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四柱の精霊王①

これだけの人数を一瞬で集団転送するなんて。

行きはガイアのことで頭がいっぱいで気付かなかったけど、これだけの人数を一瞬で全員移動させるなんて凄いスキルだ。

『ポータル』でさえ、一度出現させた転移門の中へ入らなければ移動できない。


それなのにティターニアは指を鳴らしただけで私だけじゃなく、この場にいた全員を問答無用で転移させてしまった。

しかも移動先は女神様の領域。

ゲーム時代にもこんなスキルは見た覚えがない。

もしかするとスキルというより、神の御業に近い何かなのかもしれない。


「凄い経験だったね。」

「まさかここで女神様にお会いできるなんて思わなかったわ。」

「綺麗で優しかったね~。」

ドライアドが嬉しそうに笑っている。


優しいガイアというのは、前世の私からすると若干の解釈違いを起こしてるけど。

でも実際、私の力へのお咎めは一切なし。

それどころか有事の際には力を貸してくれそうな話までしてくれた。

そう考えると、優しいと言っても過言じゃないのかもしれない。


「女神様はお元気そうだったな。」

ティターニアが誰に言うでもなく呟いた。

「お会いできて良かったですね。」

姉ドライアドが少しからかうような笑みを浮かべる。


ティターニアからしたら三万年ぶりに会えた、本当の親みたいなものだもんね。

ガイアがティターニアを生み出したんだから、嬉しいのは当然なんじゃないかな。

私も何となくティターニアへ視線を向ける。

その視線に気付いたのか、ティターニアはこほんと一つ咳払いをした。


「アイラよ。もしお前がハイサモナーとして認められたら会いたいと申している者たちがいるのだが、会ってくれるか?」

「それは別に構いませんけど……。」

突然の申し出に驚いてしまう。

私に会いたい人なんて誰だろう?

首を傾げながら記憶を探ってみるけど、思い当たる人物がいない。


そもそもアールヴヘイムには宿屋すらない。

以前来た時も、ティターニアや姉ドライアドたち以外とはほとんど交流していないんだけど。

一体誰が私に会いたがるというのか。


「今日中に呼んでおくので、今日は前回泊まった部屋に泊まっていくが良い。」

「本当ですか? ありがとうございます。」

またあの部屋に泊まれるのは嬉しい。

前回泊めてもらった部屋のベッドには、贅沢なくらいシルクが敷かれていた。

あの寝心地は今でも覚えている。


今日は色々ありすぎて疲れたし、あのベッドで眠れるならありがたい。

ティターニアは警備兵の一人を呼び寄せると、何やら指示を出した。

指示を受けた警備兵は一礼して、急いで玉座の間から出ていく。

あの人が私に会いたがってる人を呼びに行ったのかな。


「ではアイラ。」

「はい。」

ティターニアが改めて私へ向き直る。

「我はお前を精霊の盟友と認める。困ったことがあれば、私のところを訪れるが良い。」

「ありがとうございます。」


これはかなりありがたい言葉だ。

私は腰を折って大きくお辞儀をする。

精霊女王から直々に盟友として認めてもらえた。

今後も何かあった時に相談できるのなら、これ以上頼もしい相手もなかなかいない。


さっきガイアにも言われたばかりだ。

何でも一人で解決しようとしない。

頼れる相手がいるなら、ちゃんと頼ればいい。

だからこそ今後の関係に差し障りがないよう、礼儀はしっかりしておこう。


「それでは部屋までは私が案内しましょう。」

姉ドライアドが一歩前へ出る。

「あぁ、頼んだぞ、ドライアド。」

どうやらこれで今回の謁見は無事に完了したようだ。


姉ドライアドに続いて玉座の間を出ようとしたところで、何となく気になって横目で後ろを覗いてみる。

「……?」

サラマンダーがオロオロしている。

ウンディーネはそわそわ。

何だろう、さっきまでとは明らかに様子が違う。


ティターニアもいるし、何か問題が起こったようには見えないけど気にはなる。

だけど今の私にはあそこで何が起こっているのかさっぱり分からない。

結局、何もかもが分からないまま玉座の間を後にした。


「まさかアイラさんが、あんな実力者であったとは驚きました。」

世界樹の上を歩いていると、隣を歩く姉ドライアドが口を開いた。

うっ、ここまで深く突いてくる人はいなかったのに、ここで来た。

そりゃ星を吹き飛ばすところまで見られたんだから、何も聞かれない方がおかしいよね。


「ごめんなさい。誰かに言える話じゃなかったので。」

「ええ、ええ。分かっていますとも。」

ここは下手に誤魔化さず、素直に謝っておこう。

姉ドライアドも特に気分を害した様子はなく、いつもの穏やかな笑顔を浮かべている。

秘密にしていたことを責められているわけじゃなくて良かった。


「あんな力を誰かに説明できるわけないじゃない。」

「強くてもアイラはアイラだよ~。」

すかさずシルフとドライアドがフォローを入れてくれる二人が頼もしい。

特にアールヴヘイムでは、完全に私の味方になってくれている安心感がある。

願わくば、このままずっと甘やかされていたい。


「何か秘密があるとは思っていました。それでも想像を超えてくることが、まだこの世界にあると思うと嬉しいですね。長生きはしてみるものです。」

姉ドライアドは心底楽しそうに笑っている。

……そういえば、一体何歳なんだろう。

かなり長生きなのは間違いなさそうだけど、女性に年齢を聞くのは何となく気が引ける。


それに前世の設定資料を思い返しても、姉ドライアドの年齢なんて載っていなかった。

そもそも私の知っている設定資料にもいなかった人物だ。

今こうして普通に話しているだけでも、前世の私からすればマスクデータへ触れていることになる。


ゲームだけでは知ることができなかった世界。

設定資料にも載っていなかった人たち。

そういうものが次から次へと出てくる。

嬉しくもあるけど、元運営としては情報不足がもどかしい。

願わくば誰か。この世界の最新設定資料か攻略本を、私に見せてほしいものである。

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