表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Please speak!  作者: 長野原春
70/113

お菓子作りの時間です

『さてさて、土曜日になりました。』

「準備はできてるぜ。」

『さすがなっち、用意がいいじゃないか。』

「ちょっと楽しみだったんだよ。」

『何を作るのかね?』

「とりあえずチョコレート系の何か。」

『決めたガトーショコラ。』

「じゃあそれでいいや。」

 はい、というわけで作るものが決まりました。

 ガトーショコラですか、手軽に作れていいですね。

 楽だから割と好き。

『この量だと2つ作れるね。』

「1つは私たちで食べて、もう1つは学校に持っていこう。秋島とか五十嵐とか食うだろ。」

『多分京介くんも陽花も寄ってくるよ。』

「相沢も来るかな。」

『女ばっかりじゃねえか!!』

「すまねえ、俺の周りには女が多いんだ。」

『この女たらしがぁっ!!』

「たらしてねえしっ!!」

 まず材料を用意します。

『どっちが何をしようか。』

「チョコ刻みまーす。」

『じゃあ予熱を設定して粉をふるっておきまーす。』

 ああよきかな分担作業。

 楽なんだよな、分担すると。

『ほれバター。出し忘れてたぞ。』

「お、すまねえ、ありがとな。」

『私ったら良妻賢母。』

「まだ結婚してねえしお母さんになってもないけどな?」

『じゃあ良幼なじみ。』

「そりゃ言えてるな。」

 一緒にいると楽だし楽しい。

『生地を作りましょう。』

「じゃあ俺はメレンゲを。あ、先にチョコを湯煎で溶かしておくか。」

 混ぜていきましょう。

 あんまり力を込めすぎてはいけない。

 お菓子は愛情を込めて作るもんだ。

 そーれおいしくなーれ、おいしくなーれ。

 メレンゲだけど。

『メレンゲをちょっと入れておくれ。』

「はいよ了解。」

 メレンゲを3分の1くらい入れて、薄力粉をふるい、ミー子が混ぜる。

 おお、優しい手つきで混ぜていきますね。

 そうそう、さっくり混ぜていくのが大事なんですよね。

「残りのメレンゲも混ぜるぞ。」

『はいよ。』

 残りのメレンゲを入れて、底からすくうように混ぜる。

 ・・・俺も混ぜたいっすね。

 来週は何か作れないかな。

 俺もやりたい。

『型に生地を流し込んでください。』

「はいよ。」

 円形の型に流し込み、2、3㎝の高さから落として中の空気を抜く。

『この時にできる小さい穴、かわいい。』

「これがかわいい・・・?」

『よく分からない感性ってあるじゃない?』

「えっ、それ自分で言うの?」

 さて、オーブンに入れて180℃で45分焼きましょう。

 ここからは待ち時間。

「うまくできたんじゃないですかね。」

『そりゃおめー、あたぼうよ。』

「さすがっすね。」

「・・・(ドヤ)。」

 うわ久しぶりに見たミー子のドヤ顔。

『よし、疲れたから私は休もう。』

「はーいその前に使ったものを片付けましょうねー。」

『そっすね。』

 お菓子を作った後に待っているのはこの片付けるという作業。

 これが終わらないとお菓子作りを終えたとは言えませんねえ。

「俺洗いますわ。」

『じゃあ私はなっちが洗ったものをしまっておくよ。』

「了解。」

 使ったボウルや泡立て器などを洗っていく。

 ミー子がそれをキッチンペーパーでふき取って棚にしまう。

「どこに何が置いてあったとか完璧に分かるんですね・・・。」

『もっちろん。食器棚の中はすべて把握していますよ。』

「さすがっすね。」

 まあ年の半分くらいうちにいると言っても過言ではないくらいだからな。

 一緒に過ごしてる時間はかなり長い。

 俺も年の3分の1くらいはミー子の家にいるかもしれない。

 すげえ、それだけ一緒にいても全然飽きないとか最高かよ。

『ちなみになっちの部屋にあるエロ本もどこにあるか把握済み。』

「・・・え?」

『クローゼットの中の床下収納にあるよね?』

「知らないんだけど。」

『はい?』

「ちょっと待って知らないんだけど。俺の部屋のは処分したはずなんだけど。」

『確認してみる?』

「してみる。」

 部屋に入って、ミー子に言われたところを探してみる。

 床下収納の蓋を開けると、たくさんのエロ本が出てきた。

「あれえ?俺床下収納って使ったことないんだけど・・・。」

『小さいころに私がかくれんぼで隠れて大変なことになったよね。』

「そういえばそんなこともあったな。」

 確かあれは小学2年生の時。

 その時はこの部屋がまだ冬姉の部屋だったころだ。

 床下収納は子供が体を丸めれば入れてしまうくらいの大きさで、かくれんぼの時にミー子はそこに隠れた。

 鬼だった俺は床下収納なんて考えは思いつかず、冬姉の部屋に入るのもちょっと抵抗があったため、ミー子を見つけることができなかった。

 ミー子はいつまでたっても俺が見つけてくれないので、その中で寝てしまった。

 2時間後、ミー子が酸欠状態で発見された・・・という話だ。

「あれは子どもながらかなり焦ったな。」

『うんまさかあんな危険なことになるとは私も思わなかった。』

 子どもだからね、仕方ないね。

「そんでもってこれは誰のだ。」

『なっちのじゃないの?』

「うーん、俺は爆乳お姉さんってのは興味ないからなあ。」

 しまってあるエロ本のすべてが胸の大きなお姉さん特集だ。

 本を開くと、中から手紙が出てきた。

『母ちゃんに見つかるとまずいから退避させてくれ。』

 いつのものだか分からないエロ本だが、これだけははっきりとわかる。

「この字京介のだわ。」

『なっちがここにエロ本があるってことに気付いてなかったってこと?』

「そういうことだ。」

『そういうことか。』

「そういうことだ。」

 あいついつ俺の部屋にエロ本を置いてったんだよ・・・。

 しかも置きっぱなしってことはだいぶ前に置いていって本人も忘れてるんじゃねえの?

 あの野郎電話してやる。

『お?夏央から電話とか珍しいじゃん。』

「ああ、ちょっとな。」

『なんだなんだ?美衣ちゃんが出かけちゃって寂しいから俺に電話かけてきたとかか?』

「ミー子なら俺の隣にいるわ。お前俺の部屋に置いてったエロ本持って帰れ。」

『エロ本?そんなの置いてったっけ?』

「ああ、手紙付きで母ちゃんに見つかりたくないとかなんとか書いてあったぞ。」

『あー・・・あー!そういえば夏央の部屋に置いてったなそんなもん!確か3年くらい前に!』

 そんな前だったの!?

 ということは3年も前から俺は床下収納を確認してなかったってことになるのか・・・。

「・・・(つんつん)。」

 ミー子が俺のケータイのマイクのあたりを指でつつく。

『なんか耳元からカツカツいってるんだけど。』

「ミー子のいたずらだ。」

『ヘーイ美衣ちゃん愛してるゥー!』

「祈木に報告しておくわ。」

『ごめんなさい出来心だったんです。』

 それダメじゃねーか。

『私がこのエロ本を押収しておこう。』

「なんでだよ。」

『これを見て私も爆乳を目指す!できる気がする!』

「申し訳ないけど絶対無理だと思う。」

『おいおい夏央、電話越しで聞くといきなり独り言を話し始めたみたいだぞ。多分美衣ちゃんとしゃべってるんだろうけど。』

「お、すまんな。」

 まあ相手からすればミー子は無言だからな・・・。

『まあそのエロ本はもう俺には必要ないし、夏央にやるよ。』

「いらねえよ。爆乳は趣味じゃねえんだ。」

『まあまあ、俺からのプレゼントってことで!じゃな!』

 電話を切られた。

 あんにゃろ・・・今度縛って捨てるか、エロ本。

「読むな読むな。」

『気になるじゃん。』

「ミー子って時々俺よりも男子高校生らしいよな・・・。」

『そこが私のいいところ。とっつきやすいでしょ?』

「まあな。」

 下手に女の子女の子してるよりはいいかもしれないけど、こいつしゃべらないからなあ・・・。

 ってか、とっつきやすいとか言っておきながら人見知りじゃありませんでしたか。

『てか男子って普段こんなもの読んでるんだね。』

「そうじゃねえの?」

『なっちはあんまり読まないの?』

「京介が貸してきた時にちょろっと読んでみるくらいしか・・・それに、普段からミー子が家にいたし。」

『その言い方だと私が常になっちに性的な目で見られてるみたいな言い方に感じられるんだが。』

「いやそういうわけではなく。」

 一緒にいたら読めないでしょうよ。

 いない時でもあんまり読まないけど。

『私の胸はもう絶望的なのかな?』

「子どもでもできりゃ少しは張るんじゃね?」

『それ育てるために必要だからじゃないですかー。』

「そろそろ焼けたかな。」

『話が変わった!』

 部屋を出て、キッチンへ向かう。

「おー、いい感じに焼けてるな。」

『いいね、超いい匂い。』

「じゃあオーブンから出して粗熱を取ってしまいましょう。」

「・・・(こくり)。」

 オーブンから焼けたガトーショコラを取り出す。

 うん、いい感じだ。

『この大きさだと6等分に切れるね。』

「春姉と冬姉、父さんと母さんと、あと那空(なあ)さんだな。」

『そしたら余った一切れは私たちで食べよう。』

「ああ、それでいいんじゃない。」

『あーんしてあげる。』

「家族がいたりするとそれは恥ずかしいな・・・。」

『まあでも7ガトーショコラは冷やしてちょっと固まってるくらいがおいしいし、食べるのは明日かね。』

「そうだな。」

 ケーキクーラーで冷ましてる間も暇なので、とりあえずソファに座った。

『ヘイヘイなっち。』

 ミー子が隣に座ってきた。

「どうした?」

『楽しかったね。』

 ミー子が微笑んだ。

 あーもう可愛いなミー子の笑顔は。

 控え目に笑うところがもう最高に可愛い。

「ああ、楽しかったな。」

『また来週も作ろうよ。練習にもなるしさ!』

「そうだな、いろいろチャレンジしていこう。」

『やった!』

 えへへ、とでも笑っているかのようにニコニコするミー子。

「・・・(びく)。」

 かわいくて思わずぎゅっとしてしまった。

「まったく、ミー子の笑顔可愛すぎかよ。」

『面と向かって言われるとちょっと恥ずかしいっすね。』

 ミー子の表情が硬くなった。

 恥ずかしがり屋なところも、また可愛い。

 なにしててもかわいいな俺の彼女は・・・。

『オラオラデレッデレの腑抜けた顔してんじゃねえぞマヌケェ。』

 たまにこんな厳しい言葉をかけてくるときもあるけど、長い付き合いの俺ならもうよくわかっている。

 これはミー子の照れ隠しだということを。

「あーもうかわいっ!」

『やめろー!!』

 ミー子の中で恥ずかしさが限界に達したのかじたばた暴れ出す。

 多分、周りから見たらイチャついてるようにしか見えないんだろうな。


 Side 春女

「わー、いい匂い。そういえばなつくんたちがお菓子を作るって言ってたっけ。」

 家の扉を開けると、濃厚なチョコの香りが漂ってきた。

 おいしそうな匂いだなあ。

「あ、そうだ、冬華さんにも教えておこう。」

 きっと冬華さんもなつくんたちの作ったお菓子は食べたいよね。

 確か、チョコレートが好きだったような気がするし。

『冬華さん、なつくんたちがチョコのお菓子を作ったみたいだよ!』

 うん、こんな感じでいいかな。

 送信、っと。

『なんだとー!今日の夜行く!』

 返信はやっ!?

 1分も経ってないんだけど・・・。

 そういえば、なつくんたちの声が聞こえてこないなぁ。

 作り終えたから美衣ちゃんとゲームで遊んでる、とかかなあ。

 私もなつくんともっとお話ししたいんだけどなあ。

 ・・・か、彼女だし、もしかしたらなつくんと美衣ちゃんがえっちなことしてるとか!?

 ゆ、夕方から!?

 って私何考えてるんだろう。

 なんだろう、ちょっと前までなつくんの気を引こうとしてちょっとエッチな感じを目指していたせいか、いやらしいことを考えちゃうような気がする・・・。

「ただいまー。」

 リビングの扉を開けると、なつくんと美衣ちゃんが肩を寄せ合って寝ていた。

 ・・・ほんと、あんなこと考えていた私が恥ずかしくなる。

 仲いいなあ・・・うらやましい。

 なんか微笑ましい。

 写真撮っておこうっと。

「あれ、出しっぱなしだ。」

 キッチンに、ケーキクーラーに乗せたガトーショコラが2つ置いてあった。

 粗熱を取っている間に寝ちゃったのかな。

 冷蔵庫に入れといてあげよう。

 ・・・なつくんと美衣ちゃんが気になる。

 男女が肩を寄せ合って寝ているなんて、なかなか見ない光景だ。

 いいなあ、私もなつくんと一緒にこんな風に寝たい。

 あ、でもなつくんと一緒のベッドで寝るのもいいなあ。

 ・・・なつくんが寝てる間にベッドに忍び込んじゃおうかな。

 いや、それはダメか。

 そんなのただの痴義姉だ。

 やっぱり、なつくん好きだなあ。

 ・・・くそう、美衣ちゃんがうらやましい。

 ちょっと、嫉妬しちゃうなあ。

 ・・・タオルケットでもかけてあげよう。


「・・・ん、寝てたか。」

 起きると、身体にタオルケットがかけられていた。

 ・・・おやおや、ミー子さんが隣で寝ているじゃないの。

 わお、2人でくっついて寝ていたようで。

 ということは誰かが俺らが寝ているところを見たということですかね。

 恥ずかしいっすね。

「・・・うん?」

 動こうとしたら、なんだか膝に重みを感じた。

「何してるんですかね。」

「・・・あれ?」

 俺の膝の上で春姉が寝ていた。

 そんなところに頭を置いておいたら首が痛くなりますよ。

「私寝ちゃってたのかぁ・・・うーん、首が。」

 ほらいわんこっちゃない。

「春姉がこれかけてくれたのか、ありがとう。」

「いいんだよ、可愛いものが見れたからね。」

 可愛いもの?

「え、ちょっと待って、なんすかそれ。」

「ふふふ、これだよ。」

 春姉がケータイの画面を見せてくる。

 なんと俺とミー子がくっついて寝ているシーンがバッチリ撮影されている。

「ちょまっ!!消してくれ恥ずかしい!」

「えー、可愛いからお父さんと秋穂さんと冬華さんと那空さんに見せるんだよ~。」

「最悪じゃねえか!!」

 見せられてたまるかっ!

「・・・(ごしごし)。」

 ミー子が頭を振りながら起きた。

 そんでもって目をこすっている。

 なんだその起き方。

「あ、美衣ちゃんも起きたね。」

『話は聞かせてもらった。』

「え?」

『写真を消させてもらおう!』

「だめー!」

 春姉がケータイを胸に抱え込み、上の部屋へ上がっていく。

 あー、自分の部屋に入ってしまいましたね・・・。

「俺とミー子が寝てる写真を後で公開されちゃうな。」

『やだちょっとすごい恥ずかしいんだけど。』

「俺も恥ずかしいんだけど・・・。」

『やっぱなっちの家で寝ちゃうのは危険だね。私たちが恥ずかしい目にあわされちゃう。』

「ミー子が恥ずかしい目に・・・。」

 ・・・。

 ・・・うん。

『何想像してんだ。』

 顔面をガッとつかまれた。

 もうちょっと手が大きければアイアンクローになっていたかもしれない。

 ミー子は手が小さいからな。

 家の扉がガチャッと開いた。

 母さんかな?

「お姉ちゃんのお帰りだー!!」

 なんかテンション高いのが入ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ