。」
「……?」
シルフさん。意味深なことを言ってるけど、私には全く伝わってません。
「次代の火の精霊王と、水の精霊王だよ。」
「へぇ~!」
ドライアドは有益な情報を落としてくれた。
なるほど、さっきティターニアと一緒にいた火と水の精霊王、その後継者ってわけね。
ということはシルフにドライアド。
サラマンダーとウンディーネ。
ここに次代の精霊王が全員揃い踏みってことなんだ。
……それって、とっても凄いことなんだよね?
「女王様からお話を聞いていたんじゃないんですか?」
ウンディーネが不思議そうに首を傾げる。
「精霊女王から?」
そんな話を聞いた記憶なんてないけど何のことだろう。
「ほら、後で会いたがってる者がいるって聞いてたでしょ。」
シルフに言われて記憶を辿る。
「……あっ。」
そういうことか!
ティターニアが言ってた、後で会いたがっている者たち。
あれがこのサラマンダーとウンディーネだったんだ。
いやいやいや。分かるわけないよ!
精霊だとも聞いてないし、ましてや次代の精霊王が二人も来るなんて一言も聞いてない。
これは私が悪いんじゃありません。
伝えた側に問題があったと証言いたします。
「確かに聞いてたけど、次代の精霊王が来るなんて一言も聞いてないよ。」
「そうだったっけ?」
ドライアドは頬に人差し指を当てて考え始めた。
大人びた姿でそんな仕草をすると、また妙に可愛い。
「そうです。」
だけど、ここで可愛さに負けてはいけない。
この話には私の名誉がかかっている。




