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Please speak!  作者: 長野原春
79/113

2度目の進路の話し合いです

「今日の放課後、テストを一括で返却しますね!で、出席番号1番から10番の人は面談にします!都合の悪い人はいますか?」

 いきなり言われた面談。

 まじっすか。

「いないみたいですね!」

 ミー子も大丈夫かな?

「バイトは?」

「・・・(ふるふる)。」

 今日はないみたいだ。

 まあ俺もないし、ミー子が終わるまで待ってようかな。

「絢駒くんどうよ?テストはいい感じだった?」

 後ろから五十嵐がつんつんしてくる。

「まあ、多分できたんじゃないかな。五十嵐は?」

「あたしはぜーんぜんだめ。まあスポーツ推薦でいいからね、気が楽だよー。」

 それはいいっすねー。

「絢駒くんはAO入試するんだよね?行けそうなの?」

「ちゃんと面接練習とかしないとだよな・・・。」

 一応現代文とかは得意だし小論文はできると思うけど・・・一応ちゃんと練習しないとだよな。

 お菓子の練習だけじゃだめだよな。

 あとは面接練習だけど、だれに頼むのがいいんだろう。

 まずは谷岡先生かな?

 それとも進路担当の長谷部先生かな?

 ・・・怖いってよく聞くけど。

「頭いいと推薦も楽になるよー。」

「秋島は楽そうだよな。行きたいところはあるのかよ?」

「どうしよっかなー、理系女子ちょっとやる気あるんだよなー。」

「イメージないな。」

「こうすればイメージわかないー?」

 そういって、どこから取り出したのか、秋島がだてメガネをかけた。

「ふっふん、どうよー?」

「メガネってだいぶイメージ変わるんだな、すげえ。」

「わー、花乃子(かのこ)、一気に流行りのリケジョってやつだー。」

 確かに理系女子に見える。

「研究とか、してみたいよねー。」

「こじらせて彼氏ができなくて大変なことになりそう。」

「絢駒くんがひどいこと言ったー!!!」

 秋島からパンチが飛んできた! 

 痛くないけど。

 そして一緒に揺れる秋島の大きな胸。

「・・・チッ。」

 何かミー子の方から舌打ちが聞こえたような気がした。

「私だって明るい家庭を持ちたいよー!?」

「でも理系女子ってそういうイメージが・・・。」

「うるさいうるさい!研究職の男性は多いはず!ワンチャンあるー!」

 ワンチャンあるらしい。

 まあ大人しめで清楚な見た目だし、秋島に言い寄ってくる男ならいそうな気もする。

「ねえねえ絢駒くんあたしまた絢駒くんと鏡崎さんが作ったお菓子食べたいな。」

「どうするミー子?」

「・・・(こくり)。」

 いいんじゃない?というサインか。

「ミー子がいいっていってるし、今度持ってくるわ。」

「お菓子が食べられると聞いて。」

 すっと入ってくる相沢。

 耳がいいなコイツは・・・。

「相沢も食べたいって。」

『あなたはダメ。』

「つれないなあ!!」

「冗談だよ。」

「絢駒くんってのりちゃんにはひどいよねー。」

 五十嵐が背中をつんつんしてくる。

「いつの間にそんな風に呼ぶようになったんだ。」

「女の子はこんなもんだよー?」

「女の子・・・ふむ?」

「あー!!絢駒くんがあたしの胸見て考えたー!あたしにもひどいんだー!?」

 五十嵐が机に突っ伏して泣きまねを始めた。

 たぶんこいつらの扱いはこれでいいんだろう。

 何も男がいじられキャラになる必要もないだろう。

「なになに?夏央と美衣ちゃんが作ったお菓子を食べれるとな?」

 来た元祖いじられキャラ京介。

「キミにはあげないよ?」

「じゃあ夏央の家で食べる!」

「家にも上げないよ?」

「2階から入ってやる。」

「通報するよ?」

「俺にも食わせろよー!」

「気が向いたらね。」

 まあ作ったら食わせるけどさ。

「というか放課後に面談があるなら朝のHRでテスト返せばよかったのに。」

『時間かかるんでしょ。』

 テストの結果を早く見たいんだけどなー。

「結果が関係ないとはいいえあまりよくない点数は見たくないなー。」

「そりゃ五十嵐の自業自得ってやつだろ。」

「絢駒くん慰めてよー。」

「すり寄ってくるな!」 

「あーんいけずー。略してあんずー。」

「彼女だったらもうちょっと違う対応したかもな。」

「むむ・・・というかあんずには触れてくれないのねー。」

 いやそこどう触れたらいいかわからねえよ。

「そういえば京介は面談で先生に進路が決まったって言うんだよな。」

「だね!推薦あるかどうかも見ておかないと!」

「都内の大学っぽいからどうなんだろ・・・あるんかね?」

「あったら推薦、まあなかったら一般で頑張るよ!俺頭いいし!」

「さらっとそう言えるところがすげえよ・・・。」

 俺もそんなこと言ってみたい。

「うーん、私もどこにしようかなー、一応先生には化学やりたいとは言ってあるけどー・・・。」

「まあ秋島も頭いいし遅く決まっても一般受験で何とかなるんじゃないのか?」

「多分なるけどー。」

 俺もそんなこと言ってみたいっ!!

 というか俺の周りは理系が多いな。

 ミー子と、春姉と、秋島と。

 なんだ、女子の間で理系が流行ってるのか。

『なっちと私はもう進路変えないもんね。』

「あったりまえだ。まあ、面談で何かしら言われるかもしれないけど。」

『大丈夫、何か言われたって曲げちゃダメよ。』

「おうよ。」


「1年生の頃の成績と比べると信じられないくらい上がりましたね・・・。」

 面談が始まって直後、先生の一言目はなんとお褒めの言葉だった。

 やったぜ。

「AOとか推薦入試でも大丈夫ですかね?」

「この成績なら十分だと思います。まあ、1年生から2年前半までの成績がだいぶ足を引っ張ってしまっているのですが・・・。」

 だ、大丈夫だよね。

「でも、製菓の専門学校である以上、一番大切なのはやる気ですから、面接や課題の方が大切だと思いますよ。」

「ですよね。やる気は十分ですよ。」

「その意気です。」

 だって俺約束したもん。

 ミー子と一緒に店を開くんだって。

 そこは絶対に曲げてはならない。

 だって大切な幼なじみ―――彼女との約束だから。

「一応、もう一度言っておきますね。パティシエの道はそう簡単なものではありませんよ。長く苦しい修行の日々です。挫折しかけてしまうこともあるかもしれません。それでも絢駒くんは目指しますか?」

「もちろん、彼女と一緒に店を開くと約束してますから。」

「もう!そんなこと言えちゃうのいいですね!先生やっぱり応援してます!」

「ありがとうございます。」

 やっぱりいい人だなあこの先生。

 俺も頑張りたくなっちゃう。

「そういえば、秋島さんが絢駒くんが作ったお菓子を食べたと言っていましたよ。先生には作ってくれないのですか?」

「もうちょっと成績の方を工面してくれるのであれば・・・。」

「先生が退職に追い込まれちゃいます。」

 そりゃいかんね。

「気が向いたら作りますよ。」

「それ作ってくれないパターンなんじゃないですか?」

「そうですねー、先生がバレンタイン作ってくれたらホワイトデーに返すかも。」

「先生は生徒にそういうことはしません。」

 そりゃ残念だ。

「というか、金曜日にバイト先来てくださいよ。それだったら好きなだけ食べられますよ。」

「お金かかるじゃないですか。」

 タダで食おうとしてやがったな・・・!


 Side 美衣

「言うことはなさそうです。」

 面談終わり。

『ってそんなわけないやろがい!』

「激しいツッコミありがとうございます!」

 先生がだいぶ私たちに慣れてきたような・・・。

「まあでも、鏡崎さんはこのままで大丈夫そうなので、言うことが本当にないんですよね。」

『私、なっちよりは成績低いんですけど大丈夫なんですか?』

「ええ、絢駒くんの点数が高いだけで、鏡崎さんの点数でも十分評定は足りますよ。」

 そうだったのか・・・。

「それに、普段絢駒くんとやっていることの方が大事だと思います。」

『情事ですか?』

「そこまで進んでいたんですか・・・?」

『情談です。』

 空気が死んだ。

 下ネタを言う時は人を選ぶべきですね。

「鏡崎さん?一応、女の子だから・・・。」

『いいんですよ、女の子だって下ネタ言います。でもちょっと今回はアカンと思いました。』

「そ、そうですね・・・あれです、TPOってやつです。」

 動揺していた先生がTPOとかいう先生っぽい言葉を出す。

「べ、別に高校生のお、お付き合いがどのくらい進んでいようと、私はその、関係ないですがね!ただ、ほどほどが重要ですよ?」

『私まだ処女ですが。』

「じゃあ何だったんですかさっきの話は・・・。」

『冗談って言ったじゃないですか。』

 多分この人彼氏できたことなんじゃないかな。

 もしくはしばらくいないか・・・。

『先生に質問いいですか。』

「処女かどうかは答えませんよ?」

 この人処女だ。

『じゃあ何でもないです。もう、先生が言うことないとか言うから変な方向に話が行っちゃったじゃないですかー。』

「私のせいなのかな・・・?」

 たぶん先生のせい。

 私のせいじゃない、はず。

「とりあえず、絢駒くんと一緒に今やっていることを最大限がんばってください。」

『お菓子作るんですね。』

「そういうことです。おそらくAO入試の課題で出ますから。」

『和菓子も洋菓子も作れるようにしておかないと・・・。』

「頑張ってくださいね。」


 放課後、俺とミー子は青羽駅からすぐ近くの、青羽中央総合病院に来た。

 理由は・・・。

二五市(にこいち)先生!』

「ずいぶんとテンションが高いね。」

 ミー子がケータイを二五市先生に突き出す。

 当の本人はちょっと困惑気味だ。

「夏央くん、何かあったのかな?」

「ええ、まあ・・・。」

『ほんの少しかもしれないけど、私にとってはとても大きな進歩です。』

「そうなんだ?」

「・・・・・・ぁ!」

「・・・おお!!」

 小さい音だし、まだ声と呼べるようなものじゃないかもしれないけど。

 それでも、ずっと封印されていたミー子の声が少しずつ紐解かれようとしている。

 とても、重大なことだ。

『今、ちゃんと声を出せるように練習中です。』

「そうなんだね!よかった!」

 二五市先生も、嬉しそうだ。

 そりゃそうだろう。

 ずっと声の出なかった子が、もう少しで声が出せそうなんだ。

 実際俺だってちょっと泣きそうだったし。

「にしても、ずいぶんとかわいらしい声だね。」

『なんで少しでも声が変わってくれないんですかね?』

「それは私には分からないけど・・・素敵な声だと思うよ。」

『先生ってロリコンだったんですか・・・?』

「ひどいいわれようだ。」

 やっぱりミー子は自分の声が気に入らないらしい。

「俺もミー子の声はかわいくて好きなんだけどなあ。」

『貴様もロリコンか!!』

「声だけでロリコンっておかしくないですかね。」

『だってこんなの完全にロリボイスじゃないですかー!非合法だよ!』

「いっそアニメの声優とか。」

『特徴的すぎると売れないんだよ!』

 知らなかった。

「元気なのはとてもいいことだよ。その調子で声が出せるようになるといいね。」

『出してやりますよー!ゴールはもうすぐですかね?』

「断言はできないが、そうだと思う。そしたら、ここに来るのも最後になるかもね。」

『そしたらちょっと個人的に連絡先の交換を・・・。』

「お、なんだ浮気か?」

『いやそうではなく。』

「結婚などの相談なら、それ専門の事務所があるからね。」

『そういうことでもなく!』


「・・・(きょろきょろ)。」

 ミー子が電車の中で辺りを見回している。

「どうした?ミー子、電車とか苦手だったっけ?」

「・・・(ふるふる)。」

 どうしたというんだ。

『なんというか、在来線だなあって思って。』

「・・・?」

 何を言ってるんだ?

『いやほら、前になっちと旅行に行ったじゃない。』

「ん?ああ、そうだな。」

『その時に、なかなか乗らない電車に乗ったじゃない。』

「ゆふいんの森か。」

『そうそう。』

 そういって、また辺りを見回す。

『内装が全然違うよね。』

「まあ、在来線と観光列車じゃ違うのも当然だろ。」

『椅子の座り心地も・・・。』

 確かにゆふいんの森の椅子の座り心地はとてもよかった。

「相応の金を払っただけあるってことだよ。」

『確かに、普段電車には使わないような料金取られたもんね。』

「払う価値のある中身だっただろ?」

『うん、また乗りたいしまた行きたい。』

「確かにまた行きたいな。今度は自分たちで金貯めて旅行行こうか。」

『新婚旅行ということだね。』

 そこまでは言ってないんだけど・・・。

 まあ、外国とかは抵抗感あるし、また湯布院ってのも・・・ああでも他のところも行きたいな。

『なっち、他に行ってみたいところってあるの?』

「次は北海道に行きたいな。」

『お、私なっちがどこ行きたいか当てちゃうよ。』

「まじか、当ててみ?」

「・・・(ぺた)。」

 ミー子が俺の手に触れる。

「なんすか。」

『これでなっちの考えを読み取るのじゃ。』

 そんなんで読み取られたら俺の情報セキュリティガバガバじゃないですかね。

『分かった!』

「答えをどうぞ!」

『宗谷岬!』

 当てられた!

「すげえな!?」

『彼女はこんなこともできちゃうのです。』

 ピースをするミー子。

 すげえですね・・・。

「・・・ぁぁぁぁぁぁぁああああああまああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいぃぃぃぃぃっ!!」

 電車が止まり、扉が開いたところで、なんかとんでもないのが飛び込んできた。

 ぱっちりとした大きな目に、本人の元気の良さを如実に表している口角。

 髪型は茶髪のサイドテール、そんでもって本人の動きに合わせて揺れる大きな胸。

 ・・・わ、紗由さんだ。久しぶりだなこの人。

『強い人だ。』

「久しぶりだねえなつおくんに太郎ちゃん!」

 そういえばミー子のこと太郎ちゃんって呼んでたな。

「って、そんなことはどうでもいいよ!」

 久しぶりに会ったのにどうでもいいんですか。

「甘い!甘いよなつおくん!」

 肩をつかまれてがくがく揺らされる。

 電車内なのであまり大きな声を出さないでいただきたい・・・といいたいところだけど、紗由さんの声は勢いに反して結構小さい。

 この声では咎められない。

 ちゃんと周りのことを考えているのかもしれない。

「何が甘いんですか。」

「宗谷岬・・・イヤ稚内の前に!行かなきゃいけないところがあるんだよ!!」

 さっきの話聞いてたのか。

「でも日本の最先端って行ってみたいじゃないですか。」

「それは分かる!その気持ちはよーく分かるんだよ!」

 うんうんと頷きながら右手をぐっと握る紗由さん。

 何なんだこの人は・・・。

『つまり稚内まで行く前によるところがあるってことですか。』

「そうそう!さすが太郎ちゃんは理解が早いねえ!」

 ビシイッと人差し指を向ける紗由さん。

「もちろん稚内までは電車で行くんだよね?」

 あっ・・・どっかで降りて写真撮れってことだな・・・。

 もうこの人のことは分かったぞ。

 なんたってこの人は撮り鉄ガチ勢だからな。

『バスでもいい気がするけども。』

「いい景色を眺めながらまったり移動することができるんだよ!そう・・・特急宗谷でね!」

 長い話が始まりそうな予感がするんだけど。

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