期末テストです
『さて・・・。』
「ああ・・・。」
今回は気が楽だ。
問題はそっちじゃない。
『このテストが終わったら夏休みですよ。』
「俺らの勝負所だな。」
今日は期末テスト。
まあ一応頑張らないといけないが、今回のテストは評価には入らない。
そう、AO入試の評価にはな!
落ちたらやばいけど。
『夏休みに入ったら一気に入試になるよ。』
「怖いな。」
『怖がってたら落ちるよ。』
「もっと怖いこと言うなよ。」
一般で受けないといけなくなるじゃん。
俺そんなに頭よくないし、以前の成績がだいぶ足を引っ張っている。
どうしても落ちたくはないですね。
『一応落ちた時のために今回のテストはちゃんとやらないとね?』
「俺は入試に賭けますよ。」
『では落ちますね。』
「まじでやめてください。」
「え、何?夏央落ちるの?」
京介が入り込んでくる。
「いや、落ちないから。」
「絢駒くん、落ちるのー?」
「それは残念だねー。」
秋島と五十嵐も混ざってくる。
「落ちないっての!俺はお菓子の勉強するの!」
「でも落ちたら大変だねー。」
「勉強しといた方がいいよー?」
「落ちる前提で言わないで!?」
これはまずい!
みんなの雰囲気に押されて落ちるタイプのやつだ!
いやいや、俺は落ちないぞ!
「はーいおはようございます!今日はテストですよ!」
谷岡先生が教室に入ってくる。
「カンニングとかしないようにして下さいね!受験に響きますよ!」
するやついるか!?
受験に響くどころの話じゃないと思うんだ。
多分色々落ちると思う。
『なっち、カンニングは無しだぜ。』
「いや、あの、内申書に書かれると思うんだ。」
『私と一緒に専門学校に通えなくなるからな、気を付けるんだぞ。』
「まずする勇気がないわ。」
『そうだね、なっちだもんね。』
「どういう意味だコラ。」
『勇気がないもんね。』
「・・・。」
まあともかく、そんなことはしないぞ。
「花乃子、カンニングはだめだよー?」
「しなくてもいい点数取れるよー。」
「あらあら、それはうらやましいねー。」
「でしょー?」
そりゃうらやましいな。
でも俺知ってる、そういうやつは基本的に家とかで勉強を頑張ってる人たちだ。
「1限は現国のテストだってさ、絢駒くん、調子の方はいかが?」
教科書を開いてる俺に相沢が話しかけてきた。
「・・・。」
「お、これは『今勉強してるから話しかけないでくれ』ってやつだね?ということは絢駒くんは・・・あっ。」
「何察した感じに言ってんの!?別に悪くはないからね!?」
「教科書を広げているからといって無視する絢駒くんが悪いと思うんだよね、今のは。ちなみにこれが倒置法ね。」
「ええい気が散る!!」
「チルチル?」
「それはミチル!」
「あっはははは、楽しそうだね絢駒くん。」
「どこがー!?」
おかしそうに笑う相沢。
ひっぱたきたい。
「じゃあ、私は現国の勉強をするからね。邪魔しちゃだめだよ?」
邪魔をするだけして帰っていきやがった。
こんにゃろめ。
「絢駒くん、相沢ちゃんに遊ばれてるねー?」
秋島がこっちを向いてくる。
「おら秋島、勉強はどうした。」
「私はテスト期間中が最大限の休み期間だからねー。」
普段からやってる人は言うことが違いますね。
よく見ると京介も余裕そうにしている。
これができる者との違いってやつか。
ちなみに後ろのやつは別の意味で何もしていない。
こいつぁ諦めてますね。
「開耶ー?テスト大丈夫ー?」
「・・・あたしはスポーツ推薦組なのでー。」
スポーツ推薦は怪我した時にきついぞ。
「開耶がいいならいいけどー。」
「もし受験シーズンで危なくなったら花乃子に見てもらうつもりなのでー。」
秋島にめっちゃ迷惑じゃねえかそれ。
「危なくなる前に言ってねー。私は全然気にしないからねー。」
聖母かよ。
今回はそんなにしっかり勉強をしているわけではないから、最初にできるだけ覚えておかないと。
ほら、ミー子も黙って勉強してるし。
まあ今回はね、夏休み中に入試があるから勉強してる場合じゃないんだよね、仕方ないね。
「はーい、じゃあそろそろテストを開始するので、教科書などはしまってくださいねー!」
おのれ相沢。
一応ミー子の方を見てみる。
「・・・?」
反応したミー子が、どうしたとでも言いたげに首を傾げた。
そして、
「・・・(にこ)。」
いや、別にそういうことではなく。
平気かという質問の目線だったんだけど。
まあ伝わらないか。
テストが手渡される。
まあ今回は気楽にやりますかね。
「それではテスト開始です!カンニングは絶対ダメですからね!」
分かっとるわ。
そしてテストを開いてみて気づいた。
・・・あれ?内容難しくない?
なんか・・・あれ?解けないぞ?
・・・あ、勉強してないからか!
前はちゃんと勉強したから余裕だったのに!
すげえ、ちゃんと勉強しないとこうなるのか!
・・・と、感心している場合じゃない。
あんまり考えたくはないけど、もしAO入試で受からなかった場合は一般受験になってしまう。
そうなると受験勉強が必要になる。
今回わからないのはいいとして、AO入試で確実に受かるようにしておかないと。
正直、一般受験だとあまり自信がない。
専門学校の一般受験がどれほどのものかは知らないけど。
にしても・・・あのおじいちゃん先生、よくもこんな難しい問題を作りやがったな。
これは問題をちゃんと読まなきゃいけないじゃないか・・・。
いやまあ、現国のテストってこんなもんか。
俺自身文系だとは思うけど、テストでわざわざ長い文を読むのは嫌なんだよなあ。
ほら、なんか時間がもったいない気がするじゃん?
・・・まあいいや、ちゃんと問題解こう。
『ちゃんと勉強してない弊害が出ましたね。』
「だって入試の方で忙しいじゃん・・・。」
『忙しいって程忙しくはないと思うけど、まあでも勉強はしてなかったね。』
「なに、夏央テストできなかったの?」
「全然できなかったってわけじゃないけど・・・。」
「日頃からの積み重ねが大事なんだぞー?」
京介がドヤ顔で言ってくる。
この野郎。
「うっせ。俺はAO入試で受かるの。」
「そのセリフは盛大なフラグとして受け取ってよろしい?」
「よろしくねえよ!」
なんてこと言いやがるんだこいつは!
「絢駒くん、やっぱり落ちるのー?」
「浪人ー?」
またもや混ざってくる秋島と五十嵐。
俺はこいつらにいじられ続けるんだろうか。
「絢駒くん、あきらめて就職という手もあるよ。」
「しねえよ!」
「死ねだなんて、ひどいなあ。さすがの私でも泣いちゃうよ?」
最後に混ざってきた相沢が泣きまねをする。
「言ってねえよ!」
「えーん。」
顔を覆ってしゃがみ込む。
「あー、絢駒くんが相沢ちゃんを泣かせたー。」
「あー、それはさすがにどうかと思うー。」
「ウソ泣きだって分かるよな!?」
「ウソ泣きじゃないよ絢駒くん、私の顔を見てごらんよ。」
「泣いてねえじゃねえか!!」
やばい、振り回されてる。
助けてくれミー子!
ミー子は俺の視線に気づき、ニコッと微笑んだ。
そして、
『女の子を泣かせる彼氏は彼女としてどうかと思うなあ。』
「お前もか・・・。」
『そう、私はカエサル。』
「ブルータスだろ・・・。」
何で一瞬頭に走れメロスが浮かんだんだろう。
これ確かシェイクスピアだよね。
『さて、次は数学ですね。』
「やるか・・・。」
『ほれほれ、結局テストはどうなったのじゃ?』
「やっぱり勉強って大事ですね。」
『だよね。』
帰り道、ミー子と俺で期末テストを振り返っていた。
うん、テストって日頃の積み重ねが大事なんだね。
『ろくに復習はしなかったよね。』
「実技の練習しかしてなかったな。」
『実技の練習って響きなんかエロいね。』
「そう感じるのはミー子だけだね。」
何のことかさっぱり分からないね。
『まあ大丈夫、AO入試で受かっちゃえばいいんだからね。』
「俺も言ってたけどそのセリフやっぱりフラグくさいよな。」
『くさいね。』
絶対落ちたくないけど。
『明日もテストですが。』
「勉強するか・・・?」
『なっちはできるんじゃない?公民だし。』
「まあそこは勉強すればいいけど・・・。」
『私は一応物理の勉強するよ。』
俺もミー子も今日は勉強か。
『今日どうするよ?会わずに勉強する?それともどっちかの部屋で勉強する?』
「んー・・・。」
勉強中はあまりしゃべらないけど・・・。
『なっちが決めないなら私が決めよう。私の部屋に来い。』
「瞬間的に決まったな。」
『来てくれや。』
ミー子が手を引っ張るので、そのままミー子の家へ連れていかれた。
『へいらっしゃい!』
「居酒屋かな?」
『まあ座ってくれよ。』
「へいへい。」
小さいテーブルの前に座る。
ミー子の部屋はいつもの柑橘系の匂いが漂っている。
『ほれやるぞ、私は物理、あんたは公民だ。』
「一緒にいる意味あるか・・・?」
『私が幸せだ。』
「お、おう・・・。」
ミー子にそう言われちゃ仕方ないので、テーブルに教科書を広げる。
『物理はどうするんだい?』
「今回はいいかなって・・・。」
『じゃあもし一緒に入試落ちたら公民と物理教え合おうな。』
「そうだな。」
どっちかが落ちるとか可能性もあるけど・・・。
いやいや、今はそんなこと考えないぞ。
『さてさて、やりますか。』
「そうだな。」
『無言タイムになっちゃうけど、すまんね。』
「慣れていますよ、何年の付き合いだと思ってるんですか。」
昔から何かをするときは無言タイムだ。
夕飯を作っている時もお菓子を作っている時も、いつも無言タイムだ。
『何か話せたらいいんだけど。』
「いつか話せるさ。」
「・・・ん、んん、ぁ・・・。」
「声は出てるな、まだ会話は無理かい。」
「・・・ん。」
声・・・というか、音を出すので精一杯って感じか。
『ちゃんと話せるようにするから、もうちょっと待っててね。』
「おう、楽しみにしてるよ。」
無言の勉強が始まる。
大丈夫、公民は暗記みたいなもんだ。
勉強すれば公民はちょちょいのちょいだ。
テーブルの上でコト、という音がした。
見ると、麦茶が置かれていた。
「おう、ありがとな。」
「・・・(こくり)。」
ミー子が座って、勉強に戻る。
おお、いつも多く使っているヘアピンの影響か、髪が全然邪魔になってないですね。
期末は範囲広いからな、今日は結構かかるかもしれない。
まあ大丈夫、明日は公民と物理だけだから今日は公民の勉強だけで十分だ。
物理は捨てたから。
にしても、今回のテストが終わったら入試に本腰を入れないといけないな。
絶対に落ちたくないからな。
面接練習とクリーム絞り。
それを極めればいける。
あと1ヶ月くらいだからな。
『ずっと私の方を見てなにしてるの。』
「お、すまん、入試のこと考えてた。」
『入試かー、あと1ヶ月だもんね。』
「そうなんだよ。入試の予行練習も頑張っておかないとな。」
『テスト終わったらクリーム絞りですな。』
「まあ、そういう感じか。」
『じゃあ今は目先のテストを頑張りましょうや。』
「そうだな。」
ミー子の部屋で勉強すること2時間。
「そろそろ疲れたな・・・。」
『そこのベッドで寝てていいよ。』
「いや寝ないけども。」
現在時刻は午後6時。
そろそろ夕飯を作らないといけない時間かな。
「今日はミー子の家で作るか。」
『そんじゃ私の家で食べてけ。』
「じゃあ春姉に連絡しとくわ。」
春姉に連絡を済ませ、台所に立つ。
『今日はこの後も勉強するから簡単なものにしましょうよ。』
「何があるんですかね。」
『冷蔵庫の中に豚肉ともやしがあったから炒めましょう。』
「簡単ですね。」
『楽はいいこと。』
簡単に炒めて味付けをする。
『まあ凝ったものを作らなくてもね、これだけでおいしいからいいんですよ。』
「まあ確かに日ごろから凝ったものを作る必要はないかな。」
『お菓子凝ってればいいと思いますよ。』
「そうだな。」
『よし、じゃあ食べるぞ。』
「うむ。」
白飯と豚もやし炒め。
こんなに楽な夕食もない、最高だ。
「うまいか。」
「・・・(こくり)。」
「そりゃ何よりだ。」
早く食べて片付けて、勉強の続きでもしましょうか。
食事も終わり、勉強を再開してから1時間。
物理の勉強を終えたらしいミー子が話しかけてきた。
『なっちは全部の範囲終わった?』
「もうちょっとかな。」
『じゃあ私は隣に座ってなっちの勉強しているさまを見よう。』
「つまり妨害しに来るわけだな。」
『人聞きが悪いなあ。』
そういって、ミー子が隣に座る。
『なっちの勉強を見てれば私も少しは公民を覚えられるじゃないですか。』
「自分で勉強した方がいい気が。」
『あんま細かいことを気にしてるとモテないぞ。』
「ミー子にモテてるからいいんだよ。」
『失うよ。』
「怖いこと言うね!?」
ミー子を失ったら俺はどうしていいのか分からない。
仕方ない、まあ邪魔はしてこないだろうしいいか。
『おっ、許してくれたらしい。』
「目の前にケータイを持ってくるのはやめてくれ。」
『ほら、彼氏の気を引きたいじゃないですか。』
どうしよう、ふつうに邪魔してくるんだけど。
「俺の成績を下げようとしている?」
『そんなことはないが。』
そういって、何かに気付いたのかもう一度ケータイを打つミー子。
『ああごめん、邪魔でしたね。』
「ほんと、もうちょっとで終わるからさ。」
『じゃあなっちのもあまり見れないということですね。』
「俺の勉強ノートくらいいくらでも見ていいからさ。」
『でもタダ見だとなんか悪いっすね。』
「今思いっきりタダ見してるわけだが。」
『そうだった!』
「・・・。」
この子アホなんだろうか。
『今めんどくせえなコイツって思ったでしょ。』
「ミー子って案外アホなんじゃって思ってた。」
『演技ですよ、え・ん・ぎ。』
「・・・。」
『あ、今度こそめんどくせえって思ったね?』
「さすが。」
『また明日。』
「おう、じゃあな。」
ミー子の家から出て、自分の部屋に戻る。
漫画にありがちな、窓を経由すればすぐ幼なじみの部屋だ、なんてことはない。
とはいえ、家は隣だからね。
「あ、なつくんお帰り。お風呂空いてるよ。」
ちょうど風呂上りっぽい春姉が出迎えてくれた。
「ただいま、早く服着て。」
春姉は何とバスタオルだけという刺激的な格好をしていた。
「もう夏でしょ?暑くてさあ。」
「男子高校生が家にいることを忘れないでいただきたい。」
「やだなつくん、私をそんな目で?」
「そんなことはないが。」
「男子高校生として大丈夫かな・・・?」
「普通に男子高校生だから早く服着てくれよ!!」
「わ!なつくんが怒った!」
春姉が階段を上がっていく。
ダメダメ、階段を上がっていく途中とか絶対見ちゃうから。
男子高校生だもん。
見ない、見ないですよ。
大丈夫、白いお尻なんて見えてないので。
「あら、お帰り夏央。」
「ただいま。」
母さんがリビングで夕飯を食べていた。
「春女のをガン見しちゃダメよ?」
「し、してねえよ?」
「顔赤いって。」
「・・・いや、家の中でバスタオル一枚でいられてもね?」
「まあさすがにあれは夏央の目に悪いかね。」
「年上の女性ですからね。」
「家族でしょうが。」
「ほら、男子高校生だから。」
多分姉がいる男子は経験あるんじゃないかな。
・・・ないかな?




