GM権限、使えちゃいました⑨
◇
町へと続く小道をのんびり歩く。
湖畔でしばらく景色を眺めていたせいか、太陽は西へ傾いている。
空がオレンジ色に染まる前には帰らないと。
途中、人目のない場所で《HidePC》も解除済みだ。
もう検証は十分。
今は、おそらく午後三時過ぎ。
朝七時前から使用して、少なくとも八時間以上は連続で維持できていることになる。
その間、疲労を感じることもなければ、体調に変化もない。
HPやMPのようなものを消費している様子もなさそうだった。
「今のところは、前世で使っていたGMコマンドと同じ性能だと思ってよさそうかな」
もちろん、まだ断定はできない。
それでも、今日一日検証した限りでは大きな違いは見つからなかった。
この世界にあってもいいのか悩むほど、とんでもない力だと思う。
「こんな力を持ってて、『ガイア様』に消されたりしないよね?」
ガイア様は、この王国の国教である『ガイア教』が信仰する大地の女神。
世界のあらゆる生命を生み出した母であり、この世界の誰もが知る存在だ。
そして――。
ゲームのメインストーリーにおいても、間違いなく最強格の存在だった。
世界が滅びかける事件が起きるたび、ふらりと姿を現しては、あっさり解決して帰っていく。
そのせいでプレイヤーたちの間では、『最初からお前が何とかしてくれ』なんて言われていたっけ。
思わず苦笑する。
ガイア様は人間を嫌っているわけではない。
けれど、人間的な価値観で動く存在でもない。
良くも悪くも、すべての生命に対して平等な神様。
世界や種の危機が訪れた時だけ姿を現す。
そんな存在だった。
もしGMコマンドを、この世界に存在してはいけない異物だと判断されたら――。
「それは困るなぁ」
私は立ち止まると、その場にしゃがみ込んで地面へそっと片手をついた。
「ガイア様」
小さな声で呟く。
「私は悪いことをするつもりはありません」
「ちゃんと大人しくしています」
「だから、どうか見逃してください」
最後にぺこりと頭を下げる。
その姿を見ている者は、誰一人いなかった。




