5話 最強妄想キャラクター議論スレ
A₁理論を考えながらスレを眺めていると、ランキング上位にとんでもないキャラクターを見つけた。
その名もプラトンのイデア論。哲学である。キャラクターではない。なのにいる。ちなみに
【名前】うんちマン
【属性】体臭が酷い人間
あまりにもひどい。だが何でもありの妄想スレ。スルーしよう。
なぜ強いのか。説明しよう。
まず一つ質問だ。
「○△□」のうち、三角形はどれか。
△だと思っただろう。しかしよく考えてほしい。
画面上の△は厳密な三角形ではない。三角形とは「同一直線上にない3点と、
それらを結ぶ3つの線分からなる多角形」だ。線には太さがない。つまり人間には見えない。
原子に大きさがある以上、完璧な三角形はこの世に存在しない。
なのに我々は△を見て三角形だと思った。
存在しないものを、見た。
これがイデアだ。存在しないはずのものを認識できるのは、
イデアを見ているからだとプラトンは言った。
そしてこのキャラクターの強さはここにある。
妄想キャラクターはこの世に存在しない。しかし考察できる。
それはキャラクターのイデアを見ているからだ。
つまりあらゆる妄想キャラクターの考察は、全てイデアを見た結果に過ぎない。
うんちマンが負けるイデアも、勝つイデアも、両方存在する。
考察人がどちらを見るかをイデア界の住人が操作できる以上、うんちマンは原理的に負けない。
しかも不滅だ。「イデア界の住人が消滅した」と考察人が判断した瞬間、
それはイデアを見たということになる。つまりイデア界の住人は消滅していない。
論理で詰めれば詰めるほど、強くなる。
そしてこのイデア論、8位である。
8位。上には7人いる。
恐る恐る上位を確認した。
そこには似たような、しかし似て非なる概念たちが並んでいた。
その中に2位のキャラクターを見つけた。
名前は出会い損ねた表象。
またしても哲学である。
説明しよう。といっても、これが難しい。
イデア論は「イデアを見せる」という能力として説明できた。
しかしこいつは違う。テンプレ自体が一つの論文のようなものであり、
全体で一つの意味を成している。
かいつまんで言うとこうだ。
妄想スレの考察とは何か。
キャラクター本人と戦っているのではない。
テンプレに書かれた言葉から作られた「概念」と戦っているだけだ。
本人には誰も出会えていない。
では本当の意味での最強とは何か。
概念ではなく、誰かの心の中にある表象そのもの。
言語に還元されない、出会うことのできないもの。それが出会い損ねた表象である。
概念と表象を比べたとき、表象の方が強い。
なぜなら概念はただの記号だが、表象は本人だからだ。
つまりどんな強力な概念を持ち出しても、
出会い損ねた表象には届かない。言語ゲームの外にいるのだから。
「本人には誰も出会えていない。」この言葉に引っ掛かりを覚えた。僕の理論と似ているなと。
そしてこいつが2位である。
1位が存在する。
妄想スレで全勝という、意味のわからない記録を持つ何かが。




