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Please speak!  作者: 長野原春
77/113

テストです

『なっち、準備はOK?』

「ああ、あれから結構頑張ったんだぜ?」

『今日から3日間で、いろいろ決まっちゃうよ。』

「そうだな。ミー子も、悔いのないようにな。」

『もちろん、お互いいい結果を期待しよう。』

 ここが、調査書に成績が書かれる最後のテスト。

 なんとしてもいい成績を取るぞ!

「おおー、やる気満々だねー。」

「あたし勉強きらーい。」

 秋島と五十嵐が机に突っ伏す。

 そういえば2人とも勉強は苦手なんだっけ。

「秋島は目標とかはないのか?」

「えー、目標・・・うーん、総合30位以内に入ればいいかなー。」

「頭いいじゃねえか!!」

 こいつ自己紹介の時に得意科目はねえとか言ってたのに!

「ああ、花乃子(かのこ)は頭いいよー?満遍なくいい点数獲れちゃうからねー。」

 得意科目はねえって全体的によくできてるってことかよ!

 なんだお前も京介みたいな感じかよ!

 だまされたわー!

「五十嵐は?まさか。」

「いやいやいや、あたしは頭ぜんっぜんよくないよー。進学もスポーツ推薦ってことにしてるしー。」

 それはそれでいいじゃねえか。

「いやー、30以内に入れるかどうかでちょっと胃が痛くなってきておりましてね・・・。」

「花乃子はストレスに弱いんだよ、絢駒くん。」

「そんなこと言われても俺にどうしろと。」

「あ~~~、絢駒くんの作ったお菓子があればなぁ~~~。」

「お菓子食いたいだけじゃねえか!」

「どんなお菓子でもいいってわけじゃないよー!絢駒くんの作ったものだからいいんだよー!」

『それを食えるのは私の特権だァー!』

「私にも食わせろー!!」

 どうしよう、うるさくなってきた。

「テスト始めるので静かにしてくださーい!!」

 谷岡先生が教室に入ってきた。

 今日はジャージですか。

 身体のラインが分かりますね。

 胸は微妙なところですが。

『なっちが先生に失礼な目線を向けている。』

「そんなことないですー。」

『スケベ野郎。』

「誤解だ!」

 誤解じゃないけど。

「皆さん知っての通り、今回のテストが調査書に成績が記入される最後のテストです!進学の人も就職の人も、気を引き締めて行きましょう!」

 いっせいにはい、という声が上がる。

 よーし、なんかやる気出てきた。

 ミー子と一緒にパティシエを目指すんだ、こんなところでつまずいてなんていられない。

 さて、頑張っちゃいましょうかね!


「お、おお・・・!」

 テストを見て驚いた。

 解ける!

 問題が、解ける!

 ちょいちょい勉強している甲斐があった!

 以前茎野先生に言われた通り、俺は1年生~2年1学期辺りまでの成績がだいぶ足を引っ張っている。

 頑張って、巻き返さないといけないんだ。

 よしよし!解いていくぞ!

 周りの人をちらっと見る。

 秋島も京介も余裕そうだ。

 こいつら頭いいからな。

 お、ミー子もなんとなく自信ありそう。

 俺もこれは自信があるぞ!

 いやあ、日本史は楽だなあ。

 ・・・そういえば、自信ありげな表情してるけど、ミー子って日本史苦手じゃなかったっけ。

 まあ、今はそこを考えている場合じゃないか。

 これ、俺もしかしたら100点ワンチャンあるんじゃないか?


「ミー子、日本史どうだった?」

「・・・(こくり)。」

「お、いい感じだったのか。」

「・・・(にこ)。」

「夏央!俺もだいぶいい感じだったぜー!」

「お前は知ってる。どうせ今回も成績は10くらい取れるんだろ。」

 こいつはどうせいい大学にでも進学するんだろう。

 俺らの手が届かないところとかな。

「私もできたー。開耶(さくや)はどう?」

「壊滅かなー。」

 あっさりという五十嵐。

 テストはもう諦めているようだ。

「夏央、日本史と現代文は大丈夫だろうけど、数学と化学はどうするの?」

「そこも大丈夫、ミー子と一緒に勉強したからな。」

 化学に関しては春姉にも聞いたからな。

 こりゃいける。

 テストが終わったら、あとは怒涛の小論文と面接とお菓子作りの練習だ。

『私たちはテスト終わってからすぐに本番が来るね。』

「そうだな、これで気を抜いちゃいけねえな。」

「え、ちょっとちょっとー、鏡崎さんと何を話してたのよー。」

 五十嵐がつんつんしてくる。

「内緒。」

『私の彼氏に触るなー。』

 ミー子が手話を使いながら五十嵐に突撃していく。

「ちょっ、手話なんだろうけどあたしは何言ってるか分からないよー!」

『五十嵐さんはなっちへのボディタッチが多いんじゃボケェ!』

「本当に何言ってるのー!?」

「夏央、翻訳してあげた方がいいんじゃないの?」

「いや、このままの方が面白いだろ。」

「そ、そうかな・・・?」

 京介が首を傾げた。

 何言ってるか分からない方が面白いと思う、俺だけだろうか。

「鏡崎さんと開耶、結構仲良くなった?」

「もともと仲良くなれそうとは言ってたけど、結構気にしてるっぽい。」

「確かに、彼女からしたら心配だよねー。」

「・・・まあ、俺も逆の立場なら心配になると思うよ。」


 解ける・・・解けるぞ!

 言葉には出さない。

 テスト中にしゃべったら不正行為と疑われるからね。

 不正行為なんてしようものなら推薦やAOはお先真っ暗だ。

 そしたら一般受験しかないじゃないですか。

 そうなってしまうと俺は進学できる可能性がガタ落ちしてしまう。

 それだけは何としてでも回避したいので、受験なんてものは先に終わらせておきたい。

 進学が決定したら車の免許でも取っておこう。

 先に取っておけば後々楽だろうし。

 っといかんいかん、余計なことは考えないようにしないと。


 Side 美衣

 なっち頑張ってますなあ。

 何度か私と一緒に勉強したりもしたけど、いつの間にあんなに勉強できるようになったんだろ?

 今まで学力って割と拮抗してたけど、今じゃかなわないかも。

 うーん、私ももっと頑張っておけばよかったかも。

 AO入試でなっちと同じところ行く予定だけど、一緒に行けなかったらいやだしなあ。

 面接とか、大丈夫なのかなあ。

 あ、そういえば私って面接受けるときはどうすればいいんだろ。

 しゃべれないならそこで終わりとかだったら嫌なんだけど・・・さすがにそれはないよね?

 あ、どうしよう不安になってきた。

 ってちょっと待った、今はテストに集中しないと・・・。

 といってもやっぱり英語は難しいなあ。

 でも、前よりは解けるようになってるかも。

 陽花に教えてもらってよかった。

 ・・・というか、頭いいんだし、京介くんがみんなに教えてくれればいいのに。

 成績ほとんど8じゃん。

 私が教えてあげられるの、化学ぐらいしかないからなあ・・・。

 別にそっちに進むわけでもないし、今となっては無駄な知識かなあ。

 ・・・いや、無駄にはならないか。

 もしかしたら、いつかお菓子を作るうえで役に立つかもしれない。

 前に見たマンガで、料理に化学を使う分子ガストロノミーなんてものがあった気がするし。

 私には関係のない世界かもしれないけど。

 って、また脱線しちゃった。

 テスト、頑張らないと・・・。


「英語、どうだった?」

『まあまあ、でもあんまり自信ないかも。』

「まじか。」

『まあほら、他の教科でいい点数取るよ。英語が少しくらい足引っ張ったからってなんだ、ってくらいにね!』

「化学そんなに自信あるのか。」

『いや、あれもうあんまり伸びしろないじゃん。その代わり、日本史も現代文も今回は割と自信あるよ。』

「お、いいじゃん。」

『もっとも、なっちに点数は負けると思うけどね。』

「そ、それはどうだろうな。」

 確かに俺は前より結構頭がよくなったと思う。

 だが、それだからといってもミー子に勝てるかなあ・・・?

 もともと、ミー子は勉強さえすれば普通に頭いいからな。

 英語が嫌いすぎてほとんどやってないだけで。

「どうだったよ夏央。」

「まあ、割とできた方だと思う。英語は勉強しなおしたからなあ。」

「勉強しなおしとかすげえな。俺ならやりたくないよ。」

「やりたくないから京介は最初に覚えるようにしたんだもんな。まったく、頭がいいやつだ。」

「いやっはっは~、褒めても何も出ないよ?」

「まったく、そん時に俺に一緒に教えてくれさえすれば、もっと最高だったんだけどな。」

「多分中学の時の夏央を誘ってもやる気出さないと思う。」

「はっ、多分その通りだな。」

 絶対その時の俺やる気出さないと思う。

『私もその時に教わればよかった。』

「いやミー子はそもそも・・・。」

 1年のころの、英語習いたての時期って確か・・・。

 うん、そのころのミー子は無理だな。

 最初は京介のことも警戒してたしな。

『そしたら勉強もスポーツも万能のセイント☆ミー子ちゃんが爆誕してたかもしれないのに。』

「セイント・・・ぷっ。」

 突然そういうネタをぶっこんでくるのはやめていただきたい。

 あの頃よりいろいろ変わったなあ・・・。

 もともとこういう性格だっけ?


「夏央、やっぱり最初からちゃんと勉強しておけばよかったよね、絶対。」

「ああ、今ではそう思ってるよ。」

 昼休み、京介と2人で飯だ。

 ミー子は祈木たちと食っているらしい。

「まあ、今ではそう思うよ。」

「勉強は本人のやる気の問題だからなあ。」

「ほんと、俺にも勉強のやる気がほしかったな・・・京介はどうやって勉強してるんだよ?」

「俺かあ・・・うーん、勉強やればやっただけやれることがいろんなことができる!って考えるかなあ。」

「そりゃ本当に頭いいやつが考えることだ。」

「えー?」

 そんな考えしてるやつはわずかだろう。

 ほとんどの人は未来のことなんて考えない。

 大体の人は、目の前のことしか見てないはずだからな。

「いやあ、やりたいことが見つかったときに、その分野を勉強していないからできないっていやだなあって思ってさ。」

「ん、京介、今やりたいこととかないのか。」

「そうなんだよね。だから、やりたいことが見つかったときにそれをできるように、今のうちに手を広げておいた方がいいよなあって思ってさ。」

「いい考えしてんね。」

「そう言ってもらえるとなんかうれしいなあ。」

 ほんと、こいつすげえな。

 俺にはそういうのできないだろうな・・・。

「まあでも、夏央みたいにやりたいことが決まってたりするの、ちょっとうらやましかったりね。」

「そっか・・・京介、やってみたいなあって思うこととか、ないのか?なんとなくでいいからさ。」

「なんとなく、かあ・・・うーん、大学に行ったら、考古学とかやってみたいかなあ。」

 考古学か・・・ん?考古学?

「京介、今考古学って言ったか?」

「え?うん、考古学、やってみたいかなって。」

「まじか!」

「どうしたの?」

「いるよ、俺の周りで考古学やってる人!」

「そうなんだ!?」

「ああ、俺の父さんが考古学やってるからさ、話聞いてみるか?」

「え、いいの!?」

「ああ、多分父さんも歓迎してくれると思う!」

 あの父さんなら考古学やりたいって人を拒むわけがないだろう。

 多分、ハイテンションで迎えるはずだ。


 さて、化学のテストか。

 ミー子の得意科目だけど、ミー子はどんな感じだろう。

「・・・。」

 ちらっとミー子の方を見ると、すごい勢いで問題を解いている。

 早っ!?

 俺だって少しくらい化学はできるようになったけど、そこまでできねえぞ!?

 さすが得意科目、ミー子さんすごいっすね。

 まあ、俺もミー子や春姉に教えてもらった分頑張らないと。

 そう、テストでいい点を取って、勉強を教えてもらった恩返しってやつをしないといけない。

 待っててくれミー子、春姉。

 いい点数見せるから!

 ・・・ミー子にばっかり注目してたけど、目の前の秋島もなかなか肘とか肩の動きが早いっすね。

 やっぱり頭いいんだな。

 あー、見た感じこの問題も解けそうだし、こんなことになるんだったら京介の言う通り中学のころから勉強しておくんだった。

 しくじったなあ。

 まあ、過ぎたことを後悔してももう遅いんだけど。

 今はこのテストに集中するしかないか。

 解き終わって見直しも終わったら寝よ。


 Side 美衣

 ワンチャンある。

 これ100点ワンチャンあるよ。

 いけるんじゃないかな!?

 これは1学期の成績で化学10の可能性が出てきたよ。

 これいけるよ。

 とりあえずテストの点数源である化学はオッケーだよ。

 見直しも終わったし、100点の自信があるし眠いし寝よう。

 なっちはどうしてるかな?

 突っ伏して寝たふりでもして見てみようかな。

 お、やってるやってる。

 なっちも結構いいところまでいってるじゃない。

 こりゃ私とハルさんで教えたおかげだね。

 これだったらなっちも80点とか可能性あるんじゃないの。

 いや、なっちはもういつの間にか頭いいなっちになっちゃったし、90点とかも可能性あるな・・・。

 うーん、やっぱり英語、最初から勉強しなおせばよかった。

 陽花の家に泊まったりすればよかったかなー。


『なっち、嬉しそうだね。』

「え、そう?」

 帰り道、俺の目の前にいきなりケータイが現れた。

「俺、嬉しそう?」

「・・・(こくり)。」

「あれかな、ここまでできた感じのするテストが今までなかったからかな。」

『それだ。』

 何だろうねこのいい感じ。

 多分京介はいつも感じてるんだろう。

 それかもうマヒして何も感じないか。

 いや、多分もうこの感覚ないだろうな。

 だって中学の時から頭よかったし。

「あ。」

『どした?』

「いや、何でもない。」

『なんだよ~。』

「京介の話だよ。」

『あいつは俺たちの幼なじみだぜ?俺にだって関係のある話なんじゃあねえのかい?』

「何キャラですか。」

『こういうの楽しい。』

 楽しそうで何よりです。

『で、どうしたのよ。』

「なんか京介が考古学やってみたいらしくてな。だから父さんに話しておかなきゃなーって。」

『あ、京介くんやりたいことできたんだ、よかった。』

「そうみたいなんだよ・・・よかった?」

 よかったってなんだ?

『ほらほら、前は私たまに京介くんに相談されたり愚痴を聞いたりしてたじゃない?』

「・・・そういえばそんなことしてたなー。」

 確かミー子が京介からお菓子をもらって話を聞くってやつ。

『その時に、俺まったくやりたいことが決まらないんだよーっていう相談を受けてね。』

「そうだったのか。でもそれって結構前の話じゃないか?」

『そうそう。だから私もまだやりたいこととか全く決まってなくてさ。』

「なんて言ってやったんだ?」

『私もまだ決まってないんだし、焦らずゆっくり探していこうよって言った。』

「模範的な回答ですな。」

『だってこうとしか言えなかったんだもん。』

 まあそりゃそうか。

『でも考古学っていうと清松さんみたいに世界中を飛び回るのかな?』

「ああ、そうなるんじゃないか?まあ、日本にいても研究とかはできるけどな。」

『私たちのお店に、来てくれないのかな。』

「いやいや、あいつは絶対来てくれるよ。そういうやつだ。」

『なっちって、京介くん大好きだよな。』

「え?・・・当たり前だろ!俺の数少ない男友達だからな!」

 大切に決まってる。

 あいつには絶対言ってやらないけど。

『というか、私たちのお店に、友達が来てくれるのって、なんかいいね。』

「確かに、いい感じだよな。」

『私たちに友達がそこまで多くないのが問題だけど。』

「・・・いや、うん、まあ来てくれるだろ。」

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