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Please speak!  作者: 長野原春
68/113

対策の時間です

 Side 美衣

「さて、鏡崎さんの進路相談の時間ですね。」

『よろしくお願いします。』

 私の進路相談と言っても、私の進路はもう決めてあるんだけどね。

 行きたいところをそのまま言えばいいのかな。

「鏡崎さんは進学で、早稲田の製菓の専門学校でよろしいですね?」

「・・・!?」

 なんで知ってんのこの人。

 えっ、ちょっと怖いんだけど。

「あら、間違っていましたか?」

「・・・(ぶんぶん)!」

 頭を振って否定する。

 いや合ってるんだけど!

 そういうことじゃなくてね!

 いきなり進路当てられたら驚かないっすかね!?

「入試はAO入試でいいんですよね?」

 どこまで知ってんのこの人!?

「あら、鏡崎さんは一般入試ですかね?」

「・・・(ぶんぶんぶん)。」

 必死に頭を振って否定する。

 反応するからちょっと待ってよ!

 こっちはいろいろ当てられて超驚いてるんだよ!

 ・・・って。

『私「は」っていうのは。』

「絢駒くんがAO入試で入りたいと言っていて、鏡崎さんもここの学校だと聞いていましたので。」

 そういうことかー!

 それならなっちに聞きましたって先に言ってくれてもいいんじゃないかなー!

 ああ驚いたー!

『そういうことでしたか。先に言ってくれないといきなり当てられたのかと勘違いしちゃうじゃないですか。』

「いえ、絢駒くんから聞いていたのかと思いまして。」

『なっちから何か聞いたんですかね。』

「お付き合いしていると聞きました。」

 ああ、そこまで聞いてるのね。

「幼なじみなんですよね、ロマンチックです。」

『そうですかね。』

「いいですね、かわいいです。」

『その可愛いが何を指しているのかが分かりません。』

「幼なじみ同士の恋愛ということに関して絢駒くんと鏡崎さんが可愛く見えます。」

『先生が青春時代を懐かしむおばあちゃんのように見えてきました。』

「おばっ・・・!?」

 先生がちょっとだけショックを受けたように見えた。

「さて、AO入試となれば、面接練習と小論文の練習をしないとですね。」

『小論文・・・。』

「鏡崎さんには少しきついかもしれませんが、必要なことですよ。」

 国語は正直ちょっと苦手だ。

 化学式で論文書けないかな。

 無理か。

『私って面接とかはどうするんですかね?』

「AO入試の日までに鏡崎さんがそのままでしたら、私が学校に連絡を取りますよ。」

 あら、先生ったらやるじゃない。

『ありがとうございます。すごく助かります。』

「ちなみに、鏡崎さんは声を出したいとは思わないのですか?」

『出したいに決まってるじゃないですかやだー。今も声を出す練習をしてますよ。』

「そうなんですね、声が出ることを祈ってますよ。」

『卒業するまでには出しちゃいますよ。』

 応援されると自分がどんな声だか楽しみになってくるなー。


『というわけで、私も先生に応援されましたよ。』

「おっ、そうか。じゃあ頑張らないとなー!」

『そして、私が声を出す練習をしていることも、応援されました。』

「じゃあ、それも頑張らないとな!」

『私の声は、他のみんなにもちゃんと知らせるべき。声が出たら、みんなにちゃんとありがとうって言わないといけないよね。』

「そりゃそうだ。」

 いろんな人に助けられて生きてるもんな。

 京介や、祈木の存在だって大きいはずだ。

「小論文とか、どうしようか。」

『私文作るのとかめっちゃ苦手なんだけど。』

「そうなんだよなー、小論文と、あとは面接練習、そんでもって課題に対応できるように作れるお菓子のレパートリーを増やす・・・やべえ、やること多いな。」

『言われて気づいたけどほんとにやること多いな。入試まであんまり暇ないかもね。』

「ほんとだよ、しかもテストもあるからな。勉強もしないと。」

『AO入試って暇ないんだな。』

「やべえな。あと半年もないぞ。」

『ほんとだ半年ないな。私たち結構追い詰められてる?』

「まだ追い詰められてはいない・・・とは思う。今の段階から準備をしていかないと。」

 バイトもあるし、遊ぶ暇はないな。

 高校3年生は遊ぶ暇ないとはよく言うし、仕方ないか。

 まあ、入試に合格さえできればあとは卒業まで自由だからな!

「よーし、俺たちの力で合格までかぎつけちゃおうぜ?」

『なっちは普通にやる男だからね、私もついて行きますよ。』

「ミー子の方が頭はいいと思うんだけどなあ。」

『得意教科が違うだけで、どっちもどっちだとは思うんだけどねえ。』

 いやほら、理系って頭よさそうじゃん。

『文章とか考えたりするのは文系だし、日常的な意味では文系の方が頭よさそうに感じるのよね。』

「作文とかはあんまり得意じゃないんだけどな。」

『文の構成さえしっかりしてれば平気なんじゃないっすかね。』

「ちゃんと自分の考えも必要だぞ。」

 まあその自分の考えを書くのが難しいんだけどな。


「とりあえず、AO入試の対策をしよう。」

『一緒にやりましょう。』

 正直今のところ何をすればいいのかはあまりわかっていない。

 何をすればいいか、調べることも大切だよね。

『これ、まずは自己分析が大切だって。』

 ミー子がケータイの画面を見せてくる。

 自己分析をして、長所・短所を理解し、自分のアピールをすることが大切・・・ふむ。

「お互いの長所と短所を言ってみる?」

『やってみよう。』

 ミーコの長所か。

 入試でアピールできそうな長所といえば・・・そうだな。

「ゲームとか化学とか、あとは・・・俺へもそうだけど、好きなことには一直線っていうのは、いい長所だと思うな。」

『やだ、なっちに一直線ってのは本当のことだけど言葉にされると恥ずかしい。』

 俺も言ってて恥ずかしかったよ。

「お菓子作りだって、好きだもんな。」

『好きじゃなきゃあそこでバイトも続かないよ。』

「そうだよな。」

 もともと、俺に料理を教えてくれたのは中学生の頃のミー子だ。

 あの時から、料理も好きだったんだろう。

『ほれ、私の短所を言うてみい。』

「ミー子の短所なあ・・・。」

 もちろんミー子だって人間だし、短所がないわけないんだけど・・・。

「最近はあまりないけど、物事をネガティブに考えることあるよな。」

『最近のことにしませんか。あの頃の私はもういないのです。』

「そうだね。」

 改めて言われると、短所ってあんまり気にしたことなかったな。

 都合の悪いところは目を背ける、人間ってのは都合のいい頭をしておられるな。

「うーん、ちょっと気にしすぎるところかな?」

『と言いますと?』

「まあ、人に言われたことがかなり気になっちゃうところないか?」

『人の顔色が気になるところはあるかな。あと胸。』

「胸はまあいいとして、江ノ島に行った時も、俺が怒ったかどうとか、俺たちが普段あんまり恋人らしいことしてないような気がして危機感感じたりとか・・・あるよな?」

『ありますね。大いにありますね。そんでもって胸も大切よ?女のシンボルだもの。』

「俺の中でミー子は十分女なんだけどなあ。」

『いやほら、私まな板じゃないですか。』

 そこまではいかないと思うけど・・・。

 密着すれば当たるし。

『まあそこは女としてもうちょっとほしいなあって思うんだよね。ハルさんくらいでいいから。』

「割とちょっとした違いですな。」

 実のところ春姉の胸はミー子より少し大きいくらいだ。

 だからだれている時に見えそうになるんだけど・・・。

『あと、私の短所で言えば、やきもち妬くときがあるかも。』

「ほう。」

『なっちの周り、女性が多いですからねー。』

 ・・・そうですね。

 確かに俺の周りには女性が多い。

 ミー子を悩ませている原因だ。

 安心させてやりたいんだけど、なかなか安心してくれないのがミー子。

 まあ一緒に出掛けちゃったりする俺がいけないんだけども・・・。

『じゃあ、次はなっちの長所からいきましょうか。』

 ミー子が俺の目の前で正座した。

「あ、改まっちゃう感じ?」

『いつもは言わないようなことを言うんだし、こういう方がよくない?』

「そうされると恥ずかしいんだけど・・・。」

『まあまあ、まったく、かわいいところあるじゃないの。』

 ミー子に頭をなでられる。

 手の感触が心地いい・・・って、いやいや。

「い、言うんだったら言ってくれよ。」

『照れてるな?かわいいからぎゅっとしてやろう。』

 ミー子に抱きつかれる。

 温かいミー子の身体が、俺に密着する。

 ・・・やっぱり、女の子の身体ってのは柔らかいなあ。

「・・・いや、照れてるのってミー子だろ。」

「・・・(びく)。」

 ミー子が一瞬びくっと動いた。

「長所とか褒め言葉、面と向かって言うのが恥ずかしくて照れ隠しに抱きついたろ。」

「・・・(ふるふる)。」

「ほんとか?」

「・・・(こくこく)。」

 絶対照れ隠しだと思ったんだけど・・・。

 ミー子顔赤いし。

「まあほら、教えてくれよ。俺の長所と短所。」

『なっちの長所ね。なっちはとっても優しい。他人を気遣うことができる。あとノリがいい。人の話聞くの、得意だよね。』

「そ、そうかな。」

 俺優しいか。

 そうかそうか。

 なんか・・・面と向かって言われると、うれしいけど恥ずかしいな。

『短所、聞きたい?』

「まあ、自分を知ることが必要だからね。」

「・・・(にや)。」

 ミー子が悪そうな笑みを浮かべた。

『なっちの短所は、だれにでも優しくできちゃうところかな。だから、あんまり人に厳しく接することができないよね。あと、自分の意見を飲み込んじゃうこともある。たまには自分を出したっていいんだよ?私と一緒にいるときも、結構それは感じる。』

 たまには自分を出す、か。

 自分を押し出すことで、相手に迷惑じゃないかなとよく思ってしまう。

 一緒に出掛ける時も、相手が楽しいならそれでいいじゃん、と相手のペースに合わせることが多い。

 確かに、人に厳しくするのは、苦手だ。

 これが、俺の短所・・・。

『つーわけだ。だから、自分の長所と短所を面接のときに言えるようにして、アピールしていこうぜぇ?』

「短所をこれからどう対策していくかってのも面接でのアピールになるらしいぞ。」

『気にしすぎるってどう対策していけばいいんだろうね?』

「自分の意見が弱いってのもどういえばいいか・・・。」

『自分の意見が弱いってのは、例えば、『貴校に入学したら、人との会話や授業内の発言で、自分の意見を言えるよう心がけていきたいと思います』とか。』

「ええやん。」

『私ったら天才ね。』

 ドヤ顔で胸を張るミー子。

 ・・・。

「・・・(びくぅっ)!!!!??」

 ミー子がすごい勢いで後ずさり、超逃げた。

『何をしてるんだい!?』

「いやほら、さっき胸のこと気にしてるって言ってたじゃん?」

 ちょっと気になって触ってみたけど、別にまな板ってわけじゃ・・・。

 って、俺今何の気なくミー子の胸に触りました?

 何してんの俺!?

『小さいだろ!気にしてるんだよ!』

「べ、べべ別にまな板ってわけじゃなかった・・・ぞ?えと、すまねえ。」

『いきなり触ってくるとは思わなかったよ!!』

「俺も何でこんなことしたのかわからねえ・・・。」

『さすがにびっくりしましたよ。私に襲い掛かる気?』

「そんな気はなかった。」

『それもそれとして彼女的にはどうなのかと思いたいけど、まあいいや。』

 えー、本当に何してんの俺。

 あの、ミー子と夜にベッドで事に至りそうになった日から、結構ミー子に女を意識し始めた。

 ちょっと、抑えないとな・・・。

 もしそういうことになるとしても、それは受験が終わってからだ。

「色即是空・・・空即是色・・・!」

『何してんのさ。』

「ちょっと煩悩を打ち払っているんだよ。」

『トイレにでも行ってこい。』

「女の子がそういうこと言うんじゃありません!!」

 なんてこと言うんだこいつは!

『何を目的に本校を志望しましたか?っていう質問に対して、どう答えるよ。』

「私は将来、自分の店を開くことを目標としております、そのために、貴校で必要なことを学び、これからに活かしていきたいと思います、とか?」

『短いんじゃない?』

「短いとな・・・。」

『例えばだ、私は小さいころからお菓子を作ることが好きで、さらに技術を上げていきたいと思い、貴校を選びました、なんてのは。』

「ちょっと待ってくれ、ミー子さん?」

『なんでしょう?』

「あなた文考えるの得意なんじゃ?」

『そんなことないと思うんだけど。』

 俺が考えるよりミー子が考えた方がいい感じのような気がするんだけど?

 気がするじゃなくて絶対そうだよね?

「それに合わせてさっきの理由も含めれば2つになるわけか。」

『私も同じ理由で答えられるしな!』

「2人とも同じ理由だけど多分大丈夫だよな。お菓子作りが好きな人も将来自分の店を持ちたい人もいっぱいるだろ。」

『せやね、もしくはホテルで一流のパティシエとか。』

 そっちを目指してる人もいるか。

 テレビに出たりすることもあるだろうな。

 取材とか来そうだし。

「ま俺は店を開くけどな!」

『店が繁盛すれば店にだって取材が来るかもだよ。』

「かなり有名にならないと来なさそうだけどな。」

 よくテレビで出てるなんちゃらシェフとか。

 そうすると取材だけでなくバラエティとかにも呼ばれそう。

 バラエティ番組に出るのは嫌だな・・・。

『志望動機はこれでよさそうね。あとは・・・高校での思い出、とか・・・。』

 高校の・・・思い出・・・。

「これといって・・・思い出が、ない・・・。」

『部活や生徒会にも入ってなかったもんな・・・。』

「友人関係、とか?」

『それ以外にも、印象的だったこと、とか。』

「高校時代の印象的だったこと・・・?」

『キミは文化祭にも参加してないね。』

「入院!入院してたからね!!」

 死にそうだったんだからね!?

 ミー子が血をくれなきゃ俺死んでたからね!?

『バイト、とか・・・。』

「高校の時にバイトばかりしてたという思い出は・・・。」

『喫茶店の厨房でバイトしていたっていうのは・・・ほら、期間限定のスイーツとか、なっちの案も多かったし。』

「高校の思い出が全然ない・・・。」

『ボランティア経験もないしね。』

「・・・俺、やばくね?」

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