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53 レシヴァル攻略戦2


 先ほどまで小柄な少年だったレシヴァルは、今や身長3メートルを超えていた。


 おまけに顔は獅子のそれに変わり、全身は毛皮に覆われていた。


 さらに背からは四枚の翼が広がっている。


 獅子の天使ともいうべき姿になったレシヴァルは、燃えるような瞳で周囲を見回した。


「こうなってしまうと僕にも――俺にも上手く制御できん。やりすぎてしまうかもしれんが……それも罰だと心得るんだな」


 レシヴァルがニヤリとした。


「この俺を怒らせた罰だと――」


 どんっ!


 次の瞬間、レシヴァルの姿が消えた。


 いや、視認できないほどの超スピードで突進したのだ。


「がはっ……」


 ラスがすさまじい勢いで跳ね飛ばされる。


「ラス!」


 バーナードが慌てて駆け寄る。


「うう……」


 ラスはうめいたまま起き上がれないようだ。


 手足は妙な方向に曲がっているし、明らかに骨が折れていた。


「くっ……」


 ラスはもう戦えないだろう。


「脆いな、人間は」


 レシヴァルが巨体を揺らしながら近づいてくる。


「もう少し楽しもうかと思ったが……やはり手加減が難しい。そっちの男もあっさり殺してしまうかもしれんな」


 ばくんっ。


 レシヴァルが獅子の口を開いた。


 そこに光の粒子が集まっていく。


「魔力攻撃か……!?」


 慌てて杖を構えるバーナード。


「【ブレイジングアロー】!」


 せめて牽制になれば、と無数の炎の矢を放つ。


「そんなものが!」


 ごうっ!


 レシヴァルが一喝すると、それだけでバーナードが放った炎の矢群がまとめて吹き消された。


 防御魔法もスキルも使った様子はない。


 ただ『声』の圧力だけで魔法を消し去ったというのか――。


 あらためて、戦慄する。


 バーナードと『天星兵団』の戦闘能力の差は、あまりにも大きすぎる、と。


 ……と、そのときだった。


「油断大敵」


 ざんっ!


 そんな声とともに、いきなりレシヴァルの足から血が噴き出す。


「がっ!?」


 レシヴァルが短く苦鳴を上げた。


 その背後には、いつの間に現れたのかミラベルがいる。


「隠密歩法『影踏み』。ぢりりんの強化魔法(ブースト)バージョン」


 つぶやくミラベル。


「くっ、ここまで気配を消せるのか……」

「その娘の歩法に加え、俺がそいつの能力を増幅、さらに気配隠蔽系の魔法まで重ねがけした。いくら『天星兵団』といえど、簡単には感知できん」


 と、ヅィレドゥルゾがニヤリとする。


「ぢりりん偉い。私はもっと偉い」


 ミラベルが胸を張った。


「……ふざけやがって」


 レシヴァルが拳を振り上げる。


「気配を消すのが得意でも正面からの戦いはどうかな?」


 ぶおんっ!


 繰り出された拳の先に、しかしミラベルはいない。


「私は暗殺者。正面から戦うことはしない」


 いつの間にか背後に回り、さらに一撃を加える。


「ぐっ……!?」

「不意打ち大好き。卑怯な攻撃も大好き」


 ミラベルは言いながら後退し、レシヴァルから距離を取った。


 完璧な一撃離脱戦法――。


「――そうだ、俺たちはまだ負けていない」


 ミラベルとヅィレドゥルゾの連携を見て、バーナードは闘志を奮い立たせた。


 彼単独ではレシヴァルには到底立ち向かえない。


 けれど、ミラベルたちが自分の長所を活かして戦っているように。


 自分にも、奴の目を引き付けることで仲間を活かすことはできるかもしれない。


「俺にできることは、まだある――!」




 そして――レシヴァル攻略戦は、決着のときを迎える。

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