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隠していた力⑯

「じゃあアイラも、何でそんな力が使えるかまでは分からないのね?」

「うん、皆目見当もつかないね。」

それは本当に分からない。

前世では『ネームレスオンライン』の運営を長くやっていたけど、だからといって特別な力に目覚めた。


なんてことは無いよね。

「ティターニアに会えば何か分かるのかな。」

アールヴヘイムで会った時、彼女は最後に『貴女とは、また会える気がするわ。』と言っていた。

あの言葉がずっと引っかかっている。


私がハイサモナーへ転職するために、もう一度あそこを訪れると確信しているのだろうか。

「さぁ? 女王様も何も知らないかもしれないわよ。」

「それもそうか。」

その可能性も十分ありそうだ。


まさかとは思うけど、女神ガイアがあの時点ですでに私へ目を付けていたなんてことは無いだろうし。

――無いよね?

魔王の復活については女神ガイアも関わってくる話だからなぁ。

さっき魔王の半身を吹っ飛ばしたところは、もしかしたら見られていたかもしれない。


そう考えると、急に不安になってくる。

もし本当に目を付けられていたら怖すぎるんだけど。

「けど、女王様にはまた会うつもりなんでしょ?」

「そうだね。シルフももっと美人にしてあげたいし。」


『ハイサモナー』になれば、契約している精霊も成長する。

今でも十分可愛いけど、成長したシルフがどんな姿になるのかは私も楽しみだ。

「やーね。今でも美人でしょ、アタシ。」

「モチロンデス。」


胸を張って当然のように言い切るシルフから、そっと視線を逸らす。

……それを言わなければもっと可愛いんだけどね。

「アイラ、さっきの剣をもう一回出してよ。」

「はいはい。」


《Storage》

GM専用倉庫を開き、中からレーヴァテインを取り出す。

手にした瞬間、私の能力が一気に跳ね上がり、それに引っ張られるようにシルフにも影響が現れた。

「うわわわわ。」


シルフが自分の両手を見ながら目を丸くする。

うーん、見事にドパってるなぁ。

突然の急激なステータス上昇に、完全に興奮している。

でも、その感覚は私にもよく分かる。


私も最初の頃は、急激に能力が上昇する感覚で精神が高揚しすぎて危なかった。

試し打ちした四次職スキルで、サジタリウスの森を吹き飛ばしそうになったこともあるし。

これは黒歴史なので誰にも言わず、心の中にしまっておこう。

今の私はちゃんと自制ができる大人なのだ。


「こんなすごい力があるのに、どうして隠したいの?」

「うっ。」

いきなり痛いところを突いてくるなぁ。

これについては、私なりに理由がある。


「私と同郷の人がいたら、同じ力を使えるかもしれないでしょ?」

「ふーん。そんなヤツ、見たことないけどね。」

「そんなこと言ったって、誰が異世界人かなんて……。」

そこまで言ったところで、ふと口が止まる。


本当に分からない?

さっきシルフは、私の魂と魔力の色が他の人間と少し違うと言っていた。

それが異世界から転生してきたことによる違いなのかは分からない。

だけど、もしそうだとしたら精霊が傍にいれば、私と同じような『レアもの』を見つけられるってことなんじゃないだろうか。


「ねぇシルフ!」

「な、なによ?」

「あ、ごめん。」

思わず大きな声が出てしまった。


驚いたシルフを見て慌てて謝る。

でも、これは大きな進歩かもしれない。

今までは他の転生者がいたとしても、それを見つける方法なんて何も思いつかなかった。

だけどシルフなら、何か違和感くらいは見つけられる可能性がある。


「今後もしも私みたいに、魔力とか魂に違和感がある人間がいたら教えてくれない?」

「良いわよ。でも見つけたら、いつもより多めに魔力頂戴ね。」

「それくらいならお安い御用だよ。」

魔力を少し多めにあげるだけで教えてくれるなら安いものだ。


「分かった。」

私は快く返事をする。

これで確実に異世界人を見つけられるとは限らないけど、今まで何の手掛かりもなかったことを考えれば十分な進歩だ。

「魔力といえば。」


「ギクッ。」

思わず体が固まる。

その言葉で、何のことを言われるのかすぐに分かってしまった。

「魔力半分貰う約束してたわよね。」


やっぱり覚えていた。

できればこのまま有耶無耶にしたかったんだけど、それは許してもらえないらしい。

だけど約束は約束だ。

今日はシルフにも色々働いてもらったし、私が隠し事をしていたのも事実。


ここで約束を破るわけにはいかない。

「お手柔らかにお願いします。」

私は観念して手袋を外すと、人差し指をシルフへ近づけた。

「いただきまーす♪」


上機嫌な声とともに、シルフが私の指へかぷっと吸い付く。

いつものように魔力を吸われる感覚がした。その直後、

「って、ちょいちょいちょい!」

とんでもない速度でMPが吸い取られていく。


何これ!?

「あ、しまった。ごめんアイラ。」

すぐに原因へ思い至った。

そういえば、今のシルフはレーヴァテインによって超強化されている。


その状態でいつものノリで魔力を吸ったら、吸収する勢いまでとんでもないことになるのか。

私自身の魔力もレーヴァテインによって大幅に増加しているとはいえ、それでも身の危険を感じるほどの勢いだった。

「仕方ないなぁ。」

このまま吸われ続けるのはさすがに怖い。


私は《Storage》から、今度はギャラルホルンを取り出す。

ギャラルホルンにはHPとMPを超回復させる効果がある。

これで吸われた分を一気に回復させるつもりだった。

「わわわ……!」


ところが、突然シルフがガクガクと震え始めた。

「え?」

その反応には見覚えがある。

さっきレーヴァテインを握った時とほとんど同じだ。


何で?そう思った直後、理由に気付く。

「あ、そっか。」

ギャラルホルンにはHPとMPを大幅に上昇させる効果もある。

つまり、そのMP上昇までシルフへのバフとして反映されて、さらに強化されてしまったんだ。


「さっきのヴォイド? とかいうヤツと戦った時もそれ使ってたでしょ?」

「うん、念のために装備したよ。」

あの時は万が一を考えて、レーヴァテインだけじゃなくギャラルホルンも装備していた。

「どーりで、さっきよりも調子が悪いと思ったのよね。」


「そっか。」

その言葉で納得する。

あの時のシルフは、レーヴァテインだけじゃなくギャラルホルンの影響まで受けていた。

その結果、二重に強化されていたってことね。

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