表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢百夜  作者: ゆず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

第八夜

こんな夢を見た——


私、最近悩んでいることがあるんです。……聞いてくださるんですか?ありがとうございます。この悩みについてお話しする前に、少し昔話をさせていただきますね。


 あれは私がまだ高校だったころのことです。私は人形を作るクラブ活動をしていました。……いいえ、布の人形ではなく、張子の人形です。雛人形や赤べこのような。このクラブ活動に所属する生徒は多くはなかったのですが、それでも各学年に数人は存在していました。


 クラブ活動には学校内でも有名な先輩が2人おりました。2年生の珠子先輩と3年生の桜先輩です。お二人とも素晴らしい作品をお作りになるので、時たま表彰されておりました。それに、珠子先輩に初めに人形の作り方を教えたのが、桜先輩だったらしく、お二人は大変仲が良かったのです。きっと、「親友」とはあのような関係を指すのでしょうね。


 しかし、入部して初めての文化祭のとき事件が起きたのです。文化祭では、それぞれの作品を展示することになっていました。中でも展示の目玉は、展覧会で一位と二位になった珠子先輩と桜先輩の作品でした。すっかり準備もできていたのですが、ある朝、顧問の先生が部屋を訪れると、珠子先輩の人形がぺちゃんこにされていたのです。犯人を見た人はいなかったですし、窓も開いていたので、猫か何かが悪戯したのだろうと大事にはなりませんでした。文化祭には別の人形を展示することになりましたが、珠子先輩の作品はどれも素晴らしいのでさほど影響はなかったように思います。


 その後は特に何事も起きず、冬がやって来ました。私たちはコンクールに向けて新たな人形を作っていました。そんななか、再び事件が起きたました。しかも、犯人は意外な人物だったのです。

 ある日の夕方のこと、珠子先輩の人形が再び壊されました。しかも、今回はその現場を目撃した人物がいたのです。たまたま部屋に忘れ物を取りにもどった百合さんが珠子先輩の人形を落とす桜先輩を見たのです。

 もちろん、誰もわざとだとは思いませんでした。クラブの皆が作品が壊れた珠子先輩だけでなく、桜先輩にも慰めの言葉をかけました。しかし、桜先輩はわざとやったのだと主張したのです。


 皆桜先輩が自責の念からそういうのだと、やはり慰めの言葉をかけましたが、桜先輩はわざとだと繰り返すばかりでした。それどころか、文化祭の際に人形を壊したのも自分だというのです。珠子先輩を可愛がっていた桜先輩がそのようなことをするなんて、とても信じられませんでした。珠子先輩も信じていなかったと思います。本当だったとしても何か理由があるはずだと、珠子先輩いいましたが、桜先輩はなにもいわずにクラブ活動をやめてしまいました。その後、桜先輩がどうしたのか、私にはわかりません。事件の真相もわからないまま月日が経ちました。


 その後、大人になった私は幸運なことに張子人形を作る教室を開きました。……えぇ、趣味を仕事にできるなんて、本当に幸運です。そんな中、私の身に困ったことが起きたのです。


 私の教室には十数名の生徒さんがいらっしゃいます。その中の一人、茜さんが私の胸を悩ませているのです。

 ……いいえ、素行が悪いだとか、覚えが悪いだとか、そんなことはありません。むしろ、優しく思いやりがあるいい子なんです。それに、私の生徒の中で一番いい作品を作ります。

 先日、私を含めて教室の全員が出品するコンクールがありました。幸せなことに、私は入賞することができました。それだけではありません。生徒の一人が大賞をいただきました。……そうです、茜さんです。大賞を取るような生徒を輩出できて、私は大変光栄に思いました。晴々しい気持ちでいっぱいです。それなのに、私の胸にはある黒い気持ちも湧いてくるのです。あの子がいなければと。


 私、茜さんのことが嫌いなわけではないのです。むしろ、大変好ましく思っています。先生、と懐いてくれるのも嬉しいですし、努力家な面も尊敬しています。しかし、同時に黒い思いが存在するのも事実なのです。そんな折、学生時代の事件を思い出しました。そして、真相がわかったようなきがしたんです。


 きっと、珠子先輩の作品を壊したのは桜先輩だったんですわ。あの時は誰も信じませんでしたが、今ならわかる気がするんです。桜先輩の中には、珠子先輩を可愛く思う気持ちと同時に、黒い気持ちもあったはずです。だって、珠子先輩が入る前は桜先輩が一番だったんですもの。きっと黒い気持ちを抑え切れず、作品に手が伸びたんですわ。そして、それを恥ずかしく思って何もいわずに去っていった……。


 私も黒い気持ちが溢れ出して、いつか茜さんを傷つけてしまうのではないかと、怖くて仕方がないんです。……そうですね、人間は理性の生き物ですもの、きっと大丈夫ですね。でも私、茜さんの作品を壊す夢をみるのです。その度、はっとして飛び起きるんです……。


——そこで目が覚めた。


お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価いただけるとさらに嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ