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第23話 契約締結

『屈辱。我が、人の子と、契約、など』


 目の前にいるのは、全身が緑色の幼女だった。


 無事に土地所有権を獲得したことで始まった賃貸契約。

 マッピングスキルの赤い光に束縛されて人の姿を模して現れたドリアードは、見た目だけはとても幼かった。


 ──トレントオブライフが幼生体ってビゲートが言ってたから、ドリアードも種族のなかでは若いんだろうな。話し方はとてもそうは思えないけど。


 普通に考えて樹木の寿命は人とは比べ物にならないぐらい長いものが多い。

 たぶん、目の前の幼女も、年齢だけでいえば、僕よりかなり年上なのだろう。


『ふふ、いい気味です。私だけ堕ちるなんて、許せないですもの。仲良く賃貸生活に甘んじましょうね』


 なぜか僕とドリアードの契約に立ち会っているウンディーネ=ロペがとても嬉しそうだ。

 ドリアードのすぐそばに立って、幼女を見下ろしながらその頬を水で出来た手で撫でている。


『うざい。我に、触れるな』


 そのウンディーネ=ロペの手をじゃそうに払おうとするドリアードの幼女。しかし短いお手々をウンディーネ=ロペはひょいっとかわす。


『むきっ』


 足元からスルスルと蔓が一本伸びてきて、それでウンディーネ=ロペの手をはね除けるドリアードの幼女。


『あら、生意気です。賃貸生活では後輩なのですよ、あなた。先輩にその態度はよろしくないですよ』

『まだ、契約、してない』

『まあ、地主エルダ=ラースロット、おはやく契約をお進めくださいな』


 気配を消して、こわごわと四大精霊のやり取りを見守っていた僕へ、ウンディーネ=ロペが話しかけてくる。


「ち、賃貸契約を結びます。いいでしょうか」

『致し方なし』

「その、ご提供いただけるものをお教えください……」

『そこの、みずおんなと、同様で』

『み、みずおんな! まあ、植物ロリババアのくせにっ』


 再び、精霊二柱で静かな争いが始まる。

 思わず、そっとその場を離れる僕。


「──ビゲート、ウンディーネとドリアードって仲悪いの?」

『そうみたいだな。なあ、さっさと終わらせろよ、エルダ』

「いやいやいや、あの間に割って入るのとか無理だから。だいたい、ウンディーネ=ロペはいつまでいるの?」

『……債務の履行、まだ、数日は終わらんな。それだけウンディーネの涙の価値は高い』

「そ、そんなに……。耐えられないって」


 こそこそと僕がビゲートと話しているといつの間にか静かになっていた。

 じっと精霊が二柱、こちらを見ている。


「ひえっ」

『地主エルダ=ラースロット、植物ロリババアは月の巡りの度、生命樹の葉を一枚提供、眷属からの危害を加えぬことで契約されるとのことです』


 笑みを浮かべて伝えてくるウンディーネ=ロペ。どうやらドリアードとの契約内容をつめてくれたらしい。ただ、その笑みが相変わらず怖い。


『──エルダ、これは破格の内容だぞ』


 珍しく興奮した様子のビゲート。生命樹の葉というのは相当良いもののようだ。


「わかりました。その内容で問題ありません。僕の名はエルダ=ラースロット。真名を教えてください」

『ドリアード=リュ=ラパンガン』


 真名を名乗るドリアード。


 こうして僕は四大精霊のうち、二柱と契約を結ぶこととなった。

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