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Please speak!  作者: 長野原春
93/113

受験準備中です 2

「わっ!これおいしい!さすがなつくんと美衣ちゃんだね!」

「アイスもいい感じだねー、やるじゃん夏央。」

「いやいや、それほどでも。」

『やったぜ。』

 夕食後、みんなで作ったマカロンを食べていた。

「帰ってきてこういうのがあると明日も頑張ろうって気になるわね~。」

「うん、うまいぞ夏央、美衣ちゃん!」

 うおお、みんな褒めてくれるな。

 こりゃいいや。

『大成功だね。』

「そうだな。」

『次は何作ろうか。』

「お菓子の練習の前に小論文の練習かな。」

『ヴァァアアアアアアアアア!!!』

「なんだその反応は・・・。」

 とりあえず嫌だということは分かった。

『なっち、マカロンアイスおいしいね。』

「現実逃避かな?」

 ミー子は俺に背を向けてマカロンを食している。

 まあいやでも学校に連れて言ってやるんですがね。

 ただミー子の言う通り、自分で作っておいてなんだが、このマカロン美味しい。

 上手くできてよかった。

 今まで失敗するのが嫌だったからそんなに作らなかったけど、これからは平気そうだ。

「それにしてもマカロンってのは買うと高いよな。なんでだ?」

 父さんが素朴な疑問をぶつけてくる。

 確かに買うマカロンは高い・・・。

「マカロンって作るのがやっぱり大変だから手間賃がかかって高くなる、っていうのはきいたことある!」

 右手を上げて答える冬姉。

 小学生か。

 でもそんな理由なのか。

『確かに材料的には金がかかるもんでもないですもんね。』

「そうそう、すべては手間賃・・・じゃあここで食べれば解決だね!夏央と美衣ちゃんが作ってくれるし!」

『ここにマカロンがあるかどうかは私となっちの気まぐれですね。』

「だな。」

「まあマカロンじゃなくても・・・こう、食べられるだけでうれしいし・・・。」

 なんでテンションが下がるんだよ。

 確かにこのマカロンはおいしいが。

「コンビニとかに売ってるマカロンって手出しづらい値段だもんね・・・マカロンなんて久しぶりに食べたもん。」

「私の職場じゃマカロンを食べてる人なんて誰もいないわよ。」

「父さんも見たことないな!」

「男ばっかりのところでそんなしゃれてるもんを食べてる人がいたら見てみたいな。」

 多分探してもなかなかいないと思う。

『すごい、マカロンの話題でこんなに盛り上がるなんて。』

「普段食べないからだろ。」


「おいしかったよ~!ありがとね!」

 食べ終わった後、部屋に戻ったら春姉がついてきた。

 美味しかったことを伝えたかったらしい。

 ちなみにミー子は帰りました。

「喜んでくれて何よりだよ。」

「久しぶりに食べたしね!それに、アイスなんて初めてだったし・・・!」

「気に入ってくれた!」

「もちろん!まだ残ってるから明日大学に持って行って紗由にも食べさせてあげるんだ!いいかな?」

「ああ、いいよ。」

「紗由もきっと喜ぶよ!」

 紗由さんか、チーズケーキを作って以来かな?

 以来って言ってもテスト前のことだからそんなに経ってないか。

 次作るのはいつになるかな。

 入試後かな。

「なつくんの入試は来月だっけ?」

「そうそう、だから夏休み返上で入試対策のために学校に行かないといけない。」

「わ、大変だねえ。がんばってね!」

「ああ、頑張るよ。」

「なつくんと美衣ちゃんが合格したら・・・私がお菓子を作ろうかな!」

「マジか、春姉がお菓子作るところって見たことないんだけど。」

 普通の料理ならよく食べてるけど。

「あんまり作ったことないけど、料理と一緒だよね、できる!」

「料理とは結構違いますよ!?」

「そうかなあ。」

 まあ、適当にできるところがないからね、お菓子作り。

「じゃあ・・・なつくんが私にしてほしいことは何かないかな?」

「俺に?」

「うん、何でもいいよ?」

 何でも・・・。

 春姉が俺のために何でも・・・?

「・・・っく。」

「喉が鳴ってるよ?変なことでも考えてた?」

「そ、そんなことはない。そんなことはない。」

「なんで2回も?」

「な、なんでもない。」

 女性が何でもとか言っちゃきっとダメだと思うんだ。

「なつくん、顔赤いよ?」

「やめて、追及しないで。」

「あっはは、分かったよう。」

 楽しそうに笑う春姉。

 からかってきてるな?


「おいっす夏央。」

 春姉が部屋に戻ったあと、今度は冬姉がやってきた。

「何しに来た。」

「別にそんな言い方しなくてもいいじゃーん。大好きな弟に会いに来たんですよーっと。」

 そういって、俺の隣に座る冬姉。

「よっこいしょ。」

「年寄りに聞こえるぞ。」

「そんなこと言わないのー。どうよ、受験は。」

「一応面接練習や小論文の練習はしてるけど・・・まあなるようになれとしか。」

「ちゃんと対策で来てるんだったらきっと大丈夫だよ。それに、特待生目指してるんだったらもう受かる気マンマンじゃん。」

「あれは学費とか考えてそっちで受けようって思っただけで・・・。」

「大丈夫大丈夫。夏央はあたしの自慢の弟だし、美衣ちゃんだって自慢の妹みたいなもんだからね。」

 背中を押してくれる冬姉。

 それは嬉しいんだけど。

「冬姉は大学受験の時はどうだったの?」

「あたし?んー受験かあ・・・。」

「美大だったし、実技とかもあったんだろ?」

「そうねー・・・まあ一般受験だし基本はみんなとやってることは変わらないけど、実技もデッサンだったしなー。」

 ああそうだ、この姉頭良いんだった。

「一般科目は余裕だったんだろ?」

「まあそれなりだよ。AO入試とかの方が楽だったかもね。」

「推薦とかはなかったの?」

「あたしはあんたと同じ高校でしょうが。推薦の中に美大はあった?」

「・・・確かなかったはず。」

「そうそう、だからあたしは最初から勉強してたの。」

 やっぱ勉強は継続してやってくことが重要なんだろうな。

 ほら、京介とかも頭良いし。

「まあ、あたしは夏央も美衣ちゃんも大丈夫だと思ってるよ。だからしっかり頑張んなさい。」

「言われなくても頑張るよ。」

「あっ、生意気だなー。」


 冬姉と春姉に応援された。

 頑張らないとな。

 夏休みに入ったとはいえ明日は学校だし、今日は早めに寝ておこう。

 一応ミー子に連絡しておこう。

『俺らは明日も学校だから忘れずに起きてくれよ?』

 返事はすぐに来た。

『朝早く起きてランニングしてるんですけどー。なっちこそ朝弱いんだから寝坊はやめてよねー。』

 そういえばそうだった。

『すんませんでした、お休み。』

『あら早いわね。おやすみ。』

 早いって言ったってもう11時だ。

 朝早く起きてるけど、ミー子は何時に寝ているんだろう。

 まあいいか。


 ぽんぽん。 

 腹に何かが乗った。

「・・・おおう、おはよう。」

『おはよう。私はちゃんと起きましたが。』

「ごめんて。」

『ほらほら学校行く用意して。』

「はーい。」

 ミー子が着替えを用意してくれる。

 あの、別にインナーまで用意してくれなくてもいいんですよ?

『大丈夫、タンスの中はすでに全部把握している。』

「パンツを全部見られてるのかあ・・・。」

『赤い勝負パンツまで把握済み。』

「そんなもん持ってねえよ。」

『冗談ですよ。』

 そういって部屋から出て行くミー子。

 うん、そこのプライバシーは守ってくれるのね。

『準備できた?』

「できたできた。」

『朝ご飯はテーブルの上に。』

「母さん今日も早いのか・・・。」

『いつも大変ね。私の分まで置いてあった。』

那空(なあ)さんも早いのか・・・。」

『私たちはそんなパワフルなママたちに支えられています。』

「そうですね。」

 ミー子に起こしてもらわなければ確実に遅刻するような時間だった。

 危ない危ない。

『ちゃっちゃと朝食を済ませて学校行きますよ。』

「はーい。」

「あ、なつくん、美衣ちゃん、おはよう。」

「春姉おはよう。」

『ハルさんおはよう。』

 春姉が入ってきた。

 ミー子の隣に座る春姉。

 まあ、ミー子がいない時は俺の目の前が春姉の定位置だもんね。

「受験の準備で学校に行くんだっけ?」

「そうそう、今日は小論文の練習。昼には帰ってくるよ。」

「そっか。あ、お皿洗いはやっとくからそのまま置いてっていいよ。」

「いいの?」

「うん、今日の講義は3限からだからね。」

「ありがとう春姉。」

『ありがとうございます。』

「いいのいいの、学校頑張ってきてね。」

「うん。」

「・・・(こくり)。」

 さて、食べ終わったことだし学校に行くとしましょう。


「絢駒くん、小論文だいぶ書けるようになったね。その調子で練習していこう。」

 宿題の小論文を褒められた、ちょっと嬉しい。

「構成とかどうっすかね?」

「段取りはしっかりしてるからいいと思うよ?まあ、題材が分かりやすいしね。」

 一応製菓の専門学校ということで、小論文の題材は現在のお菓子の人気と今後の動向についてだ。

 ミー子も同じ題材で書いているが・・・。

「鏡崎さんはもうちょっと練習が必要かも。現代文とか苦手だったよね。」

「・・・(こくり)。」

 理系のミー子には小論文が難しいらしい。

「お互い進路は一緒なんだし、どんなのを書いたのかとか、見せあってもいいんじゃないかな。」

『帰ったらよろしく。』

「はいはい。」

「原稿用紙は足りてる?」

「あ、追加でほしいです。」

「はーい、用意しとくね。」

 進路担当の先生が部屋から出て行く。

『私小論文大丈夫かな。』

「場数踏んでいけば大丈夫だと思うけど・・・。」

『一応入学できればいいから特待生じゃなくてもってのはあるけど。』

「何言ってんだ、頑張るんだろ?」

『なんか弱気になってきた。』

「大丈夫、あと1ヶ月あるんだ。どんどん練習していこうぜ。」

『手伝ってくれる?』

「もちろん。」

 ミー子の頭を撫でると、上目遣いでこちらを見てきた。

 ちょっと破壊力高いですね。

「はい、原稿用紙持ってきたよ。それじゃ次は面接練習しようか。」

 面接練習は週に3回。

 先生が毎回変わるので対策も何もないけど、まあいろんな面接に慣れておいて悪いことはない。

「今日は私が絢駒くんの担当ね。鏡崎さんは茎野先生が面接してくれるって。」

「分かりました、お願いします。」

『茎野先生か・・・。』

 ミー子が仏頂面になる。

「嫌か?」

『いやほら、あの人さ。』

 まあ言いたいことは分かる。

 でも大丈夫だろ、進路のことだし。

『ちゃんとやってくれると信じたい。』

「俺もいつか茎野先生に面接受けたいな。」


「それでは絢駒さん、あなたの将来の夢を教えてください。」

「はい、私の将来の夢は自分の店を持つことです。小さいころから私はお菓子を作ることが好きで、お菓子を作っては家族や友人にふるまっていました。家族も友人も、笑顔でそのお菓子を食べてくれました。私はそれを続けているうちに、自分で店を開き、地域に愛される笑顔があふれる店にしたいと思うようになりました。この夢を実現するために、貴校で製菓の技術を学びたいと思いました。」

「ありがとうございました。では最後に、簡単に自己PRをお願いします。」

「はい、私の長所は人の話を聞くことが得意なことです。私は学生時代にアルバイトで、季節限定メニューの考案をやっていました。この季節に合うメニューはどのようなものか、他のメンバーと話し合って、相手はどのような季節限定のメニューを作りたいのかを聞き、意見を取り入れたうえでメニューの考案をしていました。実際に考案したメニューは人気を博し、店に貢献することができました。また私の短所は、他人の意見を尊重しすぎて、自分の意見を飲み込んでしまうことがあることです。貴校に入学した後は、話し合いの中で、私自身の意見を言えるようにすることを心掛けていきたいです。」

「はい、以上で面接は終了です、ありがとうございました。」

 そういえば最近メニュー考案してないなー。

 てかバイトも休みがちだし・・・。

 入試が終わったらやろう。

「絢駒くん、面接もちゃんと答えられるようになってきたね。」

「ありがとうございます。」

「本番でそんな風に受け答えができるなら大丈夫だと思うよ、頑張って!」

「頑張ります!」

「次から私以外の先生で練習だね。」

「怖い先生とかっています?」

「怖い先生かあ・・・まあ何人かいるかな。教えないけどね!」

「いけず!」

 教えてくれたっていいじゃん!

 怖い先生とか事前に対策しておきたいんだけど!

「今日みたいな調子で面接できれば大丈夫だって。自信もって!」

「はあ・・・。」

「じゃあ今日はこれで終わりね。明後日も遅刻せずに来てね。」

「ありがとうございました。」


『お疲れなっち。』

「おう、お疲れさん。」

 進路指導室を出ると、ミー子が廊下で待っていた。

 面接練習、早めに終わったのかな。

「茎野先生、どうだった?」

『案外適当じゃなかった。結構頼りになるかも。』

「そうなのか。」

『いつもあんな感じならよかったかもしれない。』

「たぶんめんどくさいんじゃないかな。」

『やっぱりあの人あんまり教師らしくないというか・・・。』

 多分その珍しい茎野先生はこういう時期だけなんだろう。

『帰りましょうか。』

「おう、帰ったらミー子の小論文を見てやらないとなー。」

『すみませんが頼んます。』

「任された。」

 靴を履き、学校の外に出る。

 やっぱり夏休みなだけあって、登校している生徒は少ない。

 ほとんど部活に入っているやつらだけだ。

『こんな暑いのによく走っていられるよね。』

「ミー子も毎朝走ってるよね。」

『私は朝早いし、その時間はそこまで暑くないよ。』

「俺は走る事すらしたくないからなー。」

『あらあらー?お腹がたるんできたんじゃなーい???』

 そういって俺の腹の肉をつまむミー子。

「ふ、太ってねーよ?」

『いやいや、前はこのようなお肉はなかったはずですがー。』

 ・・・しばらく体重計は乗ってないような気がする。

 あれ、俺マジで太った?

『これは一緒にランニング案件ですね。』

「えー・・・。」

『私、なっちが太るのは嫌ですよ。』

「ぱ、パティシエの人ってなんとなくぽっちゃりしてる人多くない?」

『偏見だ!!』

「すんません・・・。」

 いや、もし太っているのなら確かに痩せないとだ。

 走るのは嫌だけど、だらしない身体になるのはもっと嫌だ。

『夏休みに入ったことだし、私と朝一緒にランニングしてちょっと健康的な毎日を送ってみない?』

「・・・いったん考えさせて。」

『そんじゃちょっと用意してくるね。』

「了解。」


 あ、ほんとだ・・・確かに腹の肉が少し・・・。

 ・・・これは、あれだ。

 腕立てでもしよう。

 続ける方面で。

「筋力はあまり自信がないけど・・・よし。」

 思い付きで腕立てをやってみる。

「・・・20回で限界かよ。」

 俺の筋力低下が著しい。

 これは一大事だ。

『何してるの。』

「ウオオオオオオオオオオオオオッ。」

『驚きすぎでは。』

 この子どうやって音出さずに部屋に入ってきてるんだろう。

『筋トレ?』

「うん。」

『お腹を気にして?』

「うん。」

『かわいいね。』

「なんだとコラ。」

 俺はかわいくなんかない、はず。

「さっき鏡の前で自分の身体を見た時になんか焦った。」

『腹出てるとまでは言わないんだけどねえ。』

「思春期、気にしちゃう。」

『思春期w自分で言うとなんかおかしいねw』

「なにわろてんねん。」

『それはそうとなっち、私の小論文見てくださいよ。』

「おう。」

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