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Please speak!  作者: 長野原春
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うるさい人登場

 木通(あけび)駅に着いてから、紗由さんに喫茶店に連れ込まれた。

 帰らせてくれるかな、これ。

「ささ、今日はこのおねえさんのおごりだから、好きなものを選んでいいよ!」

『なんと。』

「いいんですか?」

「いいって言ってるじゃん!そーゆー日本人的な遠慮は年上に対して失礼だぞ~?」

 あんたも日本人でしょ、とは言わない。

「すみませーん!アイスココアとショートケーキください!なつおくんと太郎ちゃんは?」

「あ、じゃあ俺もアイスココアと・・・ガトーショコラでお願いします。」

『アイスココアとクレームブリュレで。』

 アイスココア率高いな。

 まあ、俺もミー子もコーヒーはあまり飲まないからな。

 紗由さんも飲まないのかな?

 ビール飲んでたような気がするけど。

「さてさてなつおくん、私の出身地は知っておるかね?」

 始まった、紗由さんの話がはじまりました。

「以前北海道だ何だって言ってたような気が。」

「そうそう!そんでね、電車に乗るのならぜひ行ってもらいたいところが!」

「いやまだ電車で行くとは決まってませんが。」

「旅行なら電車なのー!そう決まってるのー!」

 どうやら決まっているらしい。

 そりゃ参ったな。

「それでね、稚内に行くには宗谷本線・・・というか、特急宗谷か特急サロベツに乗ってもらわないと行けないんだけど、その前に是非とも行ってほしい駅があるんだよ!」

「その前に特急宗谷やサロベツなる列車を我々は知らないわけですが。」

「おっとそうだった!これだよ!」

 写真を見せてもらう。

 なんか割とずんぐりした見た目だけど、これで速度が出るんだろうか。

『その是非とも行ってほしい駅というのは?』

「深川っていう駅なんだ!そこで骨董品に会えるよ!」

「骨董品・・・?」

「そう!その名もキハ54!留萌本線っていう電車なんだ!」

 こっちも写真を見せてもらう。

 うわ古そう。

『こういうのオンボロって言うんですかね。』

「違う違う!骨董品だよ!いつなくなっちゃうかも分からないんだから!」

 骨董品という感覚は俺にはちょっとわからないですね・・・。

「ぜひともこれに乗って留萌まで行ってほしい!いや増毛まで!」

「稚内行きたいって言ってるのに思いっきり進路脱線してるじゃないですかー。」

『というかニュースで見たけど増毛って』

「それ以上言わないで太郎ちゃん!」

 紗由さんががっくしうなだれた。

 そういえば俺も何かしらのニュースで見たことがあるような気がする。

「まあそこは人が少ないからねー・・・仕方ないねー・・・。」

「お待たせしました。アイスココア3つと、ショートケーキとガトーショコラ、クレームブリュレでございます。」

 テーブルに頼んだものが置かれる。

「紗由さんは北海道の電車を撮りに行ったりはするんですか?」

「帰省するときは大体撮りに行ってるかなー。あとは普段いかないところまで旅行に行ってみたり・・・あ、こんな写真もあるよ!」

 そういってケースから写真を撮り出す紗由さん。

 いつも写真を持ち歩いているのか・・・。

 夜、雪が降っている中、さっき紗由さんが言ってたキハ54?っていう電車が止まっている。

 薄暗い駅の明りと1両しかない電車と雪が、どこか寂しさというか、田舎っぽさを感じさせる。

「ここはどこの駅なんですか?」

「稚内!」

「その電車稚内でも見れるんだ!?」

 別に深川ってところで降りなくてもいいじゃん!

 稚内着いたら待ってるだけでいいのかよ!

「まあ稚内でもいいんだけどさ、私増毛までいったことはないからさ!」

「ただ紗由さんが行ったことないから行って欲しいだけじゃねえか!」

『なっちの敬語が消えた。』

「まあでも、私はこういう雪が降る夜に来る電車を撮るのが好きなんだよね!他にもあるよ!」

 カバンの中からアルバムを取る出す紗由さん。

 何で電車の写真が入ったアルバムを持ち歩いているんだ・・・。

「写真はまだまだ家にあるから、見たくなったらうちに来て!」

『そういってなっちを家に連れ込むつもりだな!この変態!』

「へ、変態!?」

 ミー子の発言に、さすがの紗由さんも驚く。

『なっちは渡さないぞ!私が守るぞ!』

「そ、そんなことしないから!なつおくんは友達!」

『男女間で友達は成立しないとテレビで見た!』

「そんな理不尽な!?」

 いかん、ミー子が暴走している。

「落ち着け!」

『落ち着いた!』

「絶対落ち着いてねえ!」

『だって怪しいもん!紗由さん絶対なっちのこと好きでしょ!』

「えっ!?す、好きは好きだけど、そういう好きじゃないよ!友達!」

「・・・(じ~~~~~)。」

「と、友達だからね!」

 紗由さんがそういうと、ミー子は警戒を解いた。

 さすがに紗由さんもそんな気はないだろうに・・・。

「あ、そういえばなつおくんに見せるの忘れてた!」

 そういって、カバンをあさり始める紗由さん。

 あのカバンの中に、どれだけの荷物が入ってるんだろう。

 あまり気にしてなかったけど、結構大きいカバンだ。

「前になつおくんと観光列車の写真を撮りに行ったじゃん?」

「行きましたね。」

「見て見て!見事雑誌に写真が掲載されました!」

「おおおー!」

 デカデカと雑誌に紗由さんの撮った写真が載っている。

 残念ながら俺の写真はない。

「さて、なつおくんには約束を執行してもらうよ!」

「え、何か約束したっけ。」

「忘れたのー!?」

 紗由さんが立ち上がる。

「いや嘘です。チーズケーキでしたっけ。」

「そうそう!今度作ってね!」

『なに、紗由さんとそんな約束してたの。』

「ああ、まあな。」

『それなら私も手伝う。練習にもなる。』

「そうか、じゃあ頼むよ。」

「やったー!手作りのチーズケーキだー!」

 紗由さんが大げさに喜ぶ。

 うーん、確かにこれはかっこいい写真だなー。

「俺の写真、何か言われました?」

「特に何も言われてないよ。実力の世界だからねえ。」

 紗由さんにはいい写真と言われたけど、まだまだってことか。

 うーん、そう言われるとなんだか燃えてくるな。

 俺も写真がんばってみようかな?

「・・・んー。」

『何?』

 ミー子の方を見てみる。

 うん、今はやめておこう。

 目の前のことが大切だよな。

「まあ、ミー子が大切だよなって。」

『なんだいきなり。』

 ミー子の顔が一瞬赤くなった。

「ちょーっとー、いきなり目の前でイチャイチャされても困るよー?」

『私の彼氏ですからね。』

「太郎ちゃん意地悪だなー!」

『私は意地が悪いんですよ。』

「なー!覚えておくぞー!」

 

「ってまだついてくるんですか。」

「これからはるさめの部屋で一緒にレポートだよ!」

「うちに来るのか・・・。」

 うるさくなりそうだ。

『じゃあ私もなっちの部屋に行こうかな。』

「何かすることでもあるのか?」

『特にはないけど、声出すよ!』

「出せるかなー?」

『やる!やるから!』

「楽しみだなー、ミー子のろ」

『それ以上言うな。』

 止められた。

 やっぱり気にしているらしい。

「なつおくん、何の話?」

『内緒です!』

「えー、なつおくんに聞いてるんだけどなー!」

「えーと、ミー子が内緒って言ったから内緒で。」

「なーんでよー!」

 残念ですな。

「じゃあなつおくんの部屋ではるさめと一緒にレポート作る!」

「よしてくれ。」

『そんなことしたらなっちは私の部屋に連れていきます。』

「独り占め!太郎ちゃんずるいなあ!」

『ずるくないですよ。私はなっちの彼女ですから。』

 ミー子が勝ち誇ったような顔になる。

「さすがに俺も最優先はミー子ですね。」

「がーん!姉は優先してくれないんだね・・・。」

 そもそもあなた姉じゃないですよね。

「にしても太郎ちゃんって、普段からなつおくんの家にいる感じなの?」

 ミー子が俺の方を向く。

「・・・(じー)。」

「なんすかね。」

『いや、言われてみれば大体どっちかの家にいるよね。』

「そりゃ家が隣同士だしな。」

「幼なじみってずっるいなー!」

『紗由さんにはいないんですか?』

「私かー、いたんだけどなー。」

 けど、か。

 なんか引っかかる言い方だな。

『何かおありのようで。』

「んー、私の幼なじみはねー、高校で不良になっちゃってさー。」

 不良か、そりゃよくないな。

「そんで女の子を家に連れ込んじゃってねー。ほんとバカな話だよね。」

 確かに・・・。

「私はそんな男は嫌だし、なつおくんみたいな人が同級生にいたらなー。」

『やっぱり紗由さんってなっちのこと好きですよね。』

「んー、そう言われちゃうと好きかなー。」

 そう言われるとちょっとうれしい。

 付き合うとかそういう意味じゃないけど、好意的に思われるのはいいことだと思う。

『なっち、浮気はダメですよ。』

「そんなことしません。」

「なつおくん、私のこと好き?」

「友達としてなら好きです。」

「愛の告白をされちゃったよ太郎ちゃん!」

「話を理解していないようですね!?」

『なっち!!!』

「ミー子も乗るなー!!!」


 ドドドドッっと階段を上がっていく紗由さん。

『ヘェェェェェェェェェイはるさめえええええ!!』

『わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 上から大きな声が響く。

『これ隣の部屋にいたら私たちにまで被害が及ぶんじゃ。』

「いやどうだろ・・・レポートやるって言ってたし、静かになるんじゃないか?」

『それならいいんだけどさ。』

「さて、今日もやってみるんだろ?」

「・・・(こくり)。」

 ミー子が隣に来る。

「耳元まで寄せる必要はないと思うんだけど。」

『聞こえないかもしれないじゃん。』

「・・・・・・ねっ。」

「今普通に言葉を発しなかったか。」

『いや今のが限界。』

「つか普通に聞こえたぞ。結構回復してきてるんじゃないのか?」

『これが限界なんだって。これ以上はきついよ。』

「今思いっきり声が出てたと思うんだけどなあ。」

『出せるには出せるんだけど、言葉が続かないのよ。』

 そりゃめんどくさい。

「一語以上は発音できないってことか?」

「・・・・・・・・・そぅ。」

「いや今普通にそうって言っただろ。」

『超短い系の単語ならなんとか。』

 なんとかなのか。

 でも、だいぶ声が聞けるようになったな。

『早くちゃんと喋れるようになりたいよ。』

「ちなみに無理やり話そうとするとどうなるんだ?」

「・・・こぅ・・・・・・。」

 多分「こうなる」って言いたかったんだろう。

 「う」から先が掠れて音が消え、ミー子が痛そうにしている。

「水いるか?」

『ちょうだい。』

「にしても、声が出るようになったのってだいぶ唐突だったよなあ。」

『なっちが無理やり私にしゃべらせたんでしょ。』

「まあそれで出たならいいじゃんか。」

『これで例えば進学先決定で喜んだ瞬間に出るようになったとかならもっとロマンチックだったよね。』

「現実はそううまくできてないんだと思うよ。」

 確かにそれなら進学と声の回復で嬉しさ2倍だろうけど・・・。

「でもまあ、これからずっと出ないよりはいいと思うよ。」

『それもそうね。』

「早くミー子がしゃべってるところを見たいなあ。」

『案外しゃべったら性格変わるかもよ。』

「まあ、文だったらいくらでもできるしな。」

『楽しみにしとけよ兄チャン。』

 たぶんそのままこんな性格かなーとは思う。

 ちょっとふざけ気味だけど愛らしい、そんな性格。

 そういうミー子が、俺は大好きなんだよなあ。

『いきなり見つめてきてどうしたのよ。』

「ん?今のミー子の性格が俺は好きだなあって。」

『そんな直球で言われると私も恥ずかしいんだけどねえ・・・。』

 ミー子が目をそらして頬をかく。

 そんな照れ屋なところもかわいい。

『なっちってさ、本当に私のこと大好きだよね。』

「当たり前だろ?」

『じゃあなんか私にクサい台詞でも言っておくれよ。』

 クサい台詞ねえ・・・。

 あんまりそういうこと考えたことなかったな。

「よし、じゃあとんでもなくクサい台詞を言ってやるぞ。」

『どんとこいや。』

 なるべくイケボを意識してだな・・・。

「ミー子、キミはまるでブラックホールだ。俺は永遠にミー子に堕ちていく哀れな子羊さ。」

『クッソワロタ。』

「自分で言ってて寒気がしたわ。」

『似合わねー!マジなっちそういう言葉似合わねー!』

「振ってきたのはミー子だろー!?」

『m9(^д^)wwwwwwwwwwwwwwww』

 こんにゃろー!!

「・・・・・・ゎ。」

 さっきの言葉にこっぱずかしくなって、ミー子をベッドに押し倒した。

『やーんもうなにするのー。』

「自分で話振っておいてバカにするようなやつにはお仕置きだー!」

『きゃー!』

 ミー子をくすぐる。

「・・・!・・・!!」

 声が出ないため、笑顔のまま頭をブンブン振っている。

『こんにゃろ仕返ししてやるー!』

 ミー子が俺の脇腹に手を伸ばしてきた。

「ちょ、やめっ、わー!!」

 くすぐられるのは弱いんだ!!

 まるで小学生のようにベッドでじゃれあう俺たち。

「・・・はー、はー。」

「はっ・・・ぜー・・・はー・・・。」

 完全に疲れていた。

『事後の雰囲気。』

「違うけどな・・・はあ・・・。」

『やべえ久々にこんなことしたね。』

「この年になってこんなことするとは思わなかったわ。」

『そしてここからは大人の遊びへ・・・。』

「・・・。」

『おや、顔がまじ?』

「・・・ああいや、そういうわけじゃないんだけど。」

『手を出したくて仕方ないけどまだ俺には・・・!って顔してる。』

「よく分かるなあ・・・。」

『すごいでしょ。私の服も乱れちゃってるし、ちょっとエッチな雰囲気だよね。』

「そうだな・・・。」

 Yシャツのボタンが開いて、スカートも乱れ、上も下も下着が見えてしまっている。

 男子高校生にこの刺激はちょっと強い。

「とりあえず、服を戻してだな。」

『なっちが私のYシャツのボタンを留めてよ。』

「じ、自分でやればいいだろ。」

『いいじゃんいいじゃん、制服でいかがわしい雰囲気も学生の恋人ならではだよ?』

「・・・じゃあ。」

『お、なっちが流されてくれた。』

 2つほど空いたYシャツのボタン。

 もう完全にブラチラしているが、スポブラなのがまだよかった、うん。

『ちょっと手をずらすだけで当たりますよ。』

「そんな誘惑には屈しない。」

 向かい合ってボタンを留めるのって結構難しいんだな。

『ボタン留めるの、結構上手だね。』

「まあ、手先の器用さは大事だよな。」

『さっすがパティシエ志望だね。』

「あったりまえよ。」

 だんだん、部屋に漂っていたいかがわしい雰囲気が消えていく。

『なんか楽しかった。』

「そ、そうか。」

『なっちはドキドキしてたみたいだけどね。』

「ちょっと刺激が強くてな。」

『私もドキドキしてたよ?』

「そうか。」

『ちょっと期待もしてたけどね。』

「ごめんな。」

『謝らないでいいよ。いつかちゃんとなっちが私のこと愛してくれるって信じてるからね。』

 そういって、ミー子が俺の太ももに頭を乗せてきた。

「ど、どうした?」

『耳掃除してよ。』

「いきなりだな・・・。」

『いいでしょ?』

「おう、やってやるぜ。」

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