GM権限、使えちゃいました⑤
◇
「アイラ、朝だぞ。」
誰かに優しく肩を揺すられる。
「んぅ……。」
まだ眠い。
もう少しだけ寝ていたい。
「ほら、起きないと朝ご飯が冷めちゃうぞ。」
大好きな声が、苦笑交じりに聞こえた。
私はぼんやりと天井を見つめる。
「……朝。」
寝ぼけた頭で、昨日の出来事を思い返す。
「……っ!」
勢いよく体を起こし、そのまま布団を跳ねのけた。
「おはよう!」
「お、おう?」
あまりにも急な変わりように、パパが目を丸くする。
その様子を見ていたママが、くすりと笑った。
「あら、珍しいわね。いつもなら『あと五分〜』って言うのに。」
「えへへ。」
恥ずかしい。
やっぱり、ママもそう思っていたんだ。
井戸で顔を洗ってくると、いつものように三人で朝食を摂り始めた。
いつもと変わらない、穏やかな時間。
ママの作った温かいスープを飲み、硬いパンを頬張る。
パパは今日の仕事について話し、ママが相槌を打つ。
私も時折会話に加わり、食卓には自然と笑顔があふれていた。
食事を終えると、パパは弓を背負い、仕事へ向かう支度を始める。
「それじゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい、パパ!」
玄関まで見送り、大きく手を振った。
パパの姿が見えなくなると、部屋へ戻って普段着に着替える。
動きやすい服を選び、身支度を整えると、再び玄関へ向かった。
「ママ、いってきまーす!」
「いってらっしゃい。明るいうちに帰ってくるのよ。」
「はーい!」
元気よく返事をして、家を飛び出した。
向かう先は昨日と同じ。
町外れの、人目につかない場所だ。
「昨日の続きをしなきゃ。」
胸の高鳴りを抑えきれないまま、足を速める。
昨日とは別の人気のない路地裏までやって来ると、念入りに周囲を見回した。
人影はない。
近くの家の窓も閉じている。
誰かがこちらを見ている気配もなかった。
昨日と違う場所を選んだのには理由がある。
万が一、誰かに見られていた場合、毎回同じ場所で姿を消していれば、さすがに怪しまれるかもしれない。
考えすぎかもしれないけれど、この力については慎重になりすぎるくらいでちょうどいい。
十分に安全を確認してから、頭の中にコマンドを思い浮かべた。
《hidePC》
昨日と同じように、私の姿が見えなくなる。
「うん。今日もちゃんと使えた。」
無事に発動したことへ安堵しながら、今日の目的を頭の中で整理する。
絶対に確認しておきたいこと。
一つ目。
《hidePC》を使用する際、HPやMPといった何らかの力を消費しているのか。
昨日は突然の出来事に驚き、そこまで確かめる余裕がなかった。
もし使うたびに体力や魔力を消耗しているのなら、それを知らずに使い続けるのは危険だ。
そして二つ目。
この状態を、どれほど長く維持できるのか。
自分で解除しない限り永遠に続くのか。
それとも、一定時間が経てば勝手に解除されてしまうのか。
朝に弱い私が、今日はすぐに目を覚まして家を出てきたのも、その二つを確かめるためだった。
「昨日は夕方まで効果があったけど……。」
発動したのは昼を過ぎてからだった。
数時間使い続けられたことは間違いない。
けれど、それだけでは十分とは言えない。
戦闘中に突然効果が切れてしまえば、取り返しのつかないことになる。
絶対に無視できない情報だった。




