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Please speak!  作者: 長野原春
91/113

期末テストです 2

『なっち物理はOK?』

「OKじゃないに決まってんだろ。」

『昨日私が教えたじゃないですか。』

「そこだけはできる気がするよ。じゃあ逆に聞こう、公民OK?」

『できるわけねえだろぶっ飛ばすぞ。』

「ひどいんだよなあ・・・。」

 俺より返答が激しいんですが。

 さて期末テスト2日目、正直もういいや感がある。

 もうほんとに、ちゃっちゃとテストを終わらせてAO入試の練習したい。

 面接練習したい。

 あとクリーム絞り。

 そういえば小論文もやらないとじゃん。

 やべえやることいっぱいあるじゃん!!

 俺マジ大丈夫かな!?

「絢駒くんや、何を焦っているんだーい?」

 目の前の秋島が余裕そうな表情で聞いてくる。

「AO入試までにやることが多くて焦ってるんだよ。」

「大丈夫大丈夫ー。」

「他人のことだからそんなこと言えるんだよな!?」

「・・・怒った?」

「いや怒ってないよ?」

 あれ?怒ったと思われてる?

「我ながら無神経な発言でした・・・以後気を付けますー。」

「え、俺本当に怒ってないんだけど!?」

 ちょっと注目されてるんだけど!?

 ほら、ミー子もこっち見てる!

「なーんてね。あんまり焦るといいことないからさ、やらなければいけないことを頭に入れながら、余裕を持って行動することが大事だよー?」

「だましてたのか・・・。」

「人聞きの悪い、リラックスさせようとしてたんだよー?」

 逆にリラックスしなかったんだけど・・・。

「朝から疲れさせるんじゃないよ。」

「うわ、私からの激励を。」

「まああなたの言葉を頭に入れて行動しようとは思いますけどもね?」

「まあまあ、絢駒くんなら大丈夫だと思ってるからさ、のんびり行こうねー。」

「のんびりはしてられねえな?」

「じゃあ着実にね。」

「へいへい、ありがとうございます。」

 秋島からの助言を受け取り、教科書を見直す。

 着実にですか。

 まずはこのテストを終わらせてから、ってことですね。

 AO入試に必要なのは・・・。

 面接練習、小論文、クリーム絞りの練習。

 ・・・本番まであと1ヶ月ちょいだけど、やることはこの3つ。

 さっきは焦ってたけど、3つなら何とか・・・。

「受かったら花乃子(かのこ)おねーさんが絢駒くんにちゅーしてあげちゃう。」

「いらない。」

「ひどいなー。」

 ちゅーは彼女のものを希望します。

 ミー子に言ったら普通にしてくれそう。

「お、花乃子、絢駒くん、おはよー。」

 HR2分前になって五十嵐がやってきた。 

 そしてその直後に、

「おう、夏央おはよう!」

 京介もやってきた。

 こいつらいつも遅いな。

「五十嵐、今日は物理と公民だけど大丈夫そうか?」

「テスト?今日そんなのあったっけー?」

 あ、ダメだこいつ。

「お前は何しに学校に来たんだよ。」

「そりゃもちろん、絢駒くんに会うためだよー。」

 精一杯テンションを上げた感じで言う五十嵐。

 すごく無理してそう。

「へーへー。」

「つれないなあー。」

「彼女いますからね。」

「ではあたしの大人の魅力でー・・・。」

「・・・ハンッ。」

「今鼻で笑ったよねー!?」

「秋島の方が大人の魅力であふれてると思うぞ。」

「うっふーん。」

 あ、やっぱりねえわ。

「花乃子の大人の魅力って・・・やっぱり絢駒くん、おっぱいしか見てないねー・・・?」

「いやいや、そんなことはないぞ。」

 五十嵐と秋島が並ぶと秋島の方が大人っぽく見えるってことで。

「おはようございます!今日はテスト2日目ですね!皆さん油断せずに行きましょう!」

 先生が教室に入ってきた。

 俺は見逃さなかった。

 先生が入ってきた瞬間、相沢がこちらを見ていたことを。

 あの会話に入りたそうな表情を。

 先生、いいタイミングで来てくれました。


 さあて公民は余裕だ。

 どっからでもかかって来い。

「それではテスト開始です。皆さん頑張ってくださいね!」

 テストは50分だけど、公民のテストは毎回最初の15分くらいで終わる。

 すげえ簡単なんだよな。

 いや、俺ができてしまうが故の早さだな、ハッハッハッ。

 まあそんな感じで調子こいてるとアホみたいに難しい問題が出て分からなくなるとかよくあることだけど、公民ならそんなこともない。

 ほら、平気な問題ばかりだ。

 地方自治が行われる地域のまとまりは地方公共団体ですよね。

 ほら簡単だ。

 そしてその地方公共団体の政策は地方議会の議決により決まり、その地方議会が決める、その地域だけに適用される決まりを条例という。

 よし、これで合っているはずだ。

 地方議会の議員と、地方公共団体の首長は住民がそれぞれ選挙で行う、完璧だ。

 やっぱり公民は簡単だなあ!

 さて、ミー子はどうだろう。

 ちらっと見ると、ペンが止まっていた。

 昨日一緒に勉強したじゃないですか・・・。

 秋島はペンが動いている音がする。

 反対に、後ろからは何も聞こえてこない。

 五十嵐・・・。

 京介は・・・まああいつは平気だろう。

 見なくても分かる。

 ああ、どうせあいつは卒業するまで成績優秀者だろうからな。

 改めて考えるとそれってすげえよな。

 たゆまぬ努力の証ってやつだよなあ・・・なんかかっこいいな。 

 俺も何かしら頑張ればよかったかな。

 まあ、そういうことを今考えてももう遅いからな。

 これから頑張っていけばいいか、お菓子作り。


『どうでしたか。』

「簡単だったよ。ミー子はペンが止まってたな?」

『カンニングは先生に報告しないと。』

「いやちょっと待ってくれよ。」

 あらぬ疑いをかけられた。

 カンニングってその人を見ただけでアウトになるの?

 そんなことないよね?

 そしたらテスト中の視界はかなり固定されてしまうことになるよね?

『次は物理だが。』

「いや、そんなもん知らん。」

『昨日私と勉強したじゃないか。』

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。」

『ナンノコトカナー。』

 ミー子が自分の席に戻る。

 逃げたなあいつ。

「絢駒くん、あたしと一緒に堕ちていこうかー・・・。」

 いきなり後ろから手が伸びてきた。

「何のことだ五十嵐!」

「物理ー。」

「あんたは物理以外でもいろいろダメだろ!」

「ぐさり・・・。」

 五十嵐が机に突っ伏していた。

「どーせあたしはダメですよ・・・知ってる知ってる、赤点さえ回避すればいいんですものー・・・。」

「赤点にならないようにテスト前に私と勉強してるもんね~。」

「本当、花乃子はあたしの天使ー・・・。」

 突っ伏したまま言葉を発する五十嵐。

 その見た目怖いんです。

「では次は物理のテストの時間です!頑張ってくださいね!」

 ・・・あー、できるかなー。

「ではテストを前から後ろへ渡してくださーい。」

「はい絢駒くん、頑張ってねー?」

「自信ねーわ。ほれ五十嵐。」

「へーい・・・。」

 机に突っ伏したままテストを受け取る五十嵐。

 こいつこのままテスト解く気か。

「それではテスト開始です!」

 全く自信ないなー。

 ・・・あー、これはダメですね。

 これ半分解けるかな。

 ミー子は・・・すげえ、どんどん解いてるペンの動き方だ。

 さっきと逆じゃねえか。

 全く、公式とか覚えてないとこんなのできませんよ。

 できるところだけやるか・・・。


『おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーやああああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーー????ペンが動いてませんでしたよお~?????』

 精一杯煽ってきやがったこの野郎。

「何ですか。」

『さっきとは立場が逆でございますよおおおぉぉぉぉーーーー????』

 ここぞとばかりに最高ににやけ顔を作るミー子。

 あんた普段そこまで表情変わらないでしょうが。

「ほらほら、今日はこれだけなんだから早く帰りますよ。」

『やった、なっちと一緒にいる時間が多いぞ。』

「いつでもそんなに変わらない気が。」

『放課後の時間が長いのはいいことよ。』

「そうですか。」

『にしても先ほど手が止まっていた時はなにやら悔しそうな顔をしておりましたのう。』

「そこまで見てるのならもうカンニングと取られてもよいような。」

『私の席からなっちの回答なんて見えるわけないだろちょっとは頭使えよ。』

「ひどい言われようなんだよなあ・・・。」

 てかそれならさっきミー子のこと見てたのもカンニングにならんだろ。

 頭がそこまで回らなかったぜ。

『ほらほら、帰るよ。』

「そうだな。」

 夏休み前ということもあり、外に出ると夏の日差しが肌を容赦なく焼きにくる。

「だいぶ暑くなってきたな。」

『夏だからね。』

「でも俺の隣にいる人はまだYシャツが長袖なんだよなあ、黒いタイツも履いてるし。」

『ダレノコトカナー。』

「ミー子のことですよ。」

『なになに、なっちったら私の生肌を見たいと?』

「いや、見てて暑いなって。」

『そんなこと言われてもね、外であまり肌をさらしたくないのよね。痛くなるの嫌だし!』

 ミー子って肌弱かったっけ。

『まあ家に帰れば脱いでやるから、安心しなさいよ。』

「別に脱げというわけではなくてね?・・・あ、全部脱ぐなよ?」

『バレてたか。』

「ミー子ならやりかねないからな・・・。」

 さて、明日のテスト科目は何だったかな。

 ・・・英語と選択科目か。

 英語かー、やる気ないなあ。

『私も。』

「心を読まないでいただけますかね。」

 なんでこの子は俺の考えてることをこう簡単に読んでくるんだろう。

 ちょっと怖いですねえ・・・。

『まあ、さっさと帰ってイチャイチャしましょうよ。』

「勉強しないといけないよね?」

『じゃあ受験後に私とラブラブすると約束してくれ。』

「何をするか全く分からないんだけど。」

『ラブラブしてればいいんだよ。』

「抽象的すぎて分からねえ・・・。」

『約束してくれないのは分かった、とりあえず帰って勉強しよう。』

 何するか分からねえもん・・・。

「まあでも普通にイチャイチャするくらいなら・・・。」

『約束だぞ!私のこと精一杯大切にしてくれよ!』

「普段から大切にしてるつもりなんだが。」

『フフフ。』

 なんだこいつ。

「明日の選択科目、ミー子は何だっけ?」

『私の選択科目は保育。まあテストも簡単でしょう。』

「今まで選択科目の話しなかったけど、ミー子子ども好きだっけ?」

『まあそれなりにね。なっちは簿記だよね。』

「ほら、いつか俺らの店を開くかもしれないし、おぼえておいて損はないかなって。」

『そんな将来のことを考えてるのね、惚れなおした。』

「ハハハ。」

 筆記用具をカバンにしまい、学校を出る。

『英語は陽花に教えてもらってもよかったのでは。』

「バカ言え、京介が祈木の家に向かっていったのに行けるかっての。」

『あらあら、見てなかったわ。』

「俺らで勉強するしかないな。」

『簿記の勉強はしてるの?』

「あの授業は先生が怖いからちゃんと聞いてるんだ。」

『じゃあ成績は大丈夫そうだね。』

「むしろ英語はもうダメな感じだ。」

『安心して、私も死が確定してるの。』

「確定してるのか・・・。」

 もう捨ててるじゃん。

 そしたら今日はもう勉強しなくてもいいのでは。

 簿記の復習くらいでいいかな。

『てか今日はどうする?私の部屋に来る?』

「今日はやることないんだよな・・・。」

『なっちも英語はポイしてるのね。そしたらどうしようか。』

「どうしようとは?」

『一緒にいるかいないか。』

「本当に俺のこと大好きですね・・・。」

『もちろん。ずっと一緒にいたいですからね。』

「ミー子からの愛が半端じゃない。」

 でも重くはないですね、かわいい。

『もしかしてめんどくさいかな。』

「いやいや、そんなことはないぞ。正直に好意を伝えられるのは嬉しいし。」

『それならよかった。じゃあさ!』

「なんだ?」

『なっちの部屋に行きたい。ちょっと話したいことがあるんだ。』


 ミー子が俺の部屋にいる。

 それはもういつものことだし全く気にしないんだが……。

『ちょっと話したいことがあるんだ。』

 話したいことってなんだ・・・ないとは思うけど、別れ話だったりするのか・・・?

 俺がいつも煮え切らない態度をとっているからミー子がしびれを切らしたのか・・・?

 ベッドに座って考えていると、俺の隣にミー子が座ってきた。

 いつものようにくっつくのではなく、少しだけ距離を開けて。

 これは・・・終わったか。

『へへへ、どうだいなっち、お望みどおりにしてやったぜ?』

「え?」

 何のことか分からなかったが、ミー子が足をプラプラしていることで気づいた。

 黒タイツを履いていない。

「お、おう、生足だな。」

『生足って響きはそこはかとなくエロいですね。』

「そ、そうかな。」

『まあそんな話は置いといて、本題と行きましょうか。』

「・・・。」

『顔が緊張してますね。』

「ま、まあ・・・。」

 本当に別れ話だとするのであれば、俺は素直に受けるしかない。

 悪いのは俺だ。

 でもミー子はさっきずっと一緒にいたいと言ってたし・・・。

『今まで付き合ってから一緒にいたけどさ、まだ言ってなかったことがあってね。』

「言ってなかったこと・・・?」

『そう、私がいつからなっちのことを好きだったのか、ってね。』

 ミー子が、いつから俺のことを。

 わ、別れ話じゃなかった・・・。

 なんというか、バカなことを考えていたなあ・・・。

『といっても、いつから好きだったのかはもう忘れちゃったけどね。』

「最初から本題が破綻してるじゃんか。」

『そうだね。でも、なっちが病院に来てくれた時も、引きこもってる間に私の部屋に来てくれた時も、すごくうれしかったんだよ?』

「い、いきなり昔の話か。」

『何言ってんのさ、昔ってまだ7年前だよ?』

「7年も前じゃんか。」

『そうかもしれないけどね、私はあの時のこと、ちゃんと覚えてるんだから。』

 最近全く話題に出さなかった、小学校の話。

 ミー子がいじめられる前は、ほぼ毎日一緒に遊んでたっけ。

『あの時にはもうすでに、私はなっちのことが大好きだったのです。』

「それはあれか、幼なじみとしてか?」

『それもあるけど、でも一人の男の子として好きだったよ。』

「そうだったのか。」

『そう、2人で遊んでる時は、このまま一緒にいたいなとか考えてたし。』

「すげえ、俺より進んでるな。」

『ふふふ、小学校時代は男の子よりも精神の発達が早いのです。』

「そういう話はよく聞くよな。まあ小学校時代なんて、男子より身長の高い女子なんてゴロゴロしたしな。」

『私はそんなに大きくなかったがね。』

「確かに。」

 そういえばミー子はもともと身長が大きくなかったもんな。

 今はもう俺と20㎝も身長差があるし。

『私がこの話をしたのは初めてだったけど、なっちの話はもう聞いたからいいかな。』

「あれ、俺はその話したっけ。」

『ええ、なっちが私へ愛の告白をする際に聞かせていただきました。私のことをずっと意識しないようにしてたとか。』

「よく覚えてるな。」

『守るため、そんな資格ない、なんていって私の気持ちからずっと逃げてきたって言ってたもんね。』

「よ、よく覚えていらっしゃる・・・。」

『そりゃ覚えてるよ。ずっと好きだった人が私に告白してくれたんだもん、こんなにうれしかったこともないよ。』

 笑顔でそういうミー子。

 本当に本気で俺のこと・・・。

「・・・そういってくれてありがとう。俺もミー子のことが大好きだ。」

『へへ、私もだよ。』

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