第5話 ビゲート
僕がスキルボード上に表示された『スキル進化』という文字に触れる。
その接触に反応して、文字が消えた。
そのまま、何が起きるか固唾を飲んで見守る。しかし、なにも起きない。
「なんだったんだ……」
思わずそんな独り言を呟いた時だった。
突然、頭のなかに声が響く。
『ナビゲートを開始します』
「うわっ──だ、だれだっ!?」
思わず声をあげてしまう。
それは先ほどのウンディーネ=ロペと話した時と、とてもよく似ていた。
しかしあの時は少なくとも魔物とはいえ目の前にウンディーネ=ロペがいたが、今回は何の姿も見えない。
僕が驚いてしまったのも仕方ないだろう。
『ナビゲートです』
再び、同じ声。
もしかしてと、僕はスキルボードを覗き込む。
「まさか、マッピングスキルが話しているのか」
『話しています』
その言葉を裏付けるかのように、スキルボード上に、人影が映りはじめる。それは少女の姿をとると、なぜかウンディーネ=ロペととても良く似た見た目へとなる。
「ウンディーネ=ロペ!?」
『ナビゲートです。コミニュケーション効率の向上のため、契約対象の似姿を模倣いたしました』
「な、なるほど……?」
スキルボード上の少女の口が、その台詞に合わせて動く。ただ、内容は、何を言っているのか良くわからないが、とりあえずウンディーネでは無いらしい。
それでも、どうやら話をしやすくするために姿を作ったようなのは伝わってきた。ただ、危うく殺されかけた相手の見た目をしているのだ。
どうにも、落ち着かない。その見た目は逆効果なのでは、と思いながらも僕は話を続ける。
「それで、ナビゲートさんと呼べばいいのかな?」
『名前はありません。ご自由にお呼びください』
「ああ……じゃあ、ビゲートさんと呼ぶね」
ちょっと安直だったかと思うが、その呼び方を否定はされなかった。
『わかりました』
「ビゲートさんは、マッピングスキルの進化による新しいスキル効果、でいいんだよね」
『そうです』
「知性はある?」
『知性の定義が判然としません。そのため不明です』
「なるほど……」
その答え自体が、すでに知性がある証左になりそうだった。
──知性のあるスキル、インテリジェンススキルなんて、伝説の中の存在なんだけど。マッピングスキルってもしかしてとんでもないのでは……
僕は驚きながらも、少しでも情報が手にはいればとビゲートに質問を続けるのだった。




