第7話 礼金
『──カタジケナイ。コンゴトモ、セワニナル』
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いいたします」
僕は賃貸契約希望のレッドリザードとの交渉を終える。
スキルボードに映っていた映像が消え、音声が途切れたところで、ほっと安堵の息をつく。
レッドリザードは、その見た目から想像出来なかったが、なかなか理知的で紳士的だった。
それでも、何もわからなかったウンディーネ=ロペの時とは違い、しっかりと交渉しながからの契約は初めてだったので、僕はかなり緊張してしまった。
「……ビゲートも、しっかり補佐してくれてありがとう。助かったよ」
そう、ビゲートは想像以上にしっかりと交渉に際して手伝ってくれたのだ。
『当然だ。それにしても十分な賃貸料になったな、エルダ』
ウンディーネ=ロペ風の美少女顔で、胸をはって答えるビゲート。
その表情は、どこか自慢げだった。
ここ何回かのやりとりで、急速に表情が豊かになってきているし、話し方もかなり男勝りな感じになってきた。
ちょっとだけ、最初の頃のビゲートがなつかしい。
「賃貸料って、月の巡りごとに貰うものだけじゃなくて、礼金、なんてものもあるだね」
僕はスキルボードから出てきた、レッドリザードとの契約でもらった物を手にビゲートに尋ねる。
『ああ。その腹鱗は良いものだぞ』
「……レッドリザードの鱗にしては柔らかいよね」
賃貸契約の際、ビゲートの助言で手にいれた礼金としてのレッドリザードの腹鱗。
僕は手のひらサイズのそれに軽く力を込める。すると、グニグニと曲がる。
固い鱗による、強靭な防御力を誇るレッドリザードにしてはあり得ないぐらい、柔らかい。
『それはレッドリザードの鱗の中でも最も柔らかい部分だ。そしてそれは、かの種族の盟友の証しでもあるんだぞ』
「……そうなんだ。つまり?」
『下位の竜種ぐらいまでなら、それを持つものは、手助けが期待できる』
「これで!?」
『ああ、大事にしておけ。すぐに使うことになる』
僕は腹鱗をグニグニするのを慌てて止めると、大切にしまいこんでおく。
そのビゲートの言葉になんだか不吉な予感を覚えながら。




