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第13話 レッサードラゴン

「なあ、ビゲート。本当にやるのか」

『なんだなんだ。やっぱりエルダはビビリだな。レッドリザードの腹鱗に、いざという時の奥の手まで準備できたんだ。行かない手はないだろ。地上に戻りたいのだろ?』

「まあ、そうなんだけどさ」


 僕は再び、レッサードラゴンが群れている縦穴に舞い戻っていた。

 これからレッサードラゴンと交渉してその背に乗せてもらい、地上まで送ってもらわなければならない。


 気が乗らない僕を、ビゲートが急かす。


『ほら、さっさと声をかけろ。そうだな。どうせならあの子が良いだろう。一番でかくて綺麗だ』

「あれ、本当にレッサードラゴンか?」

『ああ、もちろんだ。……ギリギリだがな』


 最後のビゲートの呟きは小さくて僕の耳には届かなかった。


 ドラゴンは単純に大きさでレッサードラゴン、ただのドラゴン、エルダードラゴンに分類される。

 それはドラゴンの体の大きさが、その生存年齢と強さに直結しているからだった。


 僕はため息を一つつくと、覚悟を固める。

 確かに今出来る準備はすべてしたと言える。そして地上に戻る手だてが他に無いのであれば、やるしかない。


 僕はレッドリザードの腹鱗を掲げると、縦穴に半身を乗り出すようにして、その大きな深紅のレッサードラゴンへと声をかける。


「そちらの大樹のように大きくて、沈む夕日のように美しいドラゴンさーんっ!」


 僕は精一杯のおべっかを込めて声を張り上げる。ドラゴンに通じるかはわからないが、こういうのは気持ちの問題だ。


『あたち?』

「そうですそうです! 僕はエルダ=ラースロットです。レッドリザードの腹鱗を授かってます。少し、お話しよろしいでしょうか」

『どーちよー。何かおいちーものある?』

「あります! エレキマタンゴの肉です」

『ふわー、じゅるる……』


 僕はエレキマタンゴの賃貸料で貰ったいわゆるキノコの部分を、スキルボードから取り出す。

 エレキマタンゴの本体は粘菌らしく、いわゆるキノコの部分を賃料として提出してくれた賃貸契約者が半数ぐらいいたのだ。


 ちなみに賃料は一度スキルボードから取り出すと戻せないので、エレキマタンゴの肉を取り出す量は調整しておく。


 それでも、僕が取り出したエレキマタンゴの肉を見て、よだれをボタボタと垂らす深紅のレッサードラゴン。


「こちらはお近づきのしるしです。どうぞお食べください。美しいドラゴンさんのお名前は何ですか?」

『ふわー。じゅーちー、とろとろー──あたちの名は、サリエ=リーゼ』


 僕が出したエレキマタンゴの肉を美味しそうにむさぼる、サリエ=リーゼ。よほどエレキマタンゴの肉が好きらしい。

 周囲にいる、サリエ=リーゼより小柄のレッサードラゴンたちが、サリエ=リーゼのことを羨ましそうに見ているのがわかる。

 ただ、どのレッサードラゴンもちょっかいはかけてこないようだ。ドラゴン間では、その体格差による順列は絶対なのだろう。


 とりあえず、ここまでは順調だった。

 僕は息を大きくはくと、いよいよ本題を告げようと口を開く。


「僕、エルダ=ラースロットはレッドリザードの腹鱗をもって、サリエ=リーゼに契約を申し込みますっ」


 僕の声に、サリエ=リーゼが、エレキマタンゴの肉に突っ込んでいた顔をあげると、ピタリとこちらを見据えてくる。

 さすがの迫力だ。

 そのまま、僕は契約内容を告げようと口を開くのだった。



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