第8話 腹鱗の使い方
『エルダはこのあと、どうしたい?』
「どうしたいって?」
『こいつらも、個々は大したこと無いがまとまるとそれなりの賃料を期待できるぞ。それか地上に戻るかだな』
そう告げるビゲートの横にはエレキマタンゴの姿が映る。
どうやらエレキマタンゴとの賃貸契約をしていくかという質問だったようだ。
しかし僕はそれよりも、そのあとのビゲートの言葉に反応してしまう。
「戻れるのっ!?」
『落ち着け。私はナビゲートだ。当然、戻れる』
男前に言い切るビゲート。
なんだかとても心強い。
『私はエレキマタンゴとの賃貸契約を推奨するが、エルダは地上に戻りたいようだな』
「それはもちろん!」
『理由を聞いても?』
「まずは、ウンディーネ=ロペが近くに居るというのが落ち着かない、かな」
『ほう』
「もちろん、危害をくわえてこないって契約なのはわかってるよ。でも、相手はあの精霊種で、しかも四大の一柱だから……」
『なるほど。エルダがビビリなのは理解した』
「ちょっ、いや、これが普通だからねっ! 常識的な人間なら精霊種を遠目にちらりとでも見たら全力で走って逃げるから!」
ビゲートの台詞に、思わず反論してしまう。
『何も、ビビリなことを否定はしない。慎重さは生命の存続に欠かせない資質だとは理解しているぞ』
「まあ、それならいいけど」
『他にもあるのだろう? 理由が』
「ある。ここは天井にびっしりとエレキマタンゴが居るせいで、それ以外の魔物がマッピングスキルで見にくい」
『ふふ。頼ってくれているのはうれしいものだな』
花が咲くようににこりと笑いながら告げるビゲート。
そう言われてみると、マッピングスキルに頼るのはビゲートに頼るのと同じことだった。
なんだか釈然としないものを感じながらも、嬉しそうに笑っているビゲートをみていると何も言えなくなる。
スキルにとって、頼られるのが、そして使われるのが嬉しいというのは、考えたこともなかったのだ。
『まあ、そういう事であれば私がしっかりとナビゲートするからな。任せておけ。エルダはレッドリザードの腹鱗を用意しておけよ。すぐに使うからな』
「え、ああ」
僕は言われるがままにしまったばかりの腹鱗を取り出す。
「なんだか嫌な予感がするんだけど」
『進む方向を矢印で示した』
「──この先には、何がいるんだ?」
『わかってるじゃないか。もちろん、わたりをするレッサードラゴンだ』
自信満々に告げるビゲート。
地図上に表示された矢印が、まるで僕を急かすように点滅を繰り返していた。




