第4話 スキルの進化
「はは、何はともあれ、まだ、生きている」
その場でへたり込みそうになるのを、グッと足に力をいれて僕はこらえる。
賃貸契約とやらを結び、危害をくわえてこないと言っていたが、まだウンディーネ=ロペの領域たる、地底湖のすぐそばなのだ。
──少しでも、離れよう。全てはそれからだ。
僕はそろりそろりと気配を消して後ずさっていく。
もちろん、マッピングスキルは使用したままだ。
目の端で、マッピングスキルの地図を注視する。さっきのような不意の遭遇はもう、こりごりなので。
とはいえ、相変わらず天井にはびっしりとエレキマタンゴが生えていて、非常に魔物の判別がしにくい。
──さっきのような契約って、例えばあのエレキマタンゴとも結べるのかな。ただ、賃貸契約というのが、謎。土地所有者と書かれていたし、ウンディーネ=ロペも所有権を認めるとか言ってたけど……
周囲の警戒と地図の確認を続けながらも、考えはどうしてもさっきの光景へと戻ってしまう。
その間も、マッピングスキルの地図には僕が通った軌跡が着々と延び続けてた。
ちょっと気になって、地図上の魔物を示す丸に触れるのと同じように、僕が通った場所を示している赤い線に触れてみる。
反応した。
──あ、やっぱりここも反応するのか! 魔物の時は名前が出たけど……これはっ!
地図上に表示されたのは僕の名前。そして、所有土地面積という文字と数値。
さらに、賃貸契約と、ウンディーネ=ロペの名前が表示されてた。
その土地所有面積の数値が、ほんの少しずつ増えている。
──もしかして、これって僕が歩いた場所の面積、か?
試しに足を止めてみる。
ちょうど地底湖からも離れ、洞窟の壁に少しくぼんだ場所があったので、身を隠すようにそこに座り込む。
──やっぱりそうだ。歩くのをやめたら、数値の増加が止まった……。じゃあこの面積の数値が僕が魔の森で通ってきた面積か。そして、それを所有していることになっていると……
そこで、僕は身震いする。さっきのウンディーネとの遭遇は本当にギリギリの状況だったのだろう。
──あれはたぶん地底湖の水に触れて、その触れた場所を僕が所有していることになったんだな……
実際、マッピングスキルの地図の地底湖のほんの縁の一部だけが赤く変わっている。
ウンディーネが水の精霊で、地底湖全体が棲んでいる場所のため、僕のマッピングスキルのこの賃貸契約という謎の機能の対象になったのだろう。
──僕があの時、地底湖の水に触れてなかったり、出てきたのが別の魔物だったら、僕は死んでたんだな……
思わず身震いしたときだった。
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『スキル進化』と書かれ、点滅している。
──まるで、押せと言わんばかりだけど……スキルが進化するというのは、聞いたことがある。けど、あれって本当に選ばれた極一部のスキルだけだという話だったよな。
僕は一瞬悩むも、この状況が好転するかもと、そっとその『スキル進化』の文字に触れた。




