女三人寄れば・・・
「うおおおこりゃうめえぜええ!!!!」
「うるさいよ、うるさい。」
京介が大騒ぎしながらガトーショコラを食べる。
「アヤったらいいもん作るじゃないのー!」
「何言ってんだ、俺だけじゃないぜ。」
「かがみん、おいしいよー!」
『あざす。』
一昨日作ったガトーショコラを、学校に持ってきた。
昼休みまで俺のロッカーに入っていたため、俺のロッカーは今芳醇なチョコの香りが漂っている。
・・・あれ、芳醇って、チョコレートには使わないんだっけ。
「というか、まさか鈴波くんの彼女が陽花だったとはねー。」
「ねー。」
秋島と五十嵐が祈木の方を見た。
「そーそー!あたしはなーみんの彼女なんだよねー!」
「最近誘っても付き合い悪いなーと思っていたけどー。」
「陽花ったら自分のことはなかなか話してくれないもんねー。」
秋島と五十嵐が祈木に顔を寄せる。
「どういう関係?」
「いつの間にか知り合ってた仲。」
なんだそれ。
「確か1年の時、陸上頑張ってるらっしーを見てたら秋ちゃんが来て、そこから意気投合しちゃいました!・・・みたいな?」
よく分からないけど、らっしーが五十嵐で、秋ちゃんが秋島だということは分かった。
「ほうほう、これは絢駒くんと鏡崎さんの愛の結晶、と・・・。」
「変なこと言ってんじゃねえぞ相沢。」
「いいじゃないのいいじゃないの。おいしいよ愛の結晶。」
「待て、その言い方やめろ、ほんとやめろ。」
『私はいいと思うよ愛の結晶。なんたって私たちほら。』
そういって、ミー子が俺と肩を組む。
『家族。』
久しぶりだなー、これ。
いつのネタだっけか。
「家族じゃねえわ。」
『なっちがツンツンしてるー。』
「るー。」
「るー。」
秋島と五十嵐が乗ってくるのが非常にうっとうしい。
「るー。」
祈木も乗るな!
「るー。」
「ぶっ飛ばすぞ京介。」
「ねえなんで俺だけ扱いがひどいの!?」
「お前はそういう扱いなんだよ。」
『というわけで私も京介くんをぶっ飛ばす。』
「美衣ちゃん!?」
「なんかかがみんがあたしの彼氏を下の名前で呼んでるー!?」
やばい、周りが超騒々しい。
これうるさすぎませんかね?
「絢駒くんの周りって本当に女の子多いよねー。」
秋島がそんなことを言ってくる。
まあ確かに女の子は多いけど・・・。
「女たらしー。」
「女たらし!?」
そんなこと言われたの初めてなんだけど!?
『なっちは女たらし、これ常識。』
「常識!?」
いつの間に常識化されたんだい!?
「美味しかったよ、絢駒くん。また愛の結晶、食べさせてね。」
「マイペースだなお前は!!」
一人だけ黙って食ってやがった!
「女三人寄れば姦しいとはよく言ったもんだ。」
『まったくだ。』
「あなたも含まれますからねミー子さん。」
『何言ってんだ、私は音を出さない省エネだぞ!地球環境にやさしいんだぞ!』
「ちょっと何言ってるか分からない。」
あなたの喉は省エネしないでください。
早く声が聞きたいんです。
「ちょっとー、私たちはうるさくしてないと思うんだけどー。」
「あたしもうるさくないと思うんだけどー。」
「どの口が言うか。」
『まあでも中心は陽花よね。』
まあ、うん。
あいつはね?
「私は黙って食べていたよ?」
「一番場を乱してくれたのは相沢だよ。」
「ちょっと心外だなー。」
自覚がないのは厄介だな。
「でも本当においしかったなー。あたしまた食べたいなー。」
さりげなくわき腹のあたりを触ってくる五十嵐。
「やめんか。」
触ってきた手をはたき落した。
「あっ、ちょっと痛いー。」
「俺に触るとやけどしちゃうぜ?」
『やだなっちキモイー。』
「キモイー。」
「もいー。」
うん、やっぱりやかましいわこいつら。
『さりげなくボディタッチをする五十嵐さん、手練れかな?』
「触られても困るんだけど。」
『触っていいのは私だけだもんね。』
「別にそんなことは言ってないが。」
あんまり体にベタベタ触られるのは好きじゃない。
てか、そういうのが好きな人っているんだろうか・・・。
『来週も持ってくる?』
「毎週持ってきたら体重が気になっちゃうかもしれないぞ。」
『たまにでいいか。』
「たまにでいいと思うよ。」
後は家族で食べたり、たまには、自分たちで食べたり。
作ったお菓子を食べながらゆっくりするのも楽しそうだ。
『こういう練習が、将来につながっていくのかな。』
「そうだろうな。」
『頑張っていかないとね。』
「そうだな!」
「それでは5限の授業を・・・ん?」
授業を開始しようとした先生が辺りを見回した。
「何か甘い匂いがするね?」
鼻がいいなこのおじいさんは。
ノートを広げると、なんか変なぐちゃぐちゃの線が書いてあった。
あれ、俺この前の現国の授業寝てたんだっけ。
『面白いノートだね。』
ライン送ってくるんじゃねえ。
サイレントマナーモードにしてなかったらやばかった。
まあ、週4回ある現国の中で、そのうち2回が5限にあるのが悪い。
こんなの眠くなっちゃうよ。
おじいちゃん先生の朗読何とかしてくれよ。
「それでは読んでいくので、聞いてなさいね。」
はじまる!
やめてくれ、その朗読は俺に効く。
何でそんなお経みたいな読み方なんだ。
意識が遠くなっていっちゃうじゃないか。
鋼の精神で睡魔に勝たなきゃいけないが・・・!
あれ、ミー子が寝そうになってる。
秋島と五十嵐も寝そうになっているじゃないか。
京介は・・・ああさすが、あいつはちゃんと授業聞いてるんだな。
さすが成績優秀者は違うなあ。
京介が俺の視線に気づいたのか、にやにやした顔を見せる。
なんだよ、俺はそんなに眠そうな顔をしてるのかよ。
『めっちゃ寝そう。』
ミー子が手話で伝えてくる。
俺も寝そう・・・。
太ももをつねって襲い来る眠気に対抗する。
眠い眠い眠い・・・。
いや大丈夫、ちゃんとノートさえ書いていれば!
・・・朗読中だから特に書くことはねえんだよな。
睡魔には勝ってやるぞ。
おじいちゃん先生に負けてたまるか!
勝てなかった・・・。
ノートには舟を漕ぎながら書いた文字の様な何かがぐっちゃぐちゃになっている。
これはひどい・・・。
『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww(^д^)m9』
「おいコラ。」
『なんですかwwwこのノートはwww』
完全にバカにされてますね・・・。
「絢駒くんのノート、面白いことになってるねー。」
「おい秋島、今自分のノート隠しただろ。」
「そんなことない。」
「秋島ちょっとノート見せろ。」
「わー絢駒くんにー襲われるー。」
「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえ!」
『浮気と取ってよろしいか!?』
「よろしくねえ!」
「花乃子は私が守るよー。」
「やー、開耶ったらたのもしー。」
「うるせええええええええええええええ!!」
こいつらみんなして俺を困らせたいのか!!
これは疲れる・・・。
「面白そうなことしてるじゃない。私も混ぜ・・・」
「頼むから混ざらないでくれ。」
「私だけ仲間外れということだね?」
違うんだ、ここに相沢が混ざるとさらにめんどくさいんだ。
カオスな状況とでもいうべきか。
いや今でもだいぶカオスな状況だけど。
「相沢ちゃんが仲間はずれだなんて、かわいそー。」
「そー。」
「秋島と五十嵐はもう黙っててくれ。」
『そー。』
お前も乗るなァ!!
「鏡崎ちゃんの彼氏、面白いね。」
「いじりがいがあってあたしは好きだよ。」
『あなたの好きは怪しいので却下させてもらいます。』
「まだ何もしてないのにひーどーいー。」
どうしよう、とんでもなくめんどくさい。
いや嫌いじゃないけど。
「か、鏡崎さん・・・ふっ、ふへっ・・・。」
ミー子に聞こえないような声で、鎌谷が不気味に笑った。
うーん、こいつ絶対危険なやつだよな・・・。
そもそもこいつ、初対面からなんだか俺やミー子のことを知ってるようだったけど、何者なのか分からない。
そんでもって毎日後ろからミー子を見ては笑っている。
怖いんですけど・・・。
「ミー子、鎌谷が呼んでるみたいだぞ。」
『なんですか。』
「えっ!?ぼ、僕ぅ!?な、なんでもないよ!」
「今鏡崎さんって呼んでなかったか?」
「そ、そんなことないよ!やだなあ絢駒くん、聞き間違いなんじゃない?」
何もないと知って、ミー子は相沢の方へ向き直る。
「絢駒くーん、私また絢駒くんの作ったお菓子が食べたいなー。」
「昼休みに食べたばかりだよな?」
「あたしも食べたーい。」
「昼休みに食べたばかりだよな?」
「あ、私も食べたいな。」
「昼休みに食べたばかりだろ!?」
「私だけ反応違くない?」
「3回目だからだよ!!」
そろそろ6限の授業が始まる。
授業の用意をしようとしたその時。
「・・・!!」
「!?」
鎌谷にものすごいにらまれた。
なんだ今の顔。
俺、こいつの気に障るようなことしたか?
てかなんであんな敵意むき出しの顔を・・・。
「授業始めるぞー。」
「絢駒くん絢駒くん、お話があるんだけど。」
掃除の時間、手を動かしながら秋島が話しかけてきた。
器用なやつだ。
「なんかあるのか?」
「なんかあるっていうか、絢駒くんなら分かってるでしょ?」
「何が?」
「・・・鎌谷くん、だっけ?なんか怪しくなーい?」
「そういうことか。」
確かに怪しいと思っているけど、秋島も気づいていたか。
「それ、あたしも思ってたー。」
五十嵐も近づいてきた。
まあ、あんな感じでフヒフヒ言ってたら、さすがに分かるか。
「おーいおい、掃除はちゃんとやってよー。鎌谷ってのが気になるのは分かるけどー。」
相沢まで近づいてきた。
「あれでしょ?あの人鏡崎さんのことが好きなんでしょ。」
「そういうこと、なのかなあ。」
「でなきゃ絢駒くんのことを何度もにらんだりしないと思うよ。」
「え、俺そんなににらまれてるの?」
「まあ、絢駒くんが見てない間は?」
こわっ。
「あれ、多分絢駒くんのこと邪魔だと思ってるんだよ。なんかストーカー的な何かを感じる。」
そういうことかあ・・・。
ならミー子を守ってやらねば。
にしても、去年の吉田といい、今年の鎌谷といい・・・ミー子には変な男が引っ掛かりますね・・・。
悲しい思いはさせたくないので、今回はちゃんと守ってやるぞ。
「私の力じゃ男子には勝てないしー、私も鏡崎さんを見てることにするよ。なんかあったら絢駒くんに言うねー。」
「おう、すまんな。」
「任せたまえー。それとー。」
「それと?」
「すまんな、よりもありがとうの方が、女の子としてはうれしいと思うよー。」
・・・おお、前にも誰かに言われた気がする。
ミー子だったか、春姉だったか・・・。
あれ、俺が言ったんだっけ?
にしても、大切な言葉を忘れていた。
いかんいかん。
「すま・・・いや、ありがとう、秋島。」
「へいへいどいたまー。」
「あたしも鎌谷くんのお隣だから、ちょっと見てようかなーと思うよ。」
「五十嵐、ありがとう。」
「どいたまー。」
「私は一番前だからなんもできないかもしれないけど、それとなく気はかけてみるよ。」
「ありがとな、相沢。」
「お、今回は普通に感謝だ。」
「別に俺相沢に冷たくしてるわけじゃないからね?」
「そうだったんだね、意外。」
このヤロウ。
まあともあれ、しばらく鎌谷のことを見ていることになった。
ちょっとあれは異常だしな・・・。
『よう帰ろうぜ彼氏。』
「分かったぜ彼女。」
なんというか、文章だといくらでもキャラを作れて楽そうだなあ。
ミー子は文章だけだと割とふざけた性格をしている。
ノリがいいのはいいことなんだけどな。
ただ、本人は独占欲が強いと言っていた。
きっと、キャラを作って過ごすことができるのは、楽なんだろう。
『なんか考えてる?』
「いいや?」
『怪しいぞい。』
「なんもないって。」
そう、ミー子って結構鋭いんだよな・・・。
『あれか、今日は女子がうるさかったなあ。ってか。』
「否定しない。」
『しないんだ!?』
本当のことなんだから否定なんてしませんよ。
「ミー子、今日はバイト?」
「・・・(こくり)。」
「そうか、夜道には気をつけろよ。」
『私を好き好んで狙う男っているのかな。』
「いるかもしれないだろ?」
『ぱっと見男に見えない?』
「見えないな。」
髪も伸びたしな。
今では、毛先は胸のあたりまで到達している。
『そろそろちょっと切ろうかなって思う。』
「そこはミー子の好きにしたらいいと思うぞ。」
『どのくらいの長さが好き?』
「あれだ、鎖骨のあたりまでくらいが好きかな。」
『じゃあそれくらいにしようかな。』
「ミー子はそれでいいのか?」
『もちろん、なっちの好きな私でいたいからね!』
なんてかわいいことを言ってくれるんだこの子は。
『さて、帰りますよ。バイトの準備しなきゃ。』
「そうだな、早めに帰ろうか。」
ミー子がバイトに出掛けた。
・・・ストーカーとか、大丈夫かな。
ストーカーに関しては、俺が一度経験あるからな・・・。
ちょっと・・・いや、かなり心配だ。
「うーん・・・。」
『なつくん?なにをどたどたしてるの?』
部屋の扉がノックされた。
・・・おっと、部屋をずっとうろうろしていたようだ。
いかんいかん。
「ごめん春姉、なんでもないよ。」
『そう?何もないならいいんだけど・・・。』
ごめん、何もなくない。
でもこの問題は春姉を巻き込めないよなあ・・・。
誰か、協力してくれる人は・・・。
だからと言って、俺とミー子のために自分の時間を割いてくれる人なんて・・・。
学校でなら、秋島や五十嵐が手伝ってくれるらしいが・・・。
・・・自分の彼女は、自分で守るしかない。
夜、ミー子がバイトを上がったら迎えに行こう。
それまで何をしていようか。
もし、鎌谷がいたらどうしてやろう。
殴ってやろうか。
いやだめだ、偶然会うことだってあるだろう。
それに、俺の力だと多分ダメだ。
俺は別に腕っぷしが強いわけでもない。
太ったあいつに殴っても、威力が吸収されて終わりだろう。
もしかしたら、あいつが強い可能性もある。
俺ってばやっぱだめだな・・・。
今まで何度も力をつけるよう努力はしてたが、なぜか俺の力は一向に強くならなかった。
たぶん筋肉が全然ないんだろう・・・。
さて、ミー子を迎えに行く時間だ。
あらかじめ連絡はしておいた。
問題は一緒に帰ったとして、あいつが襲い掛かってきた場合だ。
逃げるしか選択肢はないが・・・。
どうしよう、前のあいつみたいにナイフとか所持してたら。
今度こそ死ぬんじゃないか・・・いやいや、ミー子を守るためだ。
怖気づいてなんていられるか。
店の中に入ると、店長が出迎えてくれた。
「あら?絢駒くん!どうしたの?」
「あ、ええ、バイト帰りのミー子を迎えに・・・。」
「わお、やるじゃん彼氏ぃ!美衣ちゃんはもうちょっとで上がるから待っててね!コーヒー入れてあげる!」
わーいコーヒーだー!
「苦くないようにお願いします!」
「絢駒くんあまり飲めないんだっけ・・・?」




