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第18話 月の巡り

「サリエ=リーゼのやつ、何がおすすめだっー!」


 僕は走りながら、叫ぶ。


 忘れずに、走りながら細かく左右にステップを加える。


 その僕がいた場所に向かって、蔓が鞭のように叩きつけられてくる。頬を掠める風。大地を打ち付けた蔓がぴしっと痛そうな音をたてる。幸い、今のところは無事にそれらを回避出来ていた。


『次は左だ。エルダ、ドリアードの住んでいるところまではあと少しだ』


 僕は、賃貸契約を結ぶためにビゲートの案内に従ってドリアードの住み処へと走っていたのだ。

 ウンディーネの時は地底湖全体が住み処だったが、ドリアードは基本的に木に宿る精霊のため、住み処たるトレントオブライフ自体に触れる必要があると、ビゲートが言うのだ。


『あれだ、エルダ』


 ビゲートの立体の姿が指差す先。

 そこには想像していたより遥かにこじんまりとした樹があった。


「はぁ、はぁ、小さい、な」

『確かに小さい。トレントオブライフの幼生体だな。だが、油断するなよ。トレント種の最上位であることにかわりはない』


 その時だった。


 トレントオブライフから、ぶわっと大量の蔓が伸びると、上空でゆらゆらと揺れ始める。


 まるで、いつでも叩きつけられるぞとこちらを焦らしているかのような動きだった。


「ビゲート、さすがにあの量は避けきれないって……」


 僕は思わず腰がひけてしまう。


『やはりビビリだな、エルダは』


 やれやれといった感じで肩をすくめて手のひらを上に向けて肩まであげるビゲート。

 無駄に人間臭いしぐさが腹立たしい。


「ビビリで結構」

『はいはい。大丈夫だ』


 ビシッと自信満々にこちらを指差すビゲート。そしてもったいぶって続ける。


『ちょうど、月が一巡りした。そしてウンディーネからの新たな涙の提出が来ていない』

「それって──」

『そうだ。ウンディーネが延滞さんとなった。召喚できるぞ。どうする、エルダ。債務を履行するか?』


 僕の脳裏に、ウンディーネの、あの美しくも恐ろしい姿がちらつく。

 ぶっちゃけ苦手だ。恐怖の対象と言ってもよい。しかし目の前にいるのはそれと同格の敵。そしてこのままでは遠からず僕は殺されてしまうのは間違いない。


 なので、迷ったのは、一瞬だった。


「ビゲート、ウンディーネ=ロペを『延滞者召喚』っ!」

『はいよっ』


 楽しそうに返事をする、ビゲート。

 次の瞬間、スキルボードが激しく輝き始めた。


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