一緒に夕食です
「はるさめってこんなにお酒弱かったっけ・・・?」
カーペットで横になって寝てしまった春姉を横目に、紗由さんが困った表情を浮かべる。
「クリスマス辺りに春姉の酔っぱらったところ見たよね?」
「いや、ここまで弱いと思ってなくて・・・。」
「春姉と一緒に飲みに行くことは?」
「さすがに外で酔わせるわけにもいかないから、私の家以外ではしてない・・・。」
外で酔わせないというのはいい判断だ。
だが・・・。
「・・・(つんつん)。」
「・・・くぅ~。」
ミー子がつついても起きない春姉。
これは・・・。
「まだレポートも終わってないんだよね・・・これどうしよう。」
「なんで終わってから飲まなかったんだ!!」
「チーズケーキを用意しちゃったなつおくんのせいだな!うん!」
「俺のせい!?」
『どっちかっていうとハルさんにお酒を飲ませた紗由さんの方が。』
「た、太郎ちゃん違うよ!」
いや絶対そうだろ。
「とりあえずはるさめは部屋に移動して・・・なつおくん、手伝ってもらえる?」
「仕方ないな・・・。」
どっちかというと紗由さんと一緒に移動させるより俺だけで移動した方がきっと早いので春姉を背負う。
『今さりげなくやっぱりミー子よりは大きいなとか思ったでしょ。』
「思ってない。」
思った。
紗由さんだったらやばい。
「・・・(じー)。」
「さ、春姉を運ぼう。」
ミー子からの視線が痛い。
「なつおくん、おっぱい大きい方が好きなの?」
「紗由さんまでそういうこと言いだすのやめてください。」
「自分で言うのもなんだけど、私大きいよ?」
「そういう問題じゃないの!!」
とっとと春姉を運んでやろう。
それに、俺が好きなのはその人の見た目に合ったおっぱいだ。
いいの、ミー子はあれで。
春姉もこれで。
「なつおくんも男の子だね?」
「当たり前でしょ、男子高校生なんだから。」
「じゃあ次の誕生日プレゼントはエロ本だね!」
「いらねえよ!!」
『紗由さんは?』
「春姉の部屋でレポートの続きやるってさ。」
『酒飲んだ後なのによくやるね。』
「確かにな。」
俺がソファに座ったところで、ミー子がその上に寝転がる。
「また膝枕か?」
『チーズケーキ、美味しかったね。』
「そうだな。」
『ハルさんも紗由さんも笑顔だった。』
「だな。」
『やっぱりいいね、こういうの。』
「確かにな。」
『やっぱり私たちがやることは決まってるね。』
「おう。」
「夕飯ごちそうになっていいの!?」
結局帰らなかった紗由さんに夕飯を食べていくよう声をかけた。
「春姉まだ起きないし、今日は父さんと母さんが一緒に夕飯食いに行ってるからね。」
「太郎ちゃんと2人きりじゃなくていいの?」
『いいですよ、たまには。』
「じゃあごちそうになるね!!!」
紗由さんが嬉しそうにソファに座った。
「春姉の分も作っておいておくか。」
『というか夜になってもいまだに起きないってどんだけなのよ。』
「やっぱ春姉に酒飲ませるとしたら夜に最低限の量だな・・・。」
『でも男からしたらいい体質よね。』
「だから外では絶対飲まないようにって話を前にした。」
『だろうね。』
さすがにあの弱さは心配すぎる。
「紗由さん、外で春姉に酒は絶対に飲ませないでくださいね。」
「任せろー!」
『そういえば紗由さんが帰らなかったのって課題の途中だからだよね?』
「そうだな。」
『ハルさん、あとで残った課題で地獄を見るのでは。』
確かに、そろそろ起こさないとまずいかな?
「大丈夫、はるさめが寝ちゃったのは私のせいだし、私がはるさめの分もやっておいたから!」
ああ、だから遅くなったのか。
『紗由さんって友達思いよね。』
「俺もそう思う。」
「やだ、褒めなくてもいいよ~。」
紗由さんが頬に手を当てて体をくねらせる。
動きが非常に気持ち悪いです。
『芋虫の方が1000倍くらいマシな動きしてた。』
「そんなに気持ち悪かった!?」
俺から見てもだいぶ気持ち悪かった。
『私も変な動きできるよ。』
「やらなくていいから夕飯作るの手伝って。」
『ウィ。』
ミー子が台所に入ってくる。
「なんか一緒にキッチンに立ってると新婚さんみたいだね!」
「そっすかね?」
『むしろ倦怠期の夫婦。』
「いや、倦怠期なら一緒に台所には立たねえだろ。」
『じゃあやっぱり新婚だ。』
「もうそれでいいよ。」
『よっしゃ、確定ルート入ったぜ。』
「何のだよ。」
『なんでしょうね。』
教えてくれないと気になるんだが。
「あれ、なつおくん分からないのかな?」
「なんでそんなニヤニヤしてるんですか?」
「あー、そうかー、分からないかー。」
「ムカつく。」
ちょっとちょっと、教えなさいよ。
「おおー!なつおくんも太郎ちゃんもやっぱり料理上手だね!」
「もう作り始めてから長いですからね。」
『いつの間にかなっちに抜かされた気がしてならんのだが。』
「そんなことはないと思うぞ。」
「いいなあ・・・私も一人暮らしだし料理くらいちゃんとできるようにしておかないと・・・。」
俺とミー子、そして紗由さんで夕飯という珍しい組み合わせ。
なんかあれだ、シェアハウスみたいな感じ。
「でもうちにいつもなつおくんがいてくれたら私が料理しなくてもよくなるね・・・。」
『私からなっちを奪うな!!!』
「そんなつもりないよ!?」
ミー子はずいぶんと紗由さんに対して敏感だな。
「じゃあ食べるか。」
『そうね。』
「食べよう!」
食卓を囲んで、さあ夕飯だ。
「「いただきます!」」
「・・・(いただきます)。」
さて、ここからはミー子が無言の時間だ。
「んー!おいしいー!」
「そりゃよかったです。」
普段ミー子と食事をしている時はミー子が黙るので会話はあまりない。
今回もそれが出てしまった。
「・・・。」
紗由さんが俺とミー子を交互に見ながら食べる。
ここに春姉がいたらもうちょっと会話はあったかもしれない。
「静かだね?」
ミー子が顔を上げた。
俺も箸を止め、紗由さんの方を向く。
「ミー子は食事中はケータイを使わないもんで。」
「えらい!・・・けどなんか寂しいね。」
『一人暮らしだから普段もっと静かなのでは?』
ミー子が手話で話す。
「・・・ん?」
「一人暮らしなんだから普段もっと静かなんじゃない?ってミー子が言ってますよ。」
「え?ああ!手話ね!確かにそうなんだけどね!ほら、友達の家だし、もうちょっと会話とかあるのかなって!」
「春姉がいればもうちょっと会話はあったかもしれないです。」
『なっちと食べてる時は大体ほとんど話しませんよ。』
「一緒に食ってる時はほとんど話さないですね。」
「そうなんだね、ちょっと意外かも。」
「まあ、飯中に話さなくてもそれ以外で話せばいいですから。」
「・・・ん。」
でも最近は少しだけ声も出るようになってきたからな、ちょっとくらい話しかけてみるのもいいかもな。
どうせ「ん」としか言わないけど。
『皿洗っとくね。』
「おう。」
「太郎ちゃん、いいお嫁さんになるね。」
皿を洗うミー子を見て、紗由さんが言う。
「ミー子はいい嫁になりますよ。」
「・・・。」
ミー子がこちらを見つめてくる。
あ、皿洗ってるから言いたいこと言えないのか。
さて、なんて言ってるのかな?
「・・・。」
「・・・。」
「なつおくん?太郎ちゃん?」
あ、ダメだ、何を言いたいのか分からねえ。
「・・・ふん。」
そっぽ向かれちゃった。
「なあなあ、何を言いたかったんだよ。」
「・・・(にや)。」
ミー子が少し笑った。
「教えてくれないのかよ。」
「・・・ん。」
教えてくれないらしい。
「なんかイチャイチャしてるなー、私もいるんだぞー?」
「完全に忘れてましたね。」
「お姉ちゃんを忘れるなんてひどいぞー!」
紗由さんが立ち上がった。
「じゃあ紗由さんはミー子が何を言おうとしたのか分かります?」
きっとわからないだろう。
なんたって俺が分からないんだからな。
「私には分かるよ~?」
「なんだと!?」
「ふっふっふ、なつおくんは女心に疎いんだね~!」
「え、ええ・・・?」
なんて言いたいのか教えてくれよ。
「じゃあお皿洗いで動けない隙に、私がなつおくんにいろいろしちゃおうかなー!」
紗由さんの手が這い寄ってくる。
「・・・(がたん)!」
「おおう、太郎ちゃんそんなに怒らなくていいよ。」
「・・・(ふるふる)。」
怒ってるわけではない?
となるともしかして、動揺した?
・・・もしかして?
「ミー子?」
「・・・(すっ)。」
「包丁を向けないでくれないかな!?」
絶対に届かないけど、ちょっと焦った。
「・・・ふん。」
ミー子が皿を置き、包丁もしまった。
そして、キッチンから戻り俺に飛びついてきた。
「なんだ!?」
『彼女の目の前で他の女とイチャイチャしやがって。』
「し、してない。」
『してなくないぞ。』
「ご、ごめんて。」
ミー子がすげえ力で押してくる。
そのままソファに押し倒されてしまった。
「おお、太郎ちゃん大胆!」
『ほら、何か私に手を出せよ。』
「何するんだよここで。」
『何かするんだよ!!』
「そんなこと言われてもな!?」
とりあえず頭を撫でる。
「・・・ん。」
ミー子の頬が少し緩む。
これでいいのかな?
「お、お姉さんはこれ以上見てられないぞ!なんだこの甘い空間は!」
「・・・(にや)。」
「太郎ちゃん!?」
ミー子が紗由さんに勝利の笑みみたいなものを向けられたらしい。
『よし、満足したぞ。』
「そ、それは何よりだ。」
『ちなみに、本当に何を言いたかったか分からなかったの?』
「・・・すんません、分かりませんでした。」
『このにぶちん、ばか、あほ。』
「申し訳ない。」
『なっち、さっきなんて言ったよ。』
「え・・・?」
さっき?
さっき、何言ったっけ・・・?
『紗由さんに言われてなんて言ったんだよ!!』
「怒ってらっしゃる!?」
え、何!?
『オラオラ!紗由さんが皿洗いをする私を見てなんて言ったんだよ!!』
「・・・太郎ちゃんはいいお嫁さんになる・・・だっけ?」
『そうだよ!それになっちはなんて答えたんだよ!!』
「み、ミー子はいい嫁になりますよ、だっけ?」
『他人事みたいに言ってんじゃねえよ!私がなっちの嫁になるんだよ!!』
「・・・っ。」
言葉が出なかった。
『言わせんな恥ずかしい。』
「ご、ごめん。」
ミー子が顔を赤くしてそらす。
・・・やばい、かわいい。
「なつおくん、太郎ちゃん、私がいることも忘れないでね?」
「いやごめんなさい、完全に忘れてました。」
「ちょっとラブラブ過ぎない!?こんな展開、今夜はベッド直行でしょ!?」
『私たちは清い付き合いだよ!!』
「ええぇ!?」
紗由さんが驚く。
そんなに驚くもんかね。
「なつおくん、さすがに嘘でしょ?」
「いや、俺たちまだ高校生なんで。」
大学生の考えってみんなそんなもんなんだろうか。
『というか紗由さんも意外とそういうこと考えるんですね。』
「ま、まあ・・・大学生だからね。」
『なっち、大学生怖いね。』
「怖いな。」
「多分もうちょっと年食ったらそんなこと言えなくなるよ。」
年取りたくなくなってきた。
『でも私たち専門学校行くしそんな暇ないかもしれないよね。』
「確かにな。」
「忙しいと人肌恋しくなるもんよ・・・。」
『彼氏いないのに?』
「そういうこと言っちゃいけないと思うんだなあああ!」
人肌恋しいのか・・・。
「紗由さん、そういう経験あるんすか?」
「まだ処女だよ!!」
カミングアウト。
いいのかそれ。
「いいもん、はるさめも仲間だもん・・・。」
『そういえばそんな話聞いたことあるな。』
春姉・・・。
『まあまあ、でもそれだけがお付き合いじゃないですし。』
「確かにな。」
「抱きしめてもらえるだけでもいいんだよ?カモンなつおくん。」
紗由さんが腕を広げる。
「・・・(ずん)!!!」
ミー子がそこに頭から突っ込んでいった。
「ぐへぇ!!」
「ミー子!?」
『そのおっぱいでなっちを篭絡する気か!このビッチ!!』
「ひどい言われようだ!?」
さすがにビッチ扱いはショックだったらしい。
「違うよう・・・なつおくんのことそんなエロい目で見てないもん・・・弟みたいなもんだもん・・・。」
『でも結構なっちのこと大好きですよね。』
「そりゃ好きだけどさあ・・・。」
紗由さんがこちらをちらっと見る。
『なっち、惑わされるんじゃないぞ。』
「大丈夫だから。」
『あの場で紗由さんが脱いだら私に勝ち目はなかった。』
「脱いだら通報するから。」
紗由さんが春姉の部屋に戻った後、俺とミー子は俺の部屋に来た。
『はるさめー?まだ寝てるのー?』
隣の部屋からは紗由さんの声が聞こえる。
『ハルさんとなっちの部屋って、壁薄いよね。』
「まあ、音が聞こえるよな。」
『これはあれだね、私となっちが何かしたらバレるね。』
「そりゃもう、バレバレだな。」
『やだこわーい。』
姉にバレた後はもっと上の姉にバレてそして親にバレるまでが予定調和だ。
最後には夕飯に赤飯が出る、最悪だ。
『つまり私が声を出さなければいいと。』
「たぶんそういう問題じゃないと思うんだ。」
というかミー子はほとんど声が出ないでしょうが。
「・・・んっ。」
「それはただの咳払いだ。」
「んっ・・・。」
「あ、そっちのほうが何となくエロい。」
声ではなく、鼻から漏れるような吐息だ。
「・・・(にやり)。」
「俺はなびかないぞー。」
『だからなっちなんだよ。』
「意味わからない悪口やめてね!?」
『いい感じの雰囲気じゃないですか?』
「そんなことないと思うぞ?」
というかきっとそんなことない。
てかいい雰囲気ってなんだ。
『私は、待ってるけど。』
「・・・もうちょっと待ったままでいてくれ。」
『私は心が広いからね、いいよ。』
「ありがとう。」
いつも待たせている気がする。
このまま待たせたままでいいんだろうか。
俺もそろそろ、心を決めるべきなのかな?




