7の8 夢なのか現なのか?
~オーリオダムの惚気~
「ダムのおはな、きれいね。エマにくれる?」
「うん!だからエマ、ぼくのおよめさんになってね」
「いいよ。そしたらまたおはなくれる?」
「いつでもいっぱいあげるよ」
そう言って、不格好な花冠をエマの頭にのせた。
今日の夢は僕を幸せな気持ちにしてくれた。こんな気分でこの夢を見たのは久しぶりだ。
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先週のエマローズの卒業パーティーは、エスコートできて、本当によかった。
あの日、日が昇ってすぐに、サンドエク伯爵邸に到着した。日雇い護衛たちのことは、執事に任せて、風呂に入り仮眠した。
エマからのメールに、断罪はされなかった、それどころか、男たちはそれぞれの罪を償うことになったと書かれていたので、エマの無事は知っていた。
エマと父上との待ち合わせ場所へ向かった。僕は、初めて来たので、まわりをキョロキョロ見ていたが、『あっ!エマだっ!』8年振りなのにすぐにわかった。手を振りながら駆けつけた。
「エマっ!!」
笑顔で手を振って、僕の天使の元まで駆ける。白に近いクリーム色のドレスを纏ったエマは、本当の天使になっていた。
「まあ!ダム!どうしてここに?」
「君をエスコートしたくて、寝ないで馬を走らせたんだよ」
「えぇ、大丈夫なの?わたくしなら、おじ様がエスコートしてくれることになっていたのでしょう?心配いらないのに」
「心配したんじゃないよ。僕がどうしても君のエスコートをしたかったんだ」
「あなた、来るなんて、一言も書かれていなかったわ」
天使の瞳に涙が浮かぶ。心配の涙?驚きの涙?怒ってる涙?どれでもいいやっ!僕のための涙だ。
「びっくりさせたかったんだ。ほら、泣かないで」
僕は、天使の涙が流れる前にハンカチーフでやさしく拭った。
「無理して来て、本当によかったよ、こんなに可愛らしい君のエスコートをできるんだから」
そう言ったら、天使はびっくりした顔をして、真っ赤な顔をして、そんな可愛いらしい顔を両手で隠した。
「エマ、本当に久しぶりなんだ。ちゃんと顔を見せて」
僕は、天使の顔を覗き込むようにしてお願いした。
天使とのダンスは本当に素晴らしかった。僕の天使は、羽が生えているように、クルクルと踊る。どこかに飛んでいきはしないかと、握る手に力が入る。それを感じとった天使は、クスクスと笑って、またクルクルと踊る。あんなに幸せであんなにドキドキしたダンスは、初めてだった。
エマローズの友人には、お揃いの装いのカップルもいて、とても羨ましかったものだ。
まあ、僕は、それより先にプロポーズをしなければならない立場なのだけれど。プロポーズが成功した曉には、是非とも僕もお揃いを着て『エマローズは僕のものだ』と、見せたいな。
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今日は、エマローズと高原デートだ。朝から料理長と一緒にサンドイッチと果実水を用意した。2人乗り馬車に乗ってエマローズを迎えに行く。馭者も僕がやる。今日は、エマローズのことはすべて僕がやりたいのだ。護衛たちには、馬を用意した。付かず離れずいてくれるはずだ。
ナハナージュ侯爵邸に着き、エマローズを屋敷まで迎えに行くと、淡い桃色のワンピースはふくらはぎの長さで、ベージュの編み上げブーツを履き、幅広の白い帽子を被ったエマローズがいた。まるで花の妖精のようだった。
「妖精さんとデートできるなんて、僕は幸せだな」
エマローズは、少し顔を赤くして、僕の腕を軽く叩く。
「もっうっ!」
馬車をゆっくりと進める。エマローズの話を逃さぬように。エマローズの笑い声を逃さぬように。時々、隣を見れば、妖精が僕に微笑んでいた。
「ほら、見えてきたよ」
「まあ!!」
僕たちは、湖の畔にあるシロツメクサの草原に立った。エマローズの手をゆっくりと引き、エスコートしていく。
「本当に素敵!ダム、連れて来てくれてありがとう。とっても懐かしいわね」
僕の手を放して一歩二歩進み、湖の方を見て、景色を堪能している。
「どういたしまして、エマ。エマはここに来たことがあるの?」
妖精が、振り向いてクスクス笑っている。
「何を言ってるの、ダム。幼い頃一緒に、お父様に連れてきていただいたじゃない。その時、わたくしにプロポーズなさったでしょ。忘れてしまったの?」
「いや、それは僕の夢の話で」
「あなたは、プロポーズをして花冠をくださったわ。その時から、わたくしの王子様はあなただったのよ」
「エマ、エマ、本当に?」
妖精が僕の右手を両手でとる。
「わたくし、男女のことに興味がないと自分のことを思っていましたのよ。でも、今日、ここに来てわかったわ。
わたくしには、小さな時から心に決めた王子様がいたのだもの。そして、その王子様は、迎えに来るから待っていてって言ったのだもの。わたくしは、ずっと待っていたわ」
妖精がもっと僕に近付いてきて、上目遣いで覗き込む。
「そうでしょ?わたくしの王子様?」
僕は、エマを抱き寄せた。しばらくして離れ、エマに跪く。
「エマローズ・ナハナージュ嬢、あの頃からずっと、僕の気持ちは変わらない。どうか、僕のお姫様になってほしい」
「フフフ、わたくしをお姫様にしてくださるの?わたくしの王子様。
もう待ってさしあげないわよ。ずっと一緒にいてくださいね」
「ああ、ああ!約束しよう!どこへ行くとも一緒だよ」
僕は、僕のお姫様をギュッと抱き締めた。
「ねぇ、ダム、シロツメクサの花言葉をご存知?花言葉はね……」
妖精が、ナイショ話のように耳元で教えてくれた。
あれは、夢ではなく現だった。僕を幸せな気持ちにしてくれる現だったんだ。
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