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Please speak!  作者: 長野原春
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作戦の後の後始末

「というわけで、鎌谷くんは警察にドナドナされて行きました。」

『まじかよ。』

「俺と鎌谷の会話の内容、聞く?」

『聞いてみる。』


『なっち。』

「どうした。」

『ビニール袋。』

「え?」

 ミー子の方が震えている。

 ・・・って!!!

「はい!!」

「・・・げぷ。」

 うん、聞かせなきゃよかった。

『いやはや、お見苦しいものを見せちゃいましたね。』

「いやいや、すっきりしたか?」

『いろいろと吐き出せた気分だよ。』

「体調は大丈夫か?」

「・・・(こくり)。」

 そりゃよかった。

『にしてもそんなこと言ってたのね。私を・・・ねえ。』

「本当は超ぶん殴りたかった。」

『よく我慢したじゃないの。』

「ああ、京介のおかげだ。」

『京介くんにも感謝だね。』

「ほんと、あいつにはマジ感謝だよ。」

『ちょっと口をすすいでくるね。』

「おう、了解。」

 ミー子が部屋を出ていく。

 さすがに口の中が気持ち悪いよな。

 にしても、これで一件落着か。

 いやー、これで受験に集中できるな。

 鎌谷はこれからどうなるんだろう?

 学校に来るんだろうか?

 いや来ないでほしいけど。

「とりあえず、これで当分は安心だろ。」

『お待たせしました。』

 ミー子が部屋に戻ってきた。

『なっちのリステリンを使わせてもらいましたよ。』

「ん、そうか。」

『使った後でなんなんだけど、大丈夫?』

「別に気にしねえよ?」

『よかった。』

 というかミー子リステリン使って大丈夫だったのか。

 俺でも10秒持たないんだけど。

「辛くなかった?」

『口の中がヒリヒリしたので水で再度すすぎました。』

 だよね。

『ともかく、キレイになったのでなっちにキスします。』

「え、なんで?」

『何もできない私の、せめてものお礼。』

 ミー子が近づいてくる。

『また助けられたね。本当にありがとう。』

 ミー子の顔が近づく。

「・・・ん。」

「・・・。」

 唇が重なる。

 やっぱりミー子の唇は柔らかいな。

 ・・・く、ミー子とキスしていると、なんだかムラッときてしまう。

 何だろう、以前お預けを食らったからだろうか。

『なっち、今は家にいっぱい人がいるよ。』

「・・・だな。」

 そうだそうだ、こんなところでミー子に手を出してみろ、気づかれる。

『私のこと、守ってくれるなっちのこと、大好きですよ。』

「ああ、大好きな幼なじみ兼彼女だからな。いつだって守ってやりますよ。」

『やべえ私いつまでも安泰だ。』

「あんまり腕っぷしの強いやつには勝てないぞ。」

『その時は逃げちゃえばいいんだよ。』

 ・・・そんなもんかね。


 次の日、鎌谷は学校に来なかった。

 学校では朝から職員会議が行われていた。

 鎌谷の件で、学校へ連絡が行ったらしい。

 朝のHRがはじまらない。

「おはよう絢駒くーん。」

「おう、おはよう秋島。五十嵐は?」

「なんと本日開耶(さくや)さんは38度のお熱を出してお休みだそうだー。」

「え、大丈夫なのか。」

「まあゆっくり寝てれば大丈夫でしょー。あれでも陸上部だから体は弱くないはずー。」

 体は弱くないって言っておもっきし風邪ひいてないっすかね。

「絢駒くん、もしかしてやった?」

「何を?」

「先生たちがバタバタしてる理由、知ってるんじゃない?」

 まあ、多分。

 朝のHRの時間はとっくに過ぎているが、鎌谷は学校に来ていない。

 そして、少し晴れやかな、ミー子の表情。

 なんとなく、秋島も察しているのかもしれない。

 何も言ってこないが、さっきから相沢もこっちを見てきている。

 何でにやにやしてるんだろうねえ。

「まあ、そうだな。昨日の夜、ストーカーの現行犯で俺と京介で捕まえた。」

「反撃されなかったの?」

「ああ、大丈夫だったぞ。」

「絢駒くん、あれに押し倒されたら折れてつぶれちゃいそうだもんねえ。」

 でっけーお世話だ。

「まあ、とりあえず警察に突き出してやったよ。」

「ドナドナド~ナ~ド~ナ~。」

 俺もその曲思い出した。

 うん、彼の体型的にもね、仕方ないね。

「これで鏡崎さんの身の回りの安全は保たれたわけねー。」

「そうだな。」

「ヘ~イよかったじゃん彼女ー。」

「・・・(にこ)。」

 素直に笑うミー子かわいい。

「じゃああれだねー、私がストーカーに悩まされたら絢駒くん助けてねー。」

「彼氏に助けてもらえ。」

「はー、私に彼氏がいないと知っていてそういうこと言うー。」

「作ればいいんじゃない?」

「そんな簡単にできてたら苦労しないんだけどー?」

 まあ確かにね。

 彼氏彼女なんてそんな簡単になれるもんでもない。

 俺やミー子だってここに来るまでいろいろあったしな。

 告白、どんだけ悩んだことか。

「にしても、私たちの出る幕なかったね。」

「いやいや、負担は少なければ少ない方がいいんだよ。」

「おー、私のことをフォローしてくれたよ。鏡崎さん、惚れてもいい?」

 ミー子が胸の前で腕をクロスした。

「いけずぅー。」

『なっちは優しいんだよ。その優しさは、私の独り占め。』

「独占禁止法!」

『なっちは売り物じゃねええええええええええええ!!!』

 一瞬ミー子の後ろに炎が見えた気がする。

 そのとき。

「おはようございまーす・・・。」

 暗い雰囲気をまとい、谷岡先生が入ってきた。

「朝のHRに遅れてしまいすみません。ちょっと緊急の職員会議がありまして・・・。」

 教壇の上で頭を下げる先生。

 俺たちのせいでこうなったと考えると、ちょっと申し訳ないな・・・。

「今から朝のHRを始めますね。出席は・・・うん、全員いますね。」

 鎌谷だけいないが、全員いるという先生。

 やっぱりそういうことか。

「今日の授業に関するお知らせはありません。そろそろ期末テストですので、皆さん気を引き締めていきましょう。」

 谷岡先生にいつもの元気さがない。

 これじゃ気が引き締まらないだろう。

「そして、皆さんに報告があります。」

 その発言に、相沢と秋島と京介が反応する。

 みんな、なんとなく察しがついているんだろう。

「このクラスの鎌谷禄助(ろくすけ)くんですが、一身上の都合により、本日からこの学校を退学する、ということになりました。本当に、残念です・・・。」

 退学か。

 ストーカーって退学になるんだな。

 まあ仕方ないか。

『なっち。』

 ミー子が手話で話しかけてきた。

 声を出すわけにもいかないので、俺も手話で対応しよう。

『どうした?』

『私にかかわった人は、不幸になる・・・?』

 ちょっと不安そうなミー子。

 ミー子の周りで何かあった人というと・・・。

 まあ、ミー子をいじめていたやつは軒並み県外へ転校とかしてたり・・・あとは、太田さんか。

 殺人未遂で捕まったんだっけか。

 あとは、吉田。

 強姦未遂で逮捕。

 そんでもって今回鎌谷はストーカーで退学。

 そういえば京介が事故に遭ったな。

 って、違うな。

『ミー子にかかわった人じゃなくて、ミー子に手を出した人だな。』

『なっちまで不幸になっちゃったら。』

『そんなことねえから大丈夫だよ、安心しな。』

『本当?』

『大丈夫、俺はミー子と一緒にいて不幸になんてなってないからさ。』

「・・・(こくり)。」

「それでは、HRを終わりにします。あと、放課後絢駒くん、鏡崎さん、鈴波くんは職員室に来てください。」

 何か聞かれるんだろうな。

 京介の方を向くと、まあ仕方ないよな、といった感じで笑っている。

 さて、何時くらいに帰れますかね。


 なんか放課後のことが気になってしまい、授業がなかなか頭に入ってこなかった。

 一応ノートは取ったので後で復習しておこう。

 ・・・って、今日バイトじゃんか。

「一応遅れるって連絡しておいた方がいいんじゃないか?」

「そうだな、店長に連絡しておこう。」

 すみません店長。

「まあでも昨日のことに関してはほとんど俺と京介でやったようなもんだからな・・・。」

『昨日、どこで鎌谷くんをドナドナしたの?』

「ミー子が通った細い裏路地だ。」

『え、あそこになっちと京介くんもいたの?』

「ああ、隠れてた。」

『知らなかった・・・。』

「まあ、逃がさないようにするためにはあそこの方がいいかな、ってね。」

『おお、京介くん策士~。』

「だろ?幼なじみを助けるために俺も一肌脱いじゃったのよ。」

 京介がそういうと、ミー子が顎を手でなでながら考え始めた。

「ど、どうしたの?」

『いや、小学生のころから一緒ってわけでもないけど、京介くんも幼なじみだよなあって思ってね。』

「お、俺たち幼なじみだよな!?」

『そうかもね。』

「お、アヤとかがみんじゃん。」

 4組の教室から、祈木が出てきた。

 俺らを見て、すっと京介の横に移動する。

「アヤと組んでかがみんのこと助けるなんてやるじゃんなーみん。」

「俺もたまにはやれるんだよ。」

「うんうん、あたしの大事な友達を助けてくれてありがとね、なーみん。惚れなおしちゃった。」

「そ、そこまで・・・えっへっへ。」

 京介が分かりやすく照れる。

「アヤもお疲れさま。2回も彼女を助けるだなんて、かっこいいじゃん。」

「当たり前・・・と言いたいところだけど、本当に何もなくてよかったよ。」

「夏央、だいぶ我慢してたもんね。」

「ああ、いつ殴ろうかとずっと考えてた。」

「そんなにやばかったの?」

『京介くんの録音に入ってるから、聞いてみるといいよ。』

 聞かせるもんじゃねえだろそれ。

「聞いちゃっていいもんなの?」

『まあ、陽花ならいいかな。私は吐いた。』

「えぇ・・・。」

 祈木が微妙に引く。

 ああ、実際聞いたらもっと引くと思うぞ。

「じゃあ、俺たち職員室に行かないといけないから。」

「お、そうなんだ。いってら~。」


「あ、絢駒くん・・・。」

 職員室で、谷岡先生が待っていた。

 その顔は、明らかに疲れている。

「ミー子と京介も連れてきました。」

「うん、ありがとう。話を聞きたいところだけど・・・ちょっと、場所を変えようか。」

 先生と一緒に移動する。

 連れていかれた場所は、なんと生徒指導室。

 来たのは初めてだ。

「安心してね。別に悪いことってわけじゃないから。」

『先生、今夜はゆっくり休んでくださいね。』

「ありがとう。」

 多分、初めての3年生の担任で、退学者を出してしまったのがショックなんだろう。

 真面目そうだし、気に病まないといいけど・・・。

「昨日の夜、何があったか教えてくれるかな?」

「昨日の夜の話からでいいですか?」

「・・・時間、ある?」

「ええ、最初から話しますよ。」


「そっか・・・それでストーカーを。」

「ええ、前からずっとミー子のことが好きだったみたいで・・・。」

「鏡崎さん、大変だったね・・・。」

『なっちと京介くんのおかげでなんとかなりました。』

「鈴波くんは・・・。」

「まあ、暴れられたら困るので逃がさないように見ていた感じですかね。話をつけたのは夏央ですよ。証拠ならここに。」

 京介が先生にケータイを渡す。

「・・・(ぴく)。」

「ミー子、大丈夫か?」

『10分くらいトイレに行ってきてもいいですか?』

 先生の話を聞かずに、ミー子が生徒指導室を出ていく。

 さすがにあれはもう聞きたくないようだ。

「結構過激な発言があるんですが、大丈夫ですか?」

「うん、先生はちゃんと知らないといけないから・・・。」

 録音したものを再生する。

「信じられない・・・。」

 鎌谷の言葉を聞いて、口を押える先生。

 鎌谷の発言にもだいぶショックを受けているみたいだ。

「私が気づいてあげられたら・・・。」

「いやいや、相談せずに自分たちで解決してしまったので、こうなってしまったのは俺たちのせいで・・・。」

「絢駒くんも鈴波くんも悪くないよ・・・。むしろよく頑張ったと思う。」

「ミー子は俺の彼女ですから。」

「夏央と美衣ちゃんは俺の幼なじみですから。」

 わざとらしく明るく、胸を張って答える。

 先生、そこまで気を落とさないでください。

「多分、先生が言っても鎌谷は止まらなかったかもしれません。」

「私じゃ力不足かな・・・?」

「ああいや、そういうことではなく。夏央が何を言っても聞かなかったんで、だれが何を言おうと鎌谷は止まらなかったかと・・・。」

「そっか・・・。私ダメだなあ。」

「そう悲観的にならないでください。先生がハイテンションじゃないと、俺たちも元気でないですよ?」

 京介がかっこいいことを言う。

 え、何、口説き落とすつもり?

「みんな、元気でない・・・?」

「ええ、先生が元気で笑顔を見せてくれるから俺たちも元気でいられるんですよ。」

「す、鈴波くん・・・!」

 ・・・後で祈木に報告だな。

『とりあえず、私は大丈夫です。なっちと京介くんは停学になりますか?』

「そ、そんなことはないですよ!絢駒くんも鈴波くんも、そのままいつも通り学校に来てくださいね!」

『そうだ、先生に訊きたいことがあったんでした。』

「なんでしょう?」

『ここにいるなっちは2年の時に停学になったんですが、AO入試で受験できますか?』

「あー・・・そういえば絢駒くん、停学になりましたね・・・。」

 どうやら知っているらしい。

 まあ谷岡先生も新任ってわけでもないし知ってるか。

「理由が理由なので、おそらくはできると思います。ただ、調査書に書かないといけないので少し評価が低くなることは覚悟しておいてください。」

「仕方ないか・・・。」

 まあミー子を守るためだし、後悔はしていない。

 くそ、吉田の野郎、俺に置き土産を置いて行きやがったな。

「私もちゃんと学校側に伝えるので、なるべく絢駒くんが不利にならないように努めます。もし絢駒くんが今回の件で鎌谷くんに暴行をしていたらアウトだったかもしれませんが・・・。」

 え、まじか、何もしなくてよかった!!

 京介が俺の肩に手を置いてドヤ顔でサムズアップをする。

 むかつくけどこればっかりは京介に助けられた。

 感謝だな。

「絢駒くん、私は絢駒くんの停学の理由を教師とのいざこざとしか聞いていないんです。しっかりと志望先に伝えるために私も停学の理由を知っておかなければいけないのですが・・・。」

『私がレイプされそうになっていたのでそれを助けてくれたんです。』

 ミー子が直球で言う。

 ちょっと待て。

「れ・・・え!?」

『私はなんて災難な女。』

「ど、同情します・・・。」

『同情するなら金をくれ。』

「あげられませんね・・・。」

「正確には、ミー子が先生に襲われそうになっていて、その上その先生がミー子の顔を殴ったので俺がやったんです。こいつを守るためです。」

『さすがにね、男の人に顔を殴られるのは痛かったよ。』

「え、美衣ちゃんそんなことされてたの!?」

『言ってなかったっけ?』

「顔を殴られたのまでは知らなかったよ!」

 あれ、京介知らなかったのか。

「うわー、もし俺もその場にいたら吉田のこと殴ってたなー!」

「そうなってたら俺と同じ状況になるな。」

「・・・お、おそらく正当な理由があるので入試は大丈夫だと思います。ただ、もしかしたら面接で聞かれてしまう可能性もあるので、応えられるようにしておいた方がいいと思います。」

「そうですか、ありがとうございます。」

「じゃあ・・・今日はこれで大丈夫です。時間をいただいちゃってごめんなさい。あと・・・お疲れさまです。」

 ・・・まあ、確かにいろいろと疲れたかもしれない。

 これからバイトかー。

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