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Please speak!  作者: 長野原春
95/113

プールです

「でーん!」

 祈木が更衣室から勢いよく飛び出してきた。

 新しい水着とは、白ビキニのことだったらしい。

 ほうほう、なかなか。

「・・・。」

 そして、ミー子も更衣室から普通に出てきた。

 前は恥ずかしがっていたのに。

 そしてそんなミー子さんが恥ずかしがらない水着といえば・・・。

「だろうね?」

『文句あんのかコラ。』

 競泳水着でした。

 うん、そんなことだろうと思った。

 なお例によってケータイは置いてきたため、手話だ。

「アヤ、かがみんは何言ってるの?」

「ああ、文句あんのかだって。」

「いいじゃん、かがみん競泳水着似合ってるよね?」

『それは体型の話だろ!!』

「体系の話だろって。」

「人それぞれだって、美衣ちゃん。」

『お前の彼女はいいなあ!!ぼよんぼよんでよぉ!!ごめんななっち!!』

「俺は悪いとは思ってないけど。」

『おっぱいはあった方がいいだろ!?お前男だろ!?』

「落ち着けって。」

 とりあえずミー子を撫でる。

『ここ外だぞ。』

 ミー子の顔が赤くなる。

 よし、落ち着いたかな。

「何を言ってるのかはあまり分からなかったけど多分胸の話だろうなって思った。」

「ああ、当たりだよ陽花。」

『教えてんじゃねえよ京介くんよ。』

「ごめんね?」

「よし、じゃあ泳ごう!」

 流れを吹っ切るかのように祈木が準備体操を始める。

 それにならい、みんな準備体操を始める。

 準備体操とかいつぶりだろう。

 しばらくやってないよな。

「まず何からやる?」

『とりあえず泳ぎたい。』

 そういやミー子はすげえ泳げるんだったな。

「京介ってどんくらい泳げるんだっけ?」

「いや、俺はそんなに・・・陽花の方が泳げるんじゃない?」

「あたし?んー・・・かがみんには負けるかな。」

 ミー子に勝てるんだったらやばいだろ。

『んじゃお先。』

 ミー子が水に飛び込んでいった。

「はやっ!?」

 ミー子が真っ先に飛び込んだのはガチで泳ぐ人達用のプール。

 俺らがいけるようなところではない。

「かがみん泳ぐのめちゃくちゃ早いね・・・。」

「もう水泳選手目指した方がいいのでは。」

「ミー子!俺らはちょっと流れるプールに浮いてるからなー!」

 聞こえているかどうかは分からないけど、とりあえず呼び掛けておく。

「よし京介、浮くぞ。」

「泳ぐんじゃないの?」

「流れに身を任せながら生きていくんだ・・・。」

「ちょっと何言ってるか分からないなー。」

「あたし防水カメラ持ってきたからアヤときょーちゃんが浮いてる姿を撮ってあげるよ。」

「ずいぶんマヌケに姿に見えない?」

「面白いと思うよ?」

 先に浮いている俺に、京介がついてきた。

「すごいね夏央、完全に水面に浮いてるね。」

「息を吸って力を抜くといい感じに浮けるぞ。」

「へー。」

 そう、俺は今水面を浮かぶ昆布のような存在だ。

 このまま何も考えずに浮かんでいればいい・・・。

「おー、アヤもきょーちゃんもなかなかの浮きっぷり。このままどんどん流されて行きそうな感じ。」

 ただこれには問題がある。

「あ、すみません。」

 人とぶつかるところだ。

 まだ夏休みが始まってすぐなため人はそこまで多くないがそれでも泳いでいる人はいる。

 特にね、はしゃいでる子どもたちに当たりやすいんだよね。

「おにーさんなにしてるのー?」

「泳いでるんだよー。」

「背泳ぎー?」

「・・・そうだよー。」

 背泳ぎではないかな。

 いや、背泳ぎだな、うん。

「夏央、ほんとにそれ背泳ぎ?」

「・・・背泳ぎなんじゃないかな。」

「写真見る限り背泳ぎには見えないかなー。」

「じゃあ本物の背泳ぎ見せてやんよ!」

 できないけど。


「夏央、それ背泳ぎじゃないよね?」

「うるせ、俺あんまり泳げないんだよ」

「まあ中学の水泳の授業でも夏央は成績よくなかったもんな!」

「京介もそんなにだよね?」

「いやあ、高校は水泳がなくてよかった!」

 水泳があると成績が下がりかねないもんな。

 成績優秀者は体育までいい成績を取らなきゃいけないとか大変だよな。

「京介は結局入学してからずっと成績優秀者だったな。」

「結構頑張ったからね。皆勤賞は取れなかったけど・・・。」

 ああ、そういえばこいつ入院してたな。

「肋骨の骨折はもう大丈夫なのか?」

「だいぶ前だからね、もう全然平気だよ。」

「それならいいんだけどな。また事故に遭うなよ?」

「夏央こそ、また刺されないように気を付けないとね?」

「さすがにそれはねーだろ・・・。」

 周りを見ると祈木はいつの間にかミー子の方へ行っていた。

 京介と2人か。

「確か輸血しなきゃ危ない状況だったんだっけ?」

「そこらへんあんまり聞いてないんだよな。ミー子も一部血を分けてくれたってのは知ってるんだけど。」

「あんまり気にしないようにしてたけど、やっぱ傷跡って残ってるもんだね。」

「まあざっくり刺されたからなあ・・・。」

 腹部に3ヶ所、ナイフで刺された傷跡が残っている。

 あんまり見たくないけどな。

「ちなみに傷跡って触るとくすぐったいらしいじゃん?」

「ほ、ほんとにくすぐったんだからやめろ!」

 なんで直った後の傷跡って触るとくすぐったいんだろう。

 身体のどこよりも傷跡が一番くすぐったいわ。

「鎌谷って今何してんだろね。」

「あー、どうしてるんだろ。刑務所、かな?夏央はどう思う?」

「どうでもいいからもう社会に出てこないでほしいかなあ。」

「何してんだろうって言いだしたの夏央じゃん。」

 確かにね、でもどうでもいい。

 あれは社会に出ちゃいけないタイプの人間だ。

「お前はいいな、事件やらいろいろ巻き込まれなくて。」

「何も起こらない方が幸せだよ。でも夏央はいろいろ乗り越えてきたからその分強いかもね。」

「どうだか・・・。」

 水に流されるまま、京介と話す。

 なんか、思い出すと本当にいろいろあったなあ・・・。

「そういえば、さっき祈木が京介のこときょーちゃんって呼んでたよな。前まで違くなかったか?」

 確かなーみんだったような気がする。

「ああ、最近変わったんだ。なーみんとかがみんでみんが被るとか言われてな。」

「なんだその理由。」

「夏央は?美衣ちゃんのこと美衣って呼んであげないの?」

「あー・・・声がちゃんと戻ったらかな。ミー子って呼び始めたのも声が出なくなってからだし。」

「へー、夏央も美衣ちゃんもお互いあだ名だから彼氏彼女ってより友達感強いよね。」

「そうか?立派な彼女だぞ?」

 呼び方なんて関係ない。

 今どういう関係性かが重要だ。

「祈木が京介のこと京介って呼ぶことってあるのか?」

「ある・・・いや、ない。」

「え、なに。」

「な、ないよ?いっつもあんな調子!」

「なんか怪しいな?」

「何でもないよ!?」

 明らかに動揺している京介。

 多分京介と呼ばれることもあるんだろう。

 ・・・あ。

「大丈夫、気にしなくていいぞ。」

「なんかわかった風な雰囲気出すのやめてね!?」

「いや、俺もちょっと思い出しただけだから。」

「何を!?」

「・・・京介がはぐらかしてるみたいだから教えなーい。」

「ぐ・・・。」

 言葉に詰まる京介。

 まあたぶんそういうことなんだろう。

「さてさて、存分に流れたから俺らもちょっと泳いでみるか?」

「し、仕方ないな・・・。」

 泳げるかな。

 無理ならミー子に教わろう。


『なっち泳ぐのあんまりうまくないよね。』

「前々からそんなの分かってるじゃない。」

 泳ぐのっていうかもう身体動かす系が苦手なの。

「まあほら、社会人になって絶対必要なわけじゃないですし、ね?」

『例えば子どもと海とかプールに行ったときに泳げないパパってどう思う?』

「ダサいです・・・。」

『まあ私がかっこいいからいいけどね。』

 確かにミー子はかっこいいかもな。

 すげえ泳げるもんなあ・・・。

『まあ大きくなってから覚えるのって難しいもんだし、なっちの泳ぎはまあ残念ということで。』

「悔しいのう・・・。」

『京介くんも似たようなもんだしね。』

「そう、だな。」

 隣のレーンでは京介と祈木が同じような状況だった。

 ほら、京介もあまり泳げないからね?

 ほらほら、今日の主役は泳ぎじゃなくてウォータースライダーだから。

 あと温泉も入れるみたいだし。

『私と勝負する?』

「もう結果見えてるじゃんか。」

 完敗するわそんなの。

『にしてもあれね、泳ぐのは気持ちいいね。』

「確かにミー子くらい泳げてたら気持ちいだろうな。」

『なっちは楽しくない?』

「いや楽しいぞ。ミー子の水着も見られるわけだし。」

『こんな身体の水着姿に興奮するのは変態。』

「バッカ、彼女に興奮しない彼氏なんていねえよ。」

『ふーん。』

 やっぱり水着になるのは嫌みたいだ。

 夏場でも薄手の長袖だもんね。

『もしかしてウォータースライダーの方に行きたい?』

「いや、もうちょっとミー子と泳ぎたいかな。」

『あら、そういってもらえるのは嬉しいわ。』

 ミー子の指導で泳いでみるが、なかなかうまくいかない。

 傍から見たら不格好な泳ぎなんだろうなあ。

「俺かっこ悪い?」

『頑張ってるなっちは素敵。』

「ありがとう。でも泳いでる俺は?」

『無様。』

「ですよねえ・・・。」

 うん、ミー子のそういうはっきり言ってくれるところ好きです。

『まあこの歳までこれなんだから、もう仕方ないね。』

「海に遊びに行くときは釣りでもするかなあ・・・。」

『いいじゃん釣り。私もやりたい。』

「今度父さんが暇だったら連れてってもらうかな。」

『あら、釣りできるのね。』

「外国に行ったときに必要なスキルらしい。」

 本当かどうかは分からないけど。

『そういえばこの後温泉にも行くんだよね。』

「そうそう、近くにあるみたいだ。」

『陽花と温泉とか久しぶりだなあ。』

「俺も京介と風呂とか久しぶりだよ。」

『裸の付き合いというわけですな。』

「そんな話すこともあるかなあ・・・。」

 お互いノーガードで話すこと?

 たぶんないんじゃないかな。

『私ともしたい?』

「やろうと思えばうちでできるじゃんか。」

『なっちが求めればいつでも。』

「ああ、まあ考えとくよ。」


「イヤッホオオオオオオオオオオオオウ!!」

「オオオオオオオオオオッ!」

 京介と一緒に叫び声を上げながらウォータースライダーを滑っていく。

 こりゃ爽快だぜええええええええ!

「きゃーっ!」

 後ろでは、滑り出した祈木が楽しそうな声を上げる。

 そろそろ水面が近づいてきた。

「ぼふっ!?」

 京介が変な声を上げて着水した。

「いいね!ウォータースライダーいいね!」

「鼻に水が入った・・・。」

 京介が涙目でプールから上がる。

「わーーーーー!」

 祈木も着水。

 そしてミー子はというと。

「・・・。」

 真顔で身体を棒にして滑ってきた。

 楽しいのかアレ・・・。

 すごくシュールな光景だったんだけど。

「スピード感あって楽しいね!」

「京介はあそこでえずいてるぞ。」

「あれっ、きょーちゃんどうしたの?」

「いや・・・。」

『京介くん、情けない。』

「俺は大丈夫だったぞ。」

『そうだね。』

 反応が薄いじゃないですか。

「次はどうするよ?」

『ほら、もう一度行くぞ。』

 ミー子が腕を引っ張る。

『次は一緒に滑ろう。』

「2人一緒に滑っても大丈夫なのか?」

『分からないけど。大丈夫なら一緒がいい。』

「じゃあ、聞いてみようか。」

「・・・ん。」


 まあ同時は危ないということで。

 結局一緒には滑れませんでした。

「今度遊園地に行ってジェットコースターにでも乗るか?」

「・・・(ふるふる)。」

 ミー子が首を横に振った。

 なんだ、あんだけウォータースライダー楽しんでたのに。

「嫌か?」

『私がいつだか暴れたのを覚えてるだろ。』

「暴れた?」

『ジェットコースターじゃないけど、似たようなやつで暴れただろ。』

「似たようなやつ・・・?」

 そもそもそんな乗り物乗ったっけ?

 うーん、ミー子が苦手な乗り物・・・。

「ああ、飛行機か。」

『あんな感じなんだろう!?絶対ヤダよ!!』

「そうですか。」

『私が楽しめるのはこのウォータースライダーくらいだ。』

「そりゃ残念だ。」

『まあ、なっちが隣で手を握っててくれるなら、ジェットコースター乗ってもいいかもね。』

「ツンデレ?」

『ちゃいます。』

 このぐらいしか楽しめないらしいので、ウォータースライダーは存分に楽しませてもらいました。


「美衣ちゃん、またガチプールで泳いでるじゃん。」

「祈木は?」

「ちょっと休憩してるよ。」

「祈木の方に行くか?」

「うーん、流れてようかな。」

「じゃあ俺も一緒に行こうかな。」

 あ、そうだ、流れるプールで泳ぎの練習しよう。

 流れに乗ってやれば、泳いでる気分になれるかもしれない。

「おお!泳げてる!」

「夏央かっこ悪いかな。」

「そういうこと言うなよ!?」

 せっかくちょっといい気分になってたのに!

「そういう京介も俺と同じことしてるよね!?」

「いや、俺は泳げないことは自覚してるから。」

 なんだよぉ!俺がかっこつけてるように見えたのかよぉ!

 そんなことしてねえよ!

 でも実際泳げないんだからこうやって気分に浸るだけでもいいじゃないですか。

「あんまり張り切りすぎるとまた人に当たるよ。」

「そこは気を付けるよ。」

 あんまり体力使い果たさないようにしないと。

 この後温泉にもいくわけだし。

 風呂って入るのに意外と体力使うんだよね。

「にしても小さいころはプールとかではしゃいでたのに、今となってはしばらく入ってると疲れるんだな。」

「俺たちもう若くないね。」

「ああ、これからどんどん老いていくんだぜ。」

「まだ十代なんだけど・・・。」

 まあテレビで二十代から老いは始まるって聞いたし。

 俺たちはもうすでに始まっているのかもしれない。

 ほら、ミー子は泳いでても疲れてる様子ないし。

 ・・・まあミー子は表情に出づらいからよく分からないことが多いんだけど。

「疲れたからそろそろ出るか。」

「そうだね、ちょっと休んだらお風呂行こう。」

 プールから上がると、ミー子も出てきた。

『終わりっすか?』

「俺たちは終わりかな。ミー子はどうする?」

『なっちが上がるなら私も上がるよ。』

「じゃあ陽花が休憩してるところに行こうか。」


「お、みんな来た。ごめーん体力尽きた。」

『私が陽花を振り回したからね、ごめんね。』

「なんだって?」

「祈木のこと振り回してゴメンなって。」

 今度祈木に手話教えようかな。

 いや、京介に任せるか。

「いーよいーよ!楽しかったし!これからお風呂だよね!」

「おう、行くか?」

「行く行く!かがみんお風呂入ろう!」

『陽花との差でいろいろと絶望しそうだから別れて入らない?』

「なんだって?」

「祈木と差があるから別れて入りたいと。」

「もー!そんなこと言ってないで行こうよー!」

「・・・!?」

 祈木がミー子の胸を揉み始めた。

 ミー子が抵抗するが、残念ながら逃げられない。

 あの、ここに男もいるんですよね。

「いいなって思ってる?」

「べ、別に?」

「いつでも触れるもんね。」

「そういうことを言うんじゃない。」

 更衣室前で一度別れて着替える。

「にしても久しぶりに泳いだよね。」

「もうしばらくこんなことしないんじゃないか。」

「疲れた?」

「結構疲れたかも。」

「にしても夏央、美衣ちゃんといる時結構胸の方見てない?」

「そ、そうか?」

「視線がそっちに行ってたような?」

「そうかなあ・・・?そんな意識してないんだけど・・・。」

 み、見てたか?

「まあいいか、とりあえず温泉行こうか。」

「おう、行こう行こう。」

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