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GM権限、使えちゃいました⑨

町へと続く小道を太陽を背にしてのんびり歩く。

湖畔でしばらく景色を眺めていたせいか、太陽は西へ傾き始めていた。

今は、おそらく午後三時過ぎ。空がオレンジ色に染まる前には帰らないといけない。

もう検証は十分やりきったので、人目のない場所で《HidePC》も解除してある。


朝七時前から使用していたから、少なくとも八時間以上は連続で維持できていたことになる。

その間、疲労を感じることもなければ、体調に変化は無く、HPやMPのようなものを消費している様子も無い。

「今のところは、前世で使っていたGMコマンドと同じ性能だと思ってよさそうかな。」

もちろん、まだ断定はできない。


それでも今日一日検証した限りでは、大きな違いは見つからなかった。

そう考えると改めて、とんでもない力を手に入れてしまったと思う。

本当にこの世界にあってもいいのかと悩んでしまうほどに。

「こんな力を持ってたら、『ガイア様』に消されたりしないよね?」


口に出した途端、少しだけ不安になってきた。

ガイア様は、この王国の国教である『ガイア教』が信仰する大地の女神。

世界のあらゆる生命を生み出した母であり、この世界で知らない者はいないほどの存在だ。

そしてゲームのメインストーリーにおいても、間違いなく最強格の存在だった。


世界や種そのものが危機に瀕するような事件が起きれば、ふらりと姿を現して圧倒的な力を見せる。

そのせいでプレイヤーたちの間では、『最初からお前が何とかしてくれ』なんて言われてたことを思い出して、思わず苦笑する。

だけどガイアはそんなことは絶対にしない。

人間を嫌っているわけではないれど、人間的な価値観で動いてくれる存在でもない。


良くも悪くも、人やモンスターを含めたすべての生命に対して平等な神様。

彼女は世界や種の危機が訪れた時にだけ姿を現すいわば世界の最終防衛機構。

そんな存在だった。


もしGMコマンドがそんな最終防衛機構に引っかかって、この世界に存在してはいけない異物だと判断されたら私は消されちゃうかもしれない。

「それはすっごく困るなぁ。」

私は立ち止まると、周りをキョロキョロと見渡して誰もいないことを確認する。

無事に誰もいないことを確認すると、その場にしゃがみ込んで地面へそっと片手をついた。


「ガイア様聞こえていますか。」

誰にも聞こえないように小さな声で呟く。

「……私はこの力で悪いことをするつもりはありません。」

少し考えてから、もう一度地面へ向かって話しかける。


「ちゃんとやり過ぎないように大人しくします。」

そして最後に両手を合わせると、地面に向けてぺこりと頭を下げた。

「だから、どうか見逃してください。」

これは本気の命乞いだ。


求められれば菓子折りの一つくらい女神様の家に持ち込む覚悟もある。

しばらくそのまま祈りを捧げてから、そっと顔を上げる。

これで祈りが通じていたら嬉しいけど当然、返事はない。

その姿を見ている者は、誰一人いなかったのだから。

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