進路の話し合いです
「なあ、京介。」
「4月の屋上はまだ寒いぜ相棒。」
「今日の気温20℃あるんだけど。」
「俺はばあちゃんちが鹿児島だからな。」
「関係あるかそれ。」
昼休み、京介を読んで2人で飯を食っていた。
ミー子や祈木や、あと五十嵐もついてきたそうにしてたけど、2人だけだ。
今日はちょっと、そんな気分だ。
「京介ってさー、進路どうするの?」
「んー、どうしようかねえ。」
曖昧な返事を返す京介。
「進学にするんだろ?」
「ああ、まあね。大学に行こうと思ってるんだけど、どこにしようかねって話。」
「あー、大学が決まらないのかー。」
「そうそう、どこにしようかなー。」
京介の成績なら結構いろいろなところに行けそうだ。
成績優秀者で毎回壇上に立ってるしな。
「めぼしはついてるのか?」
「だしも取れないなー。」
「それにぼしだしなんもうまいこと言えてねえよ。」
そもそもキミ料理できないよね。
「なあ夏央。」
「なんだ。」
「俺らの高校ってさ・・・偏差値あまり高くないじゃん?」
「え、話変わっちゃうの?」
「いくつだったっけか。」
「え、聞いてくれないの?」
何こいつ。
「いいから、教えてくれよ。」
「普通科の偏差値は47だよ。」
「だよな。そんな高校から・・・そうだな、早稲田とか、慶應とか、明治とか進学できたら・・・学校としても鼻が高くないか?」
「それなら東・・・」
「そこは・・・さすがの俺でも無理だ・・・。」
食い気味で言われた。
そりゃ残念な話だ。
「ってことはなんだ、京介くんってば、そんないいとこ目指してんの?」
「まあ、目指してみようかなってな。」
「かっこいいじゃないの~。」
「ちょっとちょっと、口調が女の子になってるわよ、夏央くん。」
「あらあら、そっちこそマダムになられてますわよ、京介さん。」
「「HAHAHAHAHA」」
・・・なんだこの会話。
「つまり京介はこの学校の卒業生の中でかなりいいところを目指すと。」
「まあそういうことだ。勉強しないとなー。」
「あ・・・そっか、そこら辺の大学は推薦とかないのか。」
「そうそう、力勝負だよね。」
「へーすっごい・・・。」
俺は足元にも及ばないな。
「祈木はどうするって?」
「陽花も大学を目指してるってよ。保育士だって。」
「あー、子供とか好きそうだな。」
「そうそう。あたしに合ってるでしょ~!って言ってた。」
「確かに合ってるな・・・。」
祈木は人の面倒とか見るの好きそうだもんなー。
「夏央と美衣ちゃんはまあ・・・製菓方面だよな。」
「まあ、そういうことだ。」
京介が、少しだけ寂しそうな顔をした。
そりゃ俺だって寂しいさ。
京介との付き合いはもう6年目に突入している。
男の中で、俺の一番の仲良しだ。
そいつと、あと1年で一緒にいられなくなるんだもんなあ・・・。
「専門学校ってことは、遊ぶ暇もなさそうだよな・・・。」
「正直そこは覚悟してる。」
「そのまま就職ってことになったら、俺と夏央は全然会えなくなっちゃうってわけか。」
「そういうことになる・・・な。」
・・・少しくらいなら遊べる時間はある・・・よな?
「うーん、俺は陽花も一緒の大学には行けないし・・・一人かあ、やめようかな。」
「メンタル弱すぎだろ。」
「いやほら、俺ってば寂しがり屋じゃん?」
「じゃん?って聞かれてもな・・・。」
確かにそんな気はしなくもないけど。
「大学同士なら別にそこまで会えないってわけでもなさそうだし、大丈夫じゃねえの?祈木もサバサバしてるけど内心京介のこと大好きだし。」
「あっ!そうだろそうだろー!やっぱわかっちゃうよなー!陽花は俺のこと大好きだもんなー!俺も陽花のことは大好きだしなー!」
「はいはい。」
そんなこと俺たちにも言えるしな。
俺、ミー子、大好き。
ミー子、俺、大好き。
「あ、そういえば夏央、後ろに座ってる子に告白されたらしいじゃん。」
「おい待てどこ情報だそれ。」
どこ情報ってだいぶ絞られるけど。
「美衣ちゃんから聞いたぜ?」
やっぱりミー子かっ!!
「まあ、そうだな、そうだよ。」
「モテモテじゃん。」
「彼女いますし。」
「美衣ちゃんが本命で五十嵐さんは・・・。」
「ちょっと待てその考えはまずい。」
なんというか、男としてまずい。
「まあ冗談だよ。いいなぁー、俺も告白とかされてみてーなー!」
「彼女がいるとな、クッソ複雑な気分だぞ。」
「ほうほう、俺も大学とか入ったら機会あるかもなー!」
「・・・京介はねえな。」
「なんっでだよっ!!」
『今日の昼休み、京介くんとどんな話を?』
帰り道、ミー子が聞いてきた。
ちょっと気になってたのかな?
「あれだ、ミー子はかわいいなって話をしてたんだよ。」
『やん照れる。で、何の話をしてたんだい?』
「祈木もかわいいよなって話をしてたんだよ。」
『え、ちょっと浮気?で、何の話をしてたのよ。』
「五十嵐の話。」
『どうせ進路の話だろおおおおおおおおおおお!?』
「分かってんなら聞く必要ねえだろうがあああ!!」
通行人にぎょっとされた。
周りから見れば、俺が急に叫び出したように見えるもんな、そりゃそうだよな。
『確かに京介くんは大学目指すとか言ってたし、私たちは専門学校だから進学しちゃったらなかなか会えなくなるもんね。』
「なに?俺たちの話聞いてたの?」
「・・・(ふるふる)。」
ミー子が首を振って否定する。
なんだい?キミはエスパーか何か?
「今日はミー子バイトだっけか。」
『そうそう。なっち、今週の土曜日ヒマかな。』
土曜日か。
別にバイトもないし京介とかと遊びに行く予定もないな。
「ヒマだな。」
『オッケー、じゃあ久しぶりに一緒にお菓子でも作りましょうよ。』
「そういえばそういうのもやっていかないとだよな。了解、土曜日な。」
『夫婦の共同作業だね☆』
「夫婦じゃないけどな。」
『いいのいいの、いずれ夫婦になるんだからさ。』
なんと・・・ミー子はそこまで考えてくれていると。
なんというか・・・うれしいじゃないか。
「というか、案外ミー子と京介って結構喋ってるよな。」
『中学のころから仲いいじゃない。それになっちがいない時は結構喋ってるし、ラインもしてるよ。』
「知らなかったわ。」
『言うとなっちが嫉妬しちゃいそうなんだもん。』
「しねえわ。」
うん、しない・・・しない。
『今ちょっとしてるよね?』
「べべべべ別に嫉妬なんてしてねえし。」
『まあつまりはそういうことだよ。ささ、私もバイト行かなきゃいけないから、早く帰りますよ。』
あ、へー、そんなに仲良かったんだね。
そこまでは知らなかったなー。
「あれ、なつくんお帰りー。」
「ただいま、春姉だけ?」
「うん、秋穂さんもお父さんもまだ仕事。」
家に帰ると、春姉がリビングでくつろいでいた。
「どうなのなつくん、進路は順調かね。」
「うーん、先生との面談では応援するって言われたよ。」
「そりゃよかった!入試はどうするの?」
「AO入試にするよ。」
「おおー、時間厳しいから、頑張るんだよ。」
「もちろん。」
よしよし、と春姉が俺の頭をなでてくれた。
甘やかしたいお年頃的なやつかな?
「どう対策するのかな?」
「面接練習は学校の先生にやってもらうとして、小論文も現代文の先生に見てもらう。あとは課題だな。」
「課題かー。製菓の専門学校だし、お菓子の課題だよね?」
「たぶんそうだと思う。だから、今週の土曜はミー子と練習するってことになってる。」
「そうなんだ~!私に食べさせてくれてもいいんだよ~?」
「それはどうかな~。」
「なんで~!?私食べたいよ!?なつくんの作ったお菓子食べたいよ!?」
春姉ががばっと詰め寄ってくる。
「ちょっと必至すぎやしませんかね!?」
「私も大学3年生になってさー、いろいろ疲れちゃうからさー!甘いものとか、癒しがほしいんだよ~!」
「お菓子で癒しになるのかな。」
「なるよ!ついでにこうするとかなり癒されるよ!」
春姉にぎゅっとされた。
あ、温かい・・・。
っていやいやそうじゃなく。
「いきなりそんなことされても!」
「きゃん!」
春姉をぐいっと押して遠ざける。
一瞬胸に触れてしまったのは黙っておこう。
「分かった、作ったお菓子は春姉に食べさせてあげるから。」
「やった!」
このままだと春姉がいろいろ危ない人になってしまうかもしれない。
「とりあえず膝枕させてよなつくん。」
「春姉俺をどうしたいの?」
「いやー、なつくんのお世話したいね。」
「俺は基本的に世話してもらわなくても大丈夫です。」
「えぇー。」
とはいいつつ、俺の頭をぐいっと動かし、膝の上に乗せる。
「・・・あら、今日は耳キレイだね。」
「たまにミー子にやってもらったりしてるからね。」
「いいなあ、私もやりたいなー。」
「彼氏にしてあげなさい。」
「私に彼氏なんていないしできたことないの、知ってるでしょ?」
春姉の表情が暗くなった。
「ずーっと俺の頭をなでていますね。」
「なつくんの髪、触ってると気持ちいいんだよ?」
頭をなでられるのは悪い気分じゃない。
「少し髪伸びたね。」
「ああ、そろそろ切りに行かないとな。」
「いっそ丸刈りにしちゃう?」
「なんでそういう選択肢が出てきたんだ。」
「いやー、なつくんが丸刈りにしてもかわいいかなって思ってさ。」
「残念ながら断る。」
生まれてこの方、これは坊主にしたことはない。
でも坊主の頭って触るとジョリジョリして気持ち良かったりする。
野球部のやつとか、年中坊主だったような気がする。
「にしても、なつくんがパティシエかあ。」
「似合わないかな。」
「そんなことないよ!むしろ似合ってる。お店開いたら、私毎日でも行きたいな。」
「どうぞどうぞ、来てくれれば来てくれた分だけ売り上げが上がるからね。」
「えーなにそれ打算的ー。」
「いやほら、店を続けていくにはお金も必要ですからね。」
「じゃあ、毎日でも買いに来たくなるようなお店にしないとね。」
毎日でも買いに来たくなる・・・。
どういうお店なんだろう。
お菓子の味?
見栄え?
店の外観?
中の雰囲気?
うーん、どういうもんだろうな。
「お姉ちゃんは、いつでも応援してるからねー。」
俺の頭をなでながら言う姉。
すげえ包容力だ。
「よーっす、お姉ちゃんの帰還だぞ~。」
リビングの扉が開いた。
そこに立っていたのは、俺の実姉、冬姉だ。
「冬華さん!お帰りなさい!」
「おー、冬姉お帰りー。」
「何この状況。」
冬姉から見たら愛する弟が帰ってきたらいきなり義理の姉に膝枕されて寝っ転がっている状況だ。
しかも義姉の手は俺の頭の上だ。
「あれあれ?春女と夏央っていつの間にかそういう関係?」
「違うよ?」
「え、じゃあこのうら・・・すごい状況?」
今なんて言おうとしたんだこの姉は。
「私が無理言ってなつくんに膝枕させてあげました。」
「ああ春女が膝枕させてって頼んだんだ?」
「なつくんったら素直に膝枕させてくれるんだよ、かわいいよね。」
「ちょっと待って、俺を膝の上に引き倒したの春姉だからね?」
「あー、そうやってばらしちゃうー。さっき私のおっぱい触ったくせにー。」
「いぃっ!?」
バレてた!?
「夏央?」
「不可抗力!不可抗力!」
ぐいっと押したから仕方ないよね!?
「まったく夏央ったら。そういうことはねえ・・・お姉ちゃんにやれっ!!」
「やるかっ!!」
実の姉の胸触れっておかしいだろ!!
「お姉ちゃんはいつでも大歓迎だって!弟ならぜんぜんばっちこい!」
「このブラコン!」
弟に喜んで胸を触らせる姉・・・。
やっべえなこの人。
「というかこの状況でずっと膝枕続けてるあんたたちすごいね。」
「俺もそれ思うんだけど、春姉が俺の頭押さえつけてるんだよね。」
これで仮にミー子が突撃して来ようもんなら拗ねられること間違いなしだ。
もしくはミー子にも膝枕されるか。
ああ、でも一番帰ってきてめんどくさいことになるのは父さんだな。
「ちょ、ちょっと春女、そこ代わって。」
「え、えぇー・・・代わりたくないんだけど・・・」
「お姉ちゃん命令だ!どけい!」
「きゃー!」
ぐいっとどけられ、膝の感触が変わった。
春姉がの太ももから冬姉の太ももに移動するまでの間、エア膝枕をしてた俺の身にもなってくれ。
首が痛い。
「ほーらほら夏央、久しぶりの愛するお姉ちゃんの膝枕だぞ?」
「冬姉痩せただろ。」
「え、あたし痩せた?」
「前はもうちょっとぷにぷにしてた気がする。」
たしかあの時は冬姉が大学生の時だ。
となると俺が中学生の時だったか?
「最近仕事が忙しくてあんまり食べてないからかな。」
「食わなきゃ仕事にも身が入らないだろ。ちゃんと食ってくれよ。」
「やだもー、夏央がお姉ちゃんを心配してくれてるー!お姉ちゃんうれしい!」
話を聞け。
「冬華さん、ご飯ちゃんと食べてないの?」
「うーん、あたしは仕事を早めに終わらせて楽したいタイプだからね。多少の無理なら・・・。」
「身体壊すから飯くらいは食ってくれ。こっちに来さえすれば俺でも春姉でも母さんでも飯作るからさぁ。」
「ちゃんとご飯は食べないとダメだよ、冬華さん。」
「うーん、義妹と弟に言われてしまったな・・・本気で心配されてる?」
「当たり前だろ、家族で、実の姉だぞ。」
「私にとっても姉だもん。心配になるよ。」
「やべえ、お姉ちゃん愛されてる。」
言われて調子に乗る前に飯を食ってください。
・・・というか、冬姉に膝枕されると、ミー子や春姉とは違う光景が見られる。
冬姉の胸は大きいので、目が合っても鼻から下は見えない。
つっても実の姉だからなあ・・・。
「というか冬華さん、痩せても胸は大きさ変わらないんだね・・・。」
「ハッハッハ、胸の大きさはそう変わらないよ。」
「うぅ・・・。」
春姉が悔しそうだ。
仮に冬姉の胸が縮んだとしても春姉は・・・これ以上はやめておこう。
「んで、お姉ちゃんと春女、どっちの膝枕の方がいい?」
「春姉の膝枕の方が包容力ある。」
「即答!?」
残念ながら今の冬姉の太ももだと即答になってしまう。
「こりゃまずいな・・・あたしは夏央の一番の姉、夏央の望くらいかなえてあげられないと・・・。」
「一番の姉ってなんだ。」
「ちょっとご飯食べて痩せた分取り戻さないとか・・・7㎏か・・・。」
どんだけ食ってなかったんだよ。
そりゃ7㎏も痩せればすぐ気づくわ。
「あれかね、毎日朝はカロリーメイトなのがよくなかったかな。」
「ダメに決まってんだろ。」
その生活はアカン。
「今日やっと仕事が一息ついたからね。これからは夏央の言う通りちゃんとご飯食べるよ。」
「食ってもまた新しい仕事が始まって食わなくなったら意味ないからな。」
「ちゃ、ちゃんと食べますって。」
ほんとかなあ・・・。
「今日は夕飯誰だっけ?」
「なつくんだよ。」
「あっ俺か・・・。」
仕方ない、動くとしましょう。
「ああっ、夏央、まだお姉ちゃんの太ももの上にいてくれてもいいのにー。」
「夕飯作るんだよ。冬姉、ごはんは大盛りでいいよな?」
「えっ、あたしそんなに多く食べれないんだけど・・・。」
ええい知るものか、食わせてやる。
「特にやることないし、私も手伝うよ。」
春姉が一緒にキッチンに立った。
「とはいえ、今日は豚もやしと茄子味噌炒めだしな。すぐ終わりそうだな。」
「じゃあ私は茄子味噌炒めの方を作るよ。」
「そんじゃ俺は豚もやしだな。」
「うん、ぱぱっと作っちゃおうか。」




