第16話 初飛行
『エルダちゃま、のりごこちはいかがなの?』
「と、とても速いね、サリエ=リーゼ。出来れば、もう少し最初はやさし──」
『速いでちょっ! あたち、速さがじまんなのっ。もっと速くちゅる!』
「ひ、ひぃっ! ちがっ! ひえっ──」
圧倒的な電力を背景としたサリエ=リーゼとの交渉は無事に終了して、僕はその背に乗せてもらっていた。
エレキマタンゴクイーンに貸していた電気とやらは使わなかったのだが、残念ながら一度スキルボードから出したものは戻せないのだ。
なので、そのままエレキマタンゴクイーンにあげた。電気とやらを、エレキマタンゴは繁殖にも使うらしい。こんなに大量の電力は初めてです、素晴らしい子が生まれると思いますと、そこはとても喜んでいた。
それはさておき、今の問題は縦穴を高速で上へと飛ぶ、サリエ=リーゼだった。
永続的な従属契約を僕はサリエ=リーゼと結んだのだが、レッサードラゴンというもの自体がドラゴンのなかでは幼生体にあたるらしい。そのため、なかなか話が通じないところもあって困っているのだ。
今も、僕の顔面に吹き付ける風が強くなりすぎて話すどころではないし、なにより体感的に僕の頭上すれすれを通りすぎていく縦穴の壁が怖すぎた。
思わず悲鳴ももれるというもの。
僕はぎゅっとサリエ=リーゼの首の後ろの突起に掴まる手に渾身の力をこめる。
──エレキマタンゴとの契約のために壁の登り降りをしていて良かった。じゃなかったら、確実に振り落とされてたよ、これ
鍛えた僕の握力でも、びくともしないサリエ=リーゼの二つの突起。
ただ、感触はあるらしく、強く握ると微妙にサリエ=リーゼが身悶えするのだ。
試しに右側に握る突起だけ力をこめ、左側の突起を握る力をほんの少し弱めてみる。
『……ひゃんっ』
小さなサリエ=リーゼの呟きとともに、飛行する進路が僅かに右へと曲がる。
狭い縦穴なので、すぐに壁が迫ってくる。僕は慌てて込める力を逆にして、まっすぐにすると、左右均一の力で突起を握り込む。
『ひんっ……あっ……』
無事にまっすぐに上昇に戻るサリエ=リーゼ。
なにか変な声は聞こえた気がしたが、そこはおあいこさまだろう。
それより、どうやらこの突起である程度はサリエ=リーゼの飛行する方向を操作出来るようだった。
そうこうしているうちに、前方の光が強くなってくる。
どうやら、僕はようやく再び地上へと戻れそうだった。




