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52 レシヴァル攻略戦1

 SIDE バーナード



「俺は、諦めません」


 目の前のラスは凛とした表情で言い放った。


 その手にあるのは漆黒の刀。


 先ほどまでフローラが持っていた武具『煉獄(れんごく)』だ。


「まだ子どもじゃないか」


 オレンジ色の髪をツンツンに逆立てた小柄な少年――【橙の武闘家】レシヴァルが不満げな顔をした。


「本気で僕と戦うつもりかい?」

「お前の方が子どもだろ。見たところ十歳くらいじゃないか?」


 ラスがレシヴァルをにらむ。


 相手が『天星兵団』でも、まったくひるむ様子がない。


 大した度胸だ、と感心する。


 バーナードは先ほどから体の震えが止まらないというのに――。


(……いや、震えてる場合じゃないな。俺だって、自分にやれることをやるんだ)


 と、自分に言い聞かせ、自身を奮い立たせる。


「はあ? 子ども扱いするんじゃない」


 レシヴァルがムッとした顔つきになった。


「僕はこういう外見なだけだ。何億という年月を生きていた超生命体だぞ? 敬え。崇めろ。ほら、早く早く」


(……数億歳という割には子どもみたいな精神性だな)


 内心でつぶやくバーナード。


「なんだ、こいつ……」


 ラスもあきれ顔だ。


「やっぱり子どもだ」

「……ふ、ふん、口喧嘩で言い負かそうとしても無駄だよ」


 レシヴァルが鼻を鳴らす。


「君たちの中では、さっきの女が一番マシな戦力だったはず。そいつでさえ、僕らの前ではゴミ同然――」


 ニヤリと笑う。


「残った君たちに勝ち目はない。ほら、来なよ。僕一人で全員を相手にしてやるからさ」

「なら――いくぞ!」


 吠えてラスが突進した。


 フローラの刀『煉獄』を手にして。


「へえ、意外と速いね」


 レシヴァルが感心したような顔になる。

 と、


「【フィジカルアップ(エイト)】!」


 その背後から声が響いた。


「これは!?」


 驚きの声はラスとレシヴァル両方から上がる。


 次の瞬間、ラスの動きが一気に急加速した。


「ヅィレ……!?」


 高位魔族ヅィレドゥルゾがラスに補助魔法をかけたようだ。


 人間の魔法使いなら【フィジカルアップ】は『(フォー)』くらいまでが限界だろうが、さすがに高位魔族だけあって、それよりずっと高レベルの身体強化魔法が使えるようだった。


「おおおおおおおっ!」


 咆哮とともに、ラスは閃光のような速度で突っ込む。


「そう来たか!」


 レシヴァルが目を輝かせて叫んだ。


 確かに――速い。


 ラスの超速の一撃は、バーナードの目には全く見えなかった。


 上位の身体強化魔法を受けて速力が上がっている影響はあるだろうが、それだけではない。


 やはり、ラスは天才だ。


 数年後、あるいはそれ以降――。


 順調に成長を重ねれば、大陸中に名前を轟かせるような剣士になるかもしれない。


 だが、それでも――今はまだ。


「通用しない……のか」


 バーナードはゴクリと喉を鳴らした。


 ラスの超速斬撃を、その連撃を。


 レシヴァルは余裕の表情でさばいていた。


 両手のグローブの甲の部分は金属部品になっているらしく、そこを使ってラスの刀――『煉獄』を受け、流し、いなす。


 完璧な防御技術だ。


「ほらほら、どうした? 一撃も当てられないのかい?」

「くっ……」


 ラスの斬撃が徐々にその鋭さを鈍らせていく。


 いくら天才的な腕前とはいえ、やはり十四歳の少年だ。


 筋力も未熟だし、連続攻撃を仕掛けていれば、その疲労は加速的に溜まっていく――。


「じゃあ、そろそろ反撃といこうかな――がっ!?」


 その瞬間、レシヴァルが大きく仰け反った。


「隙だらけ」

「な……に……!?」


 振り向いたレシヴァルの前にいるのは、ミラベルだ。


 その手にはヅィレドゥルゾから受け取った黒いナイフ――【黒魔の小剣(レムフィア)】がある。


「不意打ちなら得意」

「ふ、ふざけるなよ――」

「隙あり!」


 ざんっ!


 今度はラスの一撃がレシヴァルを捉える。


「ぐっ……!?」


 レシヴァルの右腕が半ばから切断され、飛んでいく。


「もう一撃――」

「てんんんめえええええええええええええええええええっ!」


 レシヴァルが怒声を上げた。


 ごうっ!


 その全身からオレンジ色のオーラが爆発するように吹き上がり、ラスを、ミラベルを吹き飛ばす。


「――もう許さんぞ。本気で殺す」


 レシヴァルが怒りの表情で告げた。


 その姿が、大きく変化している――。

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